変わらぬ世を嘆く小一郎(仲野太賀)と、信長の遺志を継ぐ決意をした秀吉(池松壮亮)――史実では明智光秀を討ったのは名もなき村人?【NHK大河『豊臣兄弟!』29話】

2026.07.28 LIFE

*TOP画像/小一郎(仲野太賀) 秀吉(池松壮亮) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』29話(7月26日放送)より(C)NHK

 

戦国時代のど真ん中を舞台にした『豊臣兄弟!』(NHK総合ほか)の主人公は仲野太賀が演じる豊臣秀長。兄弟の絆で“天下統一”という偉業を成し遂げた豊臣兄弟の奇跡を描いた大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK総合ほか)の第29話が7月26日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、作品の内容や時代背景を深掘り解説していきます。

 

山崎の戦いで秀吉勝利

明智光秀(要潤)は織田信長(小栗旬)を討ち果たしたものの、有力諸将を味方につけられず、孤立した苦境に立たされていました。

 

一方、秀吉(池松壮亮)は深い悲しみを抱えながらも、光秀討伐に向けて動き出します。

 

「今すぐにでも 明智の目をくりぬき 爪を剥ぎ 頭から足の先まで 串刺しにしてやりたい気分でござる」

 

この台詞は、秀吉が池田恒興(堀井新太)に語った言葉ですが、秀吉の声には怒りがあふれ、瞳にも激しい怒りが宿っていました。そして、日常生活を取り戻したかのように振る舞ってはいるものの、生きる希望をすっかり失っているようにも見えました。

 

秀吉は主君・信長の死に深い悲しみに暮れながらも、光秀側の動きを分析していました。黒田官兵衛(倉悠貴)とともに光秀の意図を読み取り、信長がいない今こそ明智軍に落ち着いて攻め寄せるべきだと周囲に強く訴えかけます。

黒田官兵衛(倉悠貴)ほか 大河ドラマ『豊臣兄弟!』29話(7月26日放送)より(C)NHK

秀吉は織田信孝(結木滉星)から戦場での采配を委ねられ、この決戦の指揮を任されることとなりました。戦いは始まったその日の夕刻には決着し、明智軍は敗北を喫しました。

 

秀吉と光秀……二人の対談場面に胸が熱くなる

秀吉は、光秀が信長を裏切った理由を直接聞きたいと思い、石田三成(松本怜生)らの協力を得て彼を茶室に連れ込み、二人きりで話す機会を作りました。

光秀(要潤) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』29話(7月26日放送)より(C)NHK

光秀(要潤)ほか 大河ドラマ『豊臣兄弟!』29話(7月26日放送)より(C)NHK

秀吉が「なぜ 上様を…。」「信澄様と手を結んでおられたのか?」と本題を切り出すと、光秀は「こたびのことは わしが一人で決めたことじゃ」「たまたま その好機に巡り合ったまで」と本音を明かしました。

光秀(要潤) 秀吉(池松壮亮) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』29話(7月26日放送)より(C)NHK

秀吉は、謀反を起こした信澄(緒形敦)の身の潔白を信長に説いたことが、結果として信長の死につながったと、自分を深く責めていました。光秀はその気持ちを見透かし、「上様が死んだのは 己のせいではないと そう思いたかったのであろう?」と率直に尋ね、「やったのは このわしじゃ わしの手柄じゃ」と言い、かつての仲間を慰めるように語りかけました。

 

秀吉は「あと少しで…上様は 天下一統を成し遂げられたのじゃ!あと一歩で…新しき世となったのじゃ!」と、涙ながらに訴えます。光秀は目に涙をため、「わしも一度は 上様を…上様がつくる世を信じようと思った」「しかし 駄目であった。わしが見たかったのは 足利義昭様の世じゃ」「信長に奪われたものを いま一度取り戻したかった」と答えました。

 

この場面について、“秀吉と光秀が対談するなどありえない!”という否定的な感想も少なくありません。しかし、光秀を演じた要潤と秀吉を演じた池松壮亮の演技はすばらしく、心を打たれました。要は信長を討った後の光秀に、かつての仲間である秀吉への優しさ、信長を討つに至った格闘を静かに滲ませ、池松は織田家の家臣として共に助け合った光秀への想い、そして自身も一人の主君を深く敬愛しているからこそ理解できる光秀の心情、そして信長が討たれた悲しみを繊細に表現していました。

 

秀吉は茶室から一人で出てくると、「明智殿の首は…百姓の落ち武者狩りに遭い 我らに届けられたことにする」と家臣らに伝えていました。

 

ちなみに、筆者は秀吉が光秀の首を取ったのかどうか、疑問が残っています。家臣の前に現れた秀吉は返り血で着物や手が汚れている様子もなく、秀吉が光秀を殺したと解釈してよいものか分かりかねています。

 

史実では、光秀を殺したのは、村人という説が有力です。光秀は坂本城(現:滋賀県)に戻る途中で落ち武者狩りに遭い、竹槍で刺され、殺されました。当時、村人は合戦において武装し、戦場から逃れてきた武士を待ち構えて討ち、褒美を得ていました。光秀が最期を遂げた場所は、現在の京都市伏見区。この場所に「明智藪」と呼ばれる本経寺の所有地があり、石碑が建っています。

 

小一郎が実感する世を変えることの難しさ

そして本作では、死がもう一つ描かれていました。慶(吉岡里帆)の息子・与一郎(大西利空)の死です。

与一郎(大西利空) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』29話(7月26日放送)より(C)NHK

与一郎は若くして、義理の父である小一郎(仲野太賀)のためにと、危険を顧みず戦に臨みました。初陣となった山崎の戦いで信孝を護ろうとして矢を受け、治療の甲斐なく命を落としました。

与一郎(大西利空)ほか 大河ドラマ『豊臣兄弟!』29話(7月26日放送)より(C)NHK

とも(宮澤エマ)は寧々(浜辺美波)と秀吉の帰りを待ち、与一郎の死を秀吉に伝えるつもりでいました。秀吉はそんな二人の心を察することもなく、「今 勘兵衛に聞いた 無念じゃ」とそっけなく告げました。ともは激昂し、「無念じゃ済まないわよ!」「あんたが 戦の采配をしてたんでしょ?」と厳しく詰め寄りました。

とも(宮澤エマ) 寧々(浜辺美波) 秀吉(池松壮亮) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』29話(7月26日放送)より(C)NHK

秀吉は“秀吉様”と崇められるほど出世しましたが、ともにとっては“弟・藤吉郎”。だからこそ、ともは秀吉の責任を真正面から問い、身内として激しく責め立てました。秀吉は「今は 小一郎のところに 行ってやらねばならぬ」と言い、とものもとを去りました。お互いに相手が必要なときを察し、支え合い、痛みを分け合っている二人。秀吉は小一郎にとって自分が今、必要とされていると感じ取ったのです。

 

小一郎は与一郎が大好物だった干し柿を涙を流しながら食べ、深い悲しみに包まれていました。

 

「いつの間にか 偉くなって…いいもん着て…うまいもん食うて…けど…何も変わっておらん。あのころから 何も変わっとらん」「わしらは…何のために侍になったんじゃ!」

 

小一郎は声を震わせ、涙を流しながら胸の内を秀吉に吐露しました。故郷・中村が戦で壊滅し、直(白石聖)を失うなど、数々の苦しみを味わってきた小一郎は、侍となってこの世を変えたいと願っていました。身分は上がったものの、無残な死はなくならず、世の中は何も変わっていない——与一郎の死をきっかけに、彼は改めてその現実を突きつけられたのです。

小一郎(仲野太賀) 秀吉(池松壮亮) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』29話(7月26日放送)より(C)NHK

秀吉は「わしが変えるわ。これは まだ 我らだけの秘め事じゃ。信雄様でも 信孝様でもない。このわしが 上様の思いを継ぐ」と宣言し、小一郎を抱きしめました。このときの秀吉の瞳には強い覚悟が宿り、恐ろしささえ感じられました。この言葉を聞いた小一郎の表情には、おどろきと戸惑いが浮かんでいました。

 

次回、30回のタイトルは「清須会議」。史実では、秀吉が擁立した三法師が信長の後継者となり、秀吉は3歳の三法師の後見人として、織田家臣団の中で優位な立場を清須会議で手にしました。秀吉が信長の正式な後継者になったわけではありませんが、この会議で大きな力を得たのは確かです。

 

本記事では、第29話を振り返りながら、秀吉が決意に至るまでの状況や感情の変化についてお届けしました。

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