50代独身・がんと介護が一気にやってきた(泣)!~セルフレジリエンスのすすめ①~
オトナサローネの読者のみなさま、はじめまして。
セルフレジリエンススペシャリストの大穂その井と申します。
耳慣れないこの肩書についてはあとで述べるとして、今、私は58才。
皆さんよりもだいぶ先輩ですね。
ひとり娘、ひとりっ子の独身。まねき猫発祥のお寺として知られている、東京世田谷の豪徳寺の近くで89才になる母と黒猫ピー助と3人で暮らしています。
50代、突然やってきた「がん宣告」と「親の介護」
こんな私に、50代になってからいきなり「がん」と「親の介護」が同時にやってきました。
ササっとまとめると、
- 51才 がん検診100点満点
ところが、
- 52才 乳がん発症(左胸全摘)
- 54才 乳がん再発、直後に父が脳梗塞で倒れ救急搬送、母が認知症発症
- 55才 抗がん治療をしながら父と母の在宅介護スタート
- 56才 50クールの抗がん治療終了、父を自宅で看取る
うひ~っ!人生最大の波がザブザブやってきている!
この間、失敗をたくさんやらかし挫折もしましたが、58才の今、おだやかに快活に生きています。
そう、兄弟姉妹もいない、ひとりっ子のおひとりさまですが、がん再発と両親の介護の大波をどうにか乗り切りました。
この連載では、皆さんにもこの先やってくるかもしれない「がん」と「介護」を乗り越えるポイントを5つにまとめ、わかりやすくお伝えします。
大失敗の体験も思い切って公開し、少しでも皆さんの将来に安心感をもたらすことができれば幸いです。
肩書にある「セルフレジリエンススペシャリスト」は、わたしの造語です。
「レジリエンス」は、重圧やストレス、困難な状況から立ち直る力のこと。このレジリエンスに「自らをしなやかに救うスペシャリスト」という意味を加え、セルフレジリエンススペシャリストと名乗ることにしたのです。
がんに当たる確率は50%、宝くじの7等は10%
「あなたががんになったら」という前提はちょっと不吉ですね。でも「日本人の2人に1人が生涯でがんになる」と厚労省が発表しています。確率は50%。ちなみに宝くじの7等=300円が当たる確率は10%、6等の3,000円になると確率はたったの1%だそう。(※1)
だから「当たらないかな~」と思ってくじを買い続けるよりも、がんに当たる確率のほうが圧倒的に高い。そう、がんはもう他人事じゃない。がんは災害と同じ、誰にでも突然やってきます。
【その1】がんになった自分を責めるな (前進せよ)
52才で乳がんが見つかった時、まだ1.4㌢の大きさで初期でしたが、アクティブながん細胞だったのですでにリンパ節に転移していました。私は主治医から「この大きさならだいたい10年くらい経っていますね」と言われ、「はて?いったい10年前って何をやっていたんだろう?」と、がんになった原因を探りました。
当時、経営していたベンチャーの関係者が逮捕され、経営が破綻寸前に。
ベンチャーキャピタルに告訴されて、裁判所に出頭。株主にお詫び行脚をしていた。ひーっ!がんができたのって、まさにこの時期だ!心が極限状態で、いつも身体にピリピリと電気が走っていた時だ!
そうか、がんになったのは私の経営能力がなかったからだ、女だてらにベンチャー経営なんてやっていたからばちが当たったのだ、と「過去の私が加害者だった」と自分を責めました。
この「がんは自己責任」というフレーズはそれから3年も頭の中にあって、自分を苦しめていました。
しか~し、この結論は大間違いだったことを知ったのです。
がんの原因、ほとんどが 偶然!
脳腫瘍の専門医でがん研究者の大須賀覚先生がSNSに投稿していた「がんの発生原因」の人体図を見てびっくりしました。(※2)
これはがん発生の原因が 「遺伝なのか」「偶然なのか」「環境なのか」を究明した図で、世界で最も権威のある学術誌サイエンス』で発表された研究論文の図を、大須賀先生が日本語訳したものです。 (※2)赤くなっているほどその原因が強いということで、これ、真ん中の「偶発的要因=偶然」がまっ赤ですよね?
ということは、なんと!がんのほとんどが偶然できるってことなのです。おまけに胸の部分も赤い、乳がんも偶然できるんだ。なんだ、自分の責任じゃなかったんだ。これを見た時、口から魂が抜けるほど脱力しました。
いい機会ですから、ぜひ大須賀先生の解説をお読みください。(※2)
もし、皆さんががんに当たったら「なぜ?」と私のように原因を追求して過去の自分を責め、無駄な時間とエネルギーを消費したらいけません。立ち止まらず、事実を受け入れて前進してください。
【その2】自分だけで解決しようとするな (エリート街道を行け)
がんを「自分だけで解決する」とは何ぞや?ですが、「主治医に任せっぱなしにせず、自分にできる治療があったらやろう」ってことです。
皆さんにはお分かりいただけると思いますが、仕事をしていると「もっと工夫できることはないか」「もっと自分にできることはないか」って思いますでしょ?がん治療においてこれはNGなんです。
私は大失敗しました。
ネット検索で上位にヒットした「がんが消滅する免疫点滴」と「断食療法」を選んでしまったんです。これ、乳がんの主治医には内緒にしました。だって、先生の治療を信頼してないって思われて、気分を害されたら嫌だし。
結果、どうなったかというと、
- 2か月で体重が12キロ減。やせ細ってチカラが出なくなった。
- 頭がぼーっとして言葉が出なくなった。
抗がん剤の影響ではなく、栄養失調になったんです。このせいで病院の治療に耐える体力がなくなり、ドクターストップがかかりました。すぐに再発した原因も、この時、治療ができなくなったからかもしれない、そう思い後悔しています。
“標準”治療こそスーパーエリート
ここ、大切なことです。
手術、薬物療法、放射線療法を、がんの3大療法と呼びます。標準治療とは、科学的根拠があり、現在利用できる最良の治療であることが示され、一般的に推奨される治療です。
「標準」ってスタンダードじゃん、って思いますよね? もっとスペシャルな、最先端の治療法があるんじゃないかって。
抗がん剤治療の第一人者、腫瘍内科医の勝俣範之先生は標準治療について、以下のようにわかりやすく説明しています。(※3)
「標準治療」とは、現時点で化学的に証明された、エビデンスに基づいた最高の治療。標準じゃなく「選ばれしスーパーエリート治療」
勝俣先生いわく、
「がんの治療は、他の商売と違って、色々な商品が存在できる世界ではない。常に最高のものしか存在を許されない、命が関わっているので、この薬は効果は低いけど安いから使おうなんては 絶対にありえない」そうです。
私はがんになった当初、こんなに大切なことを知らなくて、「免疫点滴」や「断食療法」の道を選んでしまった。健康な人が健康増進の目的でトライするなら悪くないかもしれません。でもがん患者がやると危険だと、あとで身をもって知ることになったのです。
だから皆様には、迷うことなく「標準治療」というエリート街道を進んでいただきたい、と強く申し上げます。
もし治療に迷ったり、モヤモヤしたりしたとき、最初に見るべき情報、それは「がん情報サービス」です。
次のお話▶オペで主治医ががんを取り残し(汗)!そのときどうする?~セルフレジリエンスのすすめ②~(8/25配信予定)
政府のがん専門機関である国立がん研究センターの情報サイト「がん情報サービス」
がん患者に対してがん医療情報をまとめている認定NPO法人のサイト「キャンサーネットジャパン」
(参考)
※1計算サイト「宝くじの確率」
※2大須賀覚医師ブログ「がんはなぜできるのか? 患者の過去の行いが悪かったからなのか?」
※3勝俣範之・大須賀覚・津川友介(2021)『最高のがん治療』ダイヤモンド社 P.32~標準治療は「スーパーエリート」の治療法
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