年収は私の1/3の年下の夫。「別れたいのに応じてくれない!」ならば、「偽装復縁」をすることで離婚へ【行政書士が解説】

共働きで子どもを持たない夫婦のことをDINKsと言います。Double Income(共働き)、No Kids(子どもなし)の頭文字をとっていますが、どのようは夫婦を思い浮かべるでしょうか?

筆者は行政書士、ファイナンシャルプランナーとして20年間で2万件以上の離婚相談を受け持っていますが、最近は「なんとなく婚」が増えている印象です。

今回の相談者・八巻美園さん(45歳。仮名)も、「なんとなく婚」で離婚を考えているDINKs夫婦です。「彼のやることが何もかも気持ち悪くなってしまって…もう一緒にいたくないんですが、彼がなかなかOKしてくれなくて困っています!」と訴えかける美園さん。自然派化粧品を生産から販売まで自社で行う中堅企業に新卒で入社した美園さんは、23年のキャリアで部長まで上り詰め、年収は750万円に達しています。一方の夫(39歳)は派遣社員で年収250万円。稼ぎだけ見ても三倍の開きがあるのですが、仕事のスキル、社会的な地位は言うまでもありません。

 

※ 本記事は、本人が特定されないように実例から大幅に変更しています。また夫婦の年齢や年収、性格が合わなくなった原因や離婚を決めたきっかけ、財産分与の条件などは各々のケースで異なるのであくまで参考程度に考えてください。

 

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仲直りすると見せかけて…実は「離婚に向けての準備」だった

そこで筆者は「偽装復縁という方法がありますよ」と提案しました。夫婦が喧嘩をしたとき、仲直りすることを「復縁」といいます。なぜ「偽装」復縁なのでしょうか?これは最初から復縁するつもりはないからです。夫婦としてやり直す「ふり」をして、相手から上手く離婚の同意を得ることが目的です。具体的に見ていきましょう。

 

美園さんは夫の忘れっぽい性格に嫌気が刺していました。そこで「今後、家事で注意すべきことを忘れなかったら離婚の話をなかったことにする」と約束させます。裏を返せば、「忘れたら離婚」という意味です。そして後日、夫が約束を破ったとき、約束を突き付け、「それじゃ離婚ね」と言えば、夫が承諾する確率は今現在よりずっと上がるでしょう。そのことを踏まえた上で美園さんは2回目の話し合いにのぞみました。そして「何回同じことを言っても、同じことの繰り返しじゃないの!」とぶちまけたのです。

 

夫は相変わらず「ごめんなさい。僕が馬鹿だからダメなんだよね。もう、美園ちゃんを怒らせたりしないから…信じて!」と、しおらしい態度をとったそうです。そこで美園さんは「今後、家事を忘れなかったら離婚の話をなかったことにする、それでいいね!」と念押しすると、夫もうなずくしかありませんでした。

 

もちろん夫が反省し、改心し、同じトラブルを起こさなければ、このまま結婚生活を続ける選択肢もあったでしょう。しかし、交わした約束が守られたのはわずか1ヶ月間でした。美園さんは寝室に埃が目立つようになったと感じていました。そこで「ちゃんと掃除機をかけているの?」と尋ねると、夫は「充電を忘れちゃって」と平気な顔で言うのです。この掃除機はスティック式で充電タイプ。バッテリーが空になると動きませんが、夫は充電切れのまま2週間も放置したので、掃除機をかけられなかったと言うのです。

 

さらに飲み終わったペットボトルがゴミ箱からあふれ出したのを発見。ペットボトルの回収は2週間に1回ですが、やはり夫は忘れてしまったと言うのです。どちらもリマインダーに追加し、スマホで通知の設定をし、音声が鳴るようにするなど工夫のしようがいくらでもありました。しかし、夫は相変わらず、当てにならない「勘」に頼った結果です。大事な約束をいとも簡単に破ったのです。

 

 

夫が「約束を破ったから離婚」なのに、手切れ金をよこせと⁉

筆者は「どうするのかは美園さん次第ですが」と投げかけると、美園さんは「もうダメだなぁって緊張の糸が切れました。これ以上、面倒みきれませんよ!いい離婚の口実になりました」と答えます。そこで夫に離婚届を突き付けたのですが、結局、「次、同じことをしたら離婚に応じる」と約束したのは他ならぬ夫本人です。そのため、「そこまで言うなら離婚でいいよ。でも、ここから出ていくにはお金が必要だし、しばらくは入用なんだ」と手切れ金を要求してきたのです。

 

ところで結婚生活のなかで築いた財産は夫名義でも妻名義でも夫婦の共有です(民法762条)。そして夫婦が離婚する場合、その共有財産を夫、妻に分けなければなりません(民法768条)。夫は散々、足を引っ張ってきましたが、それでも財産分与の権利を持っているのは大半の家事を担ってきたからです。財産分与の根拠は内助の功です。

 

美園さんいわく、3年間の結婚生活のなかで300万円近くのお金が貯まったそうです。夫は生活費を入れず、自分の給料は使い放題でした。もし、夫がお金を貯めているのなら、夫の貯金と美園さんの貯金を合算し、それを折半しなければなりません。しかし、美園さんは夫の貯金に言及せず、自分の貯金のうち、150万円を渡すことを約束したのです。こうして妻が夫に自分の財産を渡すという珍しい形で離婚が成立したのです。

 

夫はお酒を飲まず、煙草も吸わず、特に趣味もなし。無口な性格で出不精な性分。人付き合いが苦手なので交友関係は狭く、浮気の心配もなし。在宅勤務が基本で出社するのは月1回程度。一方の美園さんの帰宅時間ですが、平均でも23時を過ぎるほどの激務。どちらが家事をやるのかは決めるまでもありませんでした。つまり、美園さんにとって彼は優良物件だったのです。

 

しかし、美園さんと夫は今まで歩んできた人生の道程が違いすぎます。努力に努力を重ねて成長し続けてきた美園さんと、そうではない夫。二人が立っている階段の高さに開きがあればあるほど軋轢が生じるのは言わずもがなです。そして、そのことに苦しみ続けるか、それとも苦しみから逃れるために離婚するのか……苦しい選択を迫られますが、離婚したくてもできず、苦しみ続けるのは地獄です。やむを得ない場合は今回、紹介した「偽装復縁」を試してみるのも良いでしょう。

 

 

<出典>
法務省の司法統計(2020年)
https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/253/012253.pdf

男女共同参画白書(2022年)
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r04/zentai/index.html

 

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