42歳の現妻 vs. 前妻、まさかの直接対決!夫抜きの交渉「養育費の減額を勝ち取りたい!」。条件をのんでもらう秘策とは【行政書士が解説】

今回の相談者・茜さんは離婚歴のある夫と結婚したのですが、前妻に支払っている子の養育費(毎月6万円)が重荷になっていました。茜さんは育休中なため、収入が月18万円から12万円に減少。出産をきっかけに戸建てのマイホームに引っ越したので住居費がアップ。さらにオムツやミルク代もかかるようになり、月3万円の赤字が発生しつづけている状態です。

しかし、夫は知らぬ存ぜぬという感じで何も対策を講じようとはしません。前妻と連絡をとることを極端に嫌う夫のかわりに、茜さんは夫のスマホを借りて前妻へLINEを送りました。そしてついに、二人で直接会う約束を取り付けたのです。前妻への直談判はどうなったのでしょうか?

 

前回の記事を読む<<バツイチ夫と再婚→出産、毎月3万円の赤字で借金寸前!?前妻へのトラウマで、恐怖に震える夫はあてにならない。「養育費を減らしてほしい!」どうしたら?

 

<家族構成と登場人物、属性(すべて仮名。年齢は現在)>

夫:氷室康孝(43歳)→会社員(年収500万円)
妻:氷室茜(41歳)→育児休業中(会社員) ☆今回の相談者
夫婦の子:氷室若葉(0歳)
前妻:中野明子(41歳)→パートタイマー(離婚時)
前妻との子:中野藍(8歳)

【行政書士がみた、夫婦問題と危機管理 #20 】後編

 

 

元妻と現妻が直接対決!

ふたりの妻が会うことになった当日。茜さんは恐る恐る席につくと「はじめまして」と前置きした上で「そういう事情でウチも厳しいんで…何とかお願いできませんか?」と頭を下げました。しかし、前妻はまともに聞こうとしません。「なんであいつ(前夫)がいないの!」と茜さんに強めの口調であたり、さらに「だまされたてって感じ! あいつが養育費をちゃんと払うって言うから、最後はしょうがなく別れてやったのに…」と感情をむき出しにして怒りをぶつけてきます。

 

前妻は毎月6万円の養育費を最後(子どもが20歳になるまで)までもらえると信じ切っていたでしょう。そのため、「養育費を途中で減らされるってわかっていたら、離婚してあげなかったんだからね!もう、どうしてくれるのよ!!」と激怒するのも無理はありません。

しかし、養育費は離婚時と比べ、経済状況や家族構成等が変わった場合、事情変更を理由に見直すことが法律で認められています(民法880条)。筆者は前もって「前妻と再婚と子どもの誕生はこれに該当するので、茜さんの言い分に法律的な根拠があります」と助言し、茜さんも当日、そのことに触れました。

 

法的根拠を説明したところで、前妻もそう簡単には引き下がりません。「はぁ? 何言っているの!そっちの子より、こっちの子を優先するのは当然でしょ?あんたたちの子のために、こっちの養育費を減らされるなんて納得がいかない!」とありったけの怒りをぶつけてきたのです。

前妻の「自分さえ良ければそれでいい」という態度に対し、茜さんは「子どもは親を選んで産まれてくることができません」と冷静に投げかけました。そして「子どもに罪はないんじゃないでしょうか? それなのにミルクやオムツ、離乳食のお金が足りなるなんて不憫でなりません」と涙ながらに訴えたのです。

 

 

養育費の「新しい算定方式」から導き出した金額は…

前夫が再婚し、子どもが産まれた場合、前妻の子の養育費をどのように計算すればいいのでしょうか?具体的には家庭裁判所が公表している「新しい算定方式」(判例タイムズ1111号291頁)を使うのですが、具体的な計算方法は以下の通りです。

1.算定方式における基礎年収(年収の0.4倍)を算出します。

2.大人を100、14歳以下の子どもは62、15歳以上の子どもは85とし、前妻の子÷夫+次女+前妻の子の係数を算出します。夫の年収に係数を掛けると「前妻の子の生活費」になります。

3.前妻の子の生活費×夫の基礎年収÷夫の基礎年収+前妻の基礎年収が妥当な養育費の金額です。

 

夫の年収は現在、500万円。一方、前妻は離婚当時、パートタイマーだったので100万円程度でした。筆者がこれらの内容をもとに計算すると養育費は毎月37,000円が妥当な金額だとわかりました。茜さんの家計の赤字は毎月3万円。「養育費が毎月6万円から3万円へ下がれば赤字を解消できます!」と喜びます。

 

そのことを踏まえた上で、茜さんは「あえて今の給料を聞いたりしません。でも裁判所の計算では毎月3万円なんです。わかってください」と頭を下げたのですが、それでも前妻は引き下がらず…「3万ってうちにとっては大金なのよ。これからずっと月3万で息子を育てていけって?!」と抵抗します。

そこで茜さんは前妻の「ずっと」という言葉に便乗しました。茜さんが職場に復帰するのは1年後ですが、給付金と手取りの差額は毎月6万円。復帰した場合、前妻へ養育費を満額支払っても家計は赤字にはならない算段です。

そこで「ずっとじゃありません。とりあえず1年間、月3万円で辛抱してもらえませんか?その先のことはそのときに考えましょう!」と提案すると、前妻はようやく観念してくれたのです。前妻は「養育費の減額は最後まで」と思い込んでいたのでしょう。その思い込みからくる誤解が晴れたことで、減額提案をのんでくれました。茜さんも、毎月赤字続きで破綻まっしぐら…という急場をしのぐことに成功しました。

 

 

前妻の支払いが苦しいまま放置しておくのは危険

ここまで離婚歴がある夫との子どもを出産したことによって、家計が赤字に陥った茜さんが前妻を説得することで赤字を解消するまでの悪戦苦闘について見てきました。今回、前妻へ支払っているお金は養育費でしたが、それ以外にも慰謝料、解決金などの名目を支払っている場合もあります。もしくは前妻が住んでいる家の住宅ローンを元夫が返済しているケースも。これらを「離婚債務」といいます。

このような場合、夫は現妻と前妻を同時に支える二重苦の状態なのですが、離婚時のトラウマが原因でどんなに苦しくても臭いものに蓋をして、無理に無理を重ねる傾向があります。例えば、なけなしの貯金をつぎ込んだり、消費者金融で借金をしたり、さらに親戚や友達に金策を頼んだり…ということもめずらしいことではありません。手持ち資金がゼロになり、自転車操業で借金が倍々に膨らみ、周囲の人間から縁を切られてしまう。そうなってからようやく「前妻への支払い」減額に手をつけるようでは遅すぎます。

なくなった貯金や銀行への信用、そして親戚や友人との関係は元に戻りません。家族構成や経済状況の変化で支払条件を緩和することは法律で認められているのですから、そこまで追い込まれる前に、前妻に頼み込んでしまったほうが長い目で見れば得策です。

 

 

<出典>

厚生労働省の人口動態統計⇒再婚率
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003411838

厚生労働省の人口動態統計⇒婚姻と離婚
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei24/dl/03_h1.pdf

厚生労働省の令和6年度雇用均等基本調査
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r06/06.pdf

法務省が公表している司法統計(2024年)
https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/toukei/toukei-pdf-12787.pdf

子ども家庭庁の「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査」
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/f1dc19f2-79dc-49bf-a774-21607026a21d/9ff012a5/20230725_councils_shingikai_hinkon_hitorioya_6TseCaln_05.pdf

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