「こんなによかったの、人生ではじめて」独身女性が選んだ不倫の末路は

2021.04.13 LOVE

後ろ指をさされる関係とわかっていても、やめられない不毛なつながり。

不倫を選ぶ女性たちの背景には何があるのか、またこれからどうするのか、垣間見えた胸の内をご紹介します。

<<前編へ

 

【不倫の精算#25後編】

これまでの記事はこちら

 

あまりにも快楽が大きすぎて、不倫の後ろめたさが消えた

「ね、金曜日の夜、デートしようよ。

いい居酒屋があってね、個室でゆっくりできるよ」

軽い感じで彼から誘われたとき、Hさんは一も二もなく承諾したそうだ。

 

「“彼女“なんだもの、もっと一緒にいたい、もっとくっつきたいと思うのは当然よね」

自分にそう言い聞かせながら念入りにメイクをし、服を選び、向かった居酒屋では同じく“デート用”の装いをした彼に心をときめかせる。

 

カップルのための演出と思わせるほの暗い灯りの個室で、向かい合わせではなく隣に座った彼に手を握られ、肩を抱かれ、

「今夜はずっと一緒にいたいな」

とささやかれたら、“落ちる“のはあっけないほどに簡単だった。

 

そのときの様子を、Hさんは横を向きながら

「浮かれていましたよ、ええ。

あの人、これまでもあんな感じで独身の女を引っ掛けてたんでしょうね」

と、押し殺した声で話してくれた。

 

心の高揚は肉体の快感をより盛り上げ、何の抵抗もなく入ったホテルで

「こんなによかったの、人生ではじめて」

と彼女は“恥ずかしいセリフ”を吐いたそうだ。

 

「不倫になるんだって、“ごっこ”じゃなくなるんだって、思わなかった?」

恐る恐る尋ねてみた。

 

「思わなかった。

浮かれすぎて心もカラダもふわふわしてたし、早くしたいってそれしか考えてなかった」

こちらの視線を避けながら、Hさんは答えた。

 

「不倫相手になるように誘導されていた自分」を知って

だが、密のような悦楽の日々は、そう長くは続かなかった。

 

結ばれた夜から一ヶ月ほどは、以前と変わらない甘い言葉が並ぶメッセージが届き、Hさんも“彼女”として同じく愛情ある返信を送っていた。

 

だが、いざHさんのほうから

「明日、会いたいな。

また○○に行かない?

あそこならお風呂が広いし」

と誘うと、

「ごめん、明日は家族と約束しているんだ。

時間ができたらすぐに言うから」

と、”ドキッとするほどいつもと雰囲気の違う言葉”が返ってくる。

 

彼の「既婚者としての立場」を見せられるようになり、Hさんは不倫という現実にじわじわと気が付きはじめた。

 

この時点で誰かに相談することを思いつき、第三者であるこちらから

「抵抗なくアレができるように誘導されていたとしか思えない」

という感想を聞いて、すべてが「腑に落ちた」そうだ。

 

「そうよね、“恋愛の練習”なんて、ふざけんなって感じよね。

私、本当にどうかしてた」

 

待ち合わせたカフェで一通り話をしたあと、Hさんは大きくため息をつきながらうなだれた。

 

「既婚者だから大丈夫」という、まったく裏打ちのない信頼に引きずりこまれた自分自身を呪っているようだった。

 

それでも刺激と快楽を欲しがる心

だが、Hさんは関係をやめることができなかった。

一度経験させられた甘ったるい刺激とそれを伴って倍増するカラダの快感は、彼女をつかまえて離さなかったのだ。

 

「また会いたい」

「またしたい」

その思慕は、火のついた心と肉体の欲望をかきたてる一方で、Hさんはじりじりとくすぶる気持ちを抱えたまま過ごしていた。

 

彼から誘われれば、ほかの予定をキャンセルしてでも会いに行く。

わずかしかない時間なら、会ってすぐに行けるホテルの情報を集めておく。

 

そんな自分への嫌悪感とたたかいながら、会えば愛の言葉をささやいて肉体におぼれさせてくれる既婚の彼への執着も、捨てられずにいた。

 

そんな葛藤を聞かされるたび、こう答えた。

「わかるよ、その気にさせておいてって、責めたくなると思うよ。

自分の気持ちが本当は恋愛感情なんじゃないかって、本当に好きになってるんじゃないかって、怖くなるよ。

でもさ、不倫はどこまでも不倫でしかなくて、彼が離婚しない限り幸せな関係にはなれないんだよ」

Hさんは黙る。

 

正論などほしくない。

無音の返事を受け止めながら、いつしか彼女からの連絡はなくなった。

 

「終わり」を選んだ独身女性の気持ちは

共通の友人からHさんが市外に異動になったと聞いたとき、まず思ったのが既婚の彼との関係だった。

 

Hさん自身からも

「○○市に行くことになったよ。

遠いけど、好きな仕事だしあっちでも頑張るつもり!

またこっちに帰ってきたときはお茶しようね」

と以前のような明るい文章とスタンプ付きのメッセージをLINEでもらったが、彼については聞けずじまいだった。

 

そして、久しぶりに届いたメッセージが、彼との終わりを告げる言葉だった。

 

経緯を一切省いた短い文章からは、それがつらいものであること、語れるほど気持ちの整理がついていないことが、よくわかった。

 

それでもこちらに送るのは、相談を持ちかけた側の礼儀でもあり、また「察してほしい」のあらわれかもしれなかった。

Hさんと彼の間にあれから何が起こったかはわからない。

だが、詮索を拒否するオーラを見れば、後は「わかった」という返事しか送れない。

どんな選択であれ、彼女が新しい一歩を踏み出せているのなら、これからはその現実を生きるしかないのだ。

 

<<前編へ

スポンサーリンク

スポンサーリンク

スポンサーリンク