酷いことを言われた、言ってしまったあなたに。

2019.03.23 LIFE

ジブリの名作『千と千尋の神隠し』。

公開から何年経っても、主題歌『いつも何度でも』を聴くと、美しい世界や感動が蘇る人も多いはず。

そんな、すてきなテーマ曲の作詞をされた覚 和歌子さん。

このコーナーでは、彼女の手がけたタロットカード「ポエタロ」より、カードのテーマに沿って書かれたエッセイを一話ずつご紹介しています。

 

今回のカードは「刀」

覚さんのエッセイに入る前に少し。

 

「刀」といえば、今や大河ドラマや博物館でしかお目にかかれない代物ですね。

これがいったい、わたしに、どんなメッセージをくれるの??と、思わず頭に「?」が浮かんだ人も多いかもしれません。

 

かっこよくて鋭い武器。あるいは、人を傷つける恐ろしい道具。

 

ところで、刀やその他の刃物以外で、「切れ味がいい/悪い」「鋭い」という表現がひんぱんに使われるものがあります。お気づきでしょうか。

 

「ことば」です。

 

カードの解説文では、このように表現されていました。

 

いったん手にしたら、慎重に謙虚につき合い、

その扱い方を学んでいくうちに、

人間そのものを学ばせてくれるものなのかもしれません。

 

ときに誰かを笑わせたり、真剣な話し合いを助長してくれたりしますが、ときに知らないうちに誰かを傷つけてしまう、鋭い、ことば。

本物の刃物と違うのは、傷ついた心は、身体の傷と違って目には見えないことですね。

 

誰かの心ない一言でもしもあなたが傷つけられたなら、きっと悔しくて悲しくて、怒りがこみ上げてくるかもしれません。

そんなときは、その場を離れて深呼吸です。そして、すぐに頭から追い出してしまうこと。

あなたを傷つけるような人に思考の時間を費やすのは、もったいない!

 

もしもあなたの何気ない一言で、誰かを傷つけてしまったなら。

後悔しているなら、もう大丈夫。その気持ちを素直に相手に伝えるだけです。

 

何の心あたりもないのに、このカードに出会ってしまったなら。

愛情から生まれたことばを、相手に伝えていますか?

何の気なしに、自分を大きく見せようとしたり、自尊心を守ろうとしていませんか?

これは、もっともっとハッピーな道に進んでいける、チャンスです。

 

テレビで人気を集めつづける芸人さんも、ことばが鋭いだけじゃないんですよね。

鋭いけれど、愛情も忘れない人たちだけが、長く長く愛されるんだなあと思います。

 

それでは、覚さんのエッセイをどうぞ。

 

***

 

【刀】切るとき、そこに愛はあるか

刀はそもそも相手を殺傷するための道具である。

 

いのちのやりとりという極限状況に

必要とされる覚悟、精神性は、

刀作りを仕事にしている人にとっても

同様に迫られるものなのだろう。

 

刀工の仕事場を見学に行ったとき、

ある男性が模造刀を持たせてもらって決めポーズをとったら、

きつくたしなめられていたのを見たことがある。

 

笑いを取るとかリラックスするなどという、

現代人には当たり前の(というかむしろ必須の)和やかな雰囲気とは

大きくかけはなれた世界があることを目の当たりにして、

とても印象深かった。

 

ジンバブエでは口から刀を出している男の木彫を見た。

「言葉は世界を切り分けるもの」

という意味をあらわしているのだと聞いた。

 

言葉を生業(なりわい)にする者として、

自分が武器を扱っているのだと

改めて思い知ったのはこのときだ。

相手を傷つけないで”切り分ける”(筋を通す)ことは本当に難しい。

切った跡をあとくされなく美しいものにするために、

手入れと扱いかたに熟達しなければならないのは

言葉も刃物も同じだ。

 

その上どちらも扱いから少しでも遠のくとすぐなまる。

勝ち負けの結果が大事なのではない。

切ることに必要なのは愛なのだから。

 

リストラしなければならない立場にあるあなたには、

このカードは大きな問いかけになる。

 

 

覚 和歌子

©FUKAHORI mizuho

詩人・作詞家

山梨県生れ/千葉県育ち。早大一文卒。平原綾香、smap、新垣勉、夏川りみ、クミコ、ムーンライダーズなどの作詞で、多くの作品をCD化。NHK全国学校音楽コンクール課題曲、校歌、合唱組曲等の作詞なども多く手がける。01年『千と千尋の神隠し』主題歌『いつも何度でも(曲・歌唱/木村弓)』の作詞でレコード大賞金賞。詩集『ゼロになるからだ』(徳間書店)、『はじまりはひとつのことば』(港の人)、『2馬力』(ナナロク社)など。エッセイ、絵本、翻訳など著作多数。映画監督、脚本、舞台演出、朗読、自らのバンドを率いてのソロライブ、米国ミドルベリー大学日本語学特別講師など。詩作を軸足にマルチな活動を展開。

 

***

 

ポエタロ」とは?

「ポエムタロットカード」を縮めた名前、『ポエタロ』。

47枚のカードにはそれぞれ、美しくやわらかい日本語の詩と、

かわいらしくも不思議な魅力のあるイラストが描かれています。

使い方はいたって簡単。シャッフルしたカードの中から、

その時の直感で1枚、あなた自身のためにカードを引いてみてください。

1日のはじまりにその日の指針を得てもいいし、なにか大きなチャレンジの前、

なかなか超えられない壁に直面しているときに。

そのときの気持ちや環境にリンクした、やさしい詩とメッセージが、

次の1歩を踏み出す勇気や確信を与えてくれる不思議なカードです。

あなたの心強い味方になってくれるはず

 

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『ポエタロ いのちの車輪をまわす言葉』

覚 和歌子・著 石川 勇一(相模女子教授)・監修 大野 舞(Denali)・画 カード47枚 ガイドブック付き 3,780円(税込)/地湧社

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