仕事でトラブル!パニックにならず、不測の事態に対処するには?米陸軍の「シナリオ想定術」なら、最悪の結果を回避できる
出勤直前に子どもが体調不良。取引先から急な仕様変更。パソコンがフリーズしてデータが消えた。完璧にスケジュールを組んでいても、突発的なトラブルひとつで全部がガラガラと崩れてしまいパニックに…。
そんな不測の事態が起こっても、冷静に判断して対処するためにはどうすればいいのでしょう
か?その方法を、元・陸上自衛隊幹部の有薗光代氏の著書からご紹介します。
有薗氏は、高卒で陸上自衛隊の最下級からキャリアをスタートしながら、異例の抜擢で日本人女性として初めて米陸軍工兵学校に派遣されました。究極的に過酷な環境で学んだ「セルフスターター」の思考法はさまざまなビジネスシーンで役立ちます。
※本記事は書籍『セルフスタータ― 自分で自分を動かすスキル 米陸軍工兵学校で学んだ仕事と人生で大切なこと』(有薗光代:著/日本実業出版社 )から一部抜粋・編集したものです
「最悪」と「最高」は同時に描く――危機にもチャンスにも即応する
「想定力」は、心の自由度を高める武器
「最悪」と「最高」は、予告なくやってきます。冷静に動ける人は、あらかじめ両方を想定して、いくつもの「引き出し」を持っています。 「想定力」は、心の自由度を高めるスキルです。
近代ドイツ陸軍の父、モルトケ将軍には象徴的なエピソードがあります。 普仏戦争を勝利に導いた彼は、現場に自律的な判断をゆだねる「任務指揮(Auftragstaktik)」を確立しました。これはのちの、米陸軍が重視する、現場が自ら判断して行動を選び取る「ミッション・コマンド」に通じるものです。
ある日、戦況が急変し、部下が指示を仰ぎにモルトケ将軍の部屋に駆け込むと、彼はベッドに横たわったまま、部屋の片隅にある机の引き出しを指して言いました。 「その計画は、上から三番目に入っている」 そう言うと、彼は目を閉じたまま再び眠り続けたというのです。戦況の急変を含め、あらゆる可能性を想定していたので慌てる理由など何もなかったのです。 静けさこそが、「想定力」の真価です。
米陸軍に学ぶ2つのシナリオ思考法
「想定」とは、未来への「予行演習」です。米陸軍の作戦計画には、常に2つのシナリオが並びます。次はビジネスや日常の例も踏まえたものです。
MDCOA(Most Dangerous Course of Action)=最悪の事態
・敵の勢力が想定の5倍で来襲する ・大口顧客が突然離脱し、売上の大半を失う
MLCOA(Most Likely Course of Action)=最も起こりそうな事態
・敵の勢力の規模も接近ルートも想定どおり ・競合が類似商品を改良し、市場を徐々に奪う
「最悪」と「現実的なケース」をセットで描くことで、冷静なリスク管理と柔軟な行動が両立します。感情に振り回されずに動ける「心のスタンバイ力」がここで養われるのです。
想定力はチーム全体で磨かれる
私は訓練計画を受け取るたび、必ず部下に問いかけました。 「最悪のケースは?」 たとえば、実際の訓練でも次のことを事前に確認しておくだけで、ケガ人が出ても動けました。
・最寄りの病院はどこか?
・診察時間は?
・誰が搬送役か?
ケガ人に対応した部下からは「中隊長が先に考えてくれたおかげで、パニックにならずに済みました」と言われました。 さらに大規模な訓練では、ブレインストーミングを行いました。 私ひとりでは見落としていたリスクが、現場の口から出てきて計画の精度が格段に上がりました。
「想定力」は、リーダーの頭のなかに閉じこめるものではない。チーム全体で磨くことなのです。
「最高のシナリオ」がチャンスを引き寄せる
「最悪の事態」に備えることは大切ですが、それだけでは、「チャンスを受け取る準備」は整いません。「最高の展開」を描いておくことも、「想定力」の一部です。 たとえば、次のように。
・プレゼンが大成功し、大口の契約を獲得する
・社内で評価され、昇進の声がかかる
・プロジェクトが広がり、チームが自走しはじめる
「最高のシナリオ」にも関連した、私が好きな言葉があります。英語学者であり、多くの人生論を著した渡部昇一さんは言いました。 「虫のいいことを考える人に、天は梯子(はしご)を下ろす」 で、見えない局面にも強くなる力だと痛感しました。
リーダーは「陽」の姿勢をつくる
一見ずうずうしく思われるようなポジティブな未来を描けば、自然と思考と行動がともない、結果的にチャンスを逃さなくなるのです。緊張でぎゅっと握りしめた手では、せっかくの好機もつかめません。
リーダーが落ち着いていれば、チームも安心して動けます。 すべての出来事は、「最悪」と「最高」のあいだで起こります。この幅をあらかじめ想定しておけば、動揺せず柔軟に対応できます。 そして、その落ち着いた姿勢こそ、信頼されるリーダーシップの本質です。
私自身、よく「虫のいいこと」を考えては、1人でニマニマしています。 「いつも楽しそうだけど、何かいいことでもあったん?」と聞かれることもありますが、根拠はありません。ただ前向きな仮説を持っているだけ。それだけで行動が自然に未来に向きます。 思考が行動を動かし、行動が成果を連れてくるのです。
あなたにも、きっと「ニマニマ戦略」があるはずです。 いま、あなたが「ニマニマ」できる未来はどんな光景でしょうか? そして、その光景に向けて、今日できる準備は何でしょうか?
最悪に備え、最高を描く――その両輪が、心に余裕を生み、即応する力をつくります。「想定力」とは、どんな局面でも動じず、次の一手を選び取る力です。
■著者略歴:有薗 光代(ありぞの・みつよ)
元・陸上自衛隊幹部(三等陸佐退職)。高校時代、特攻隊員の遺書に衝撃を受け、「平和を次世代につなぐ」と防衛大学校を目指すが二浪して不合格も諦めきれず、自衛隊の最下級である二等陸士として入隊。上官の靴磨きからキャリアをスタートさせ、エリート幹部の登竜門とされる指揮幕僚課程に一発合格。日本人女性としてはじめて米陸軍工兵学校に家族を帯同して留学し、優秀な留学生に贈られる次席表彰を受賞。国連南スーダンミッションでは軍事部門司令官表彰(上位10%)および日本人初のジェンダー部門ノミネートを受けるなど、異例のスピードで抜擢と出世の機会を得る。合計4回の災害派遣、国連PKOに2回従事。現役の20年間で合計18回の防衛記念章を受賞。令和4年には内閣府国際平和協力本部長(内閣総理大臣)から感謝状を受賞。帰国後、制服組トップを補佐する統合幕僚監部に勤務中、夫の闘病を機に早期退職。退職後は、「女性・平和・安全保障(WPS)」をテーマで講演活動 を行うかたわら、築135年の古民家を再生した「門リトリートサロン」を創業 。人が自らの原点と再びつながる“人生の門出”を支援している。
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