「梅毒、陽性です」。夫以外とは関係がないのに…。夜の接待を「仕事」と言い張る夫を信じた妻の絶望
モラハラ・夫婦問題カウンセラーの麻野祐香です。「働く女性」は、モラハラやDVをする夫から簡単に逃げられるのでしょうか。いいえ、そんなことはありません。さまざまな事情から、支配的な配偶者との結婚生活を続けている方は少なくありません。オトナサローネ世代のモラハラ被害にフォーカスした本連載、今回は、「仕事の付き合いだから」という夫の言葉を信じようとしてきたHさんのお話です。
※本記事は、相談者様への敬意と守秘義務に十分配慮したうえで、モデルケースとして編集・再構成しお届けしています。特定の人物や事例を示すものではありません。
※写真はイメージです
【実録・カウンセラーから見たモラハラ】#122 前編
「俺が稼いでる」が口癖の夫は、建築会社の経営者
Hさんの夫は、建設会社を経営しています。Hさんも、その会社の経理を手伝っています。夫は経営者であることに強いプライドを持ち、家の中でも自分の言うことが絶対でした。
「俺が稼いでいるから生活できるんだろ」
「誰のおかげで、この生活ができていると思ってるんだ」
気に入らないことがあると、夫は決まってこう言います。それを言われると、Hさんはもう何も言えなくなってしまいました。Hさんは、夫の会社の事務全般を手伝っています。帳簿はすべてHさんがつけていましたが、会社の通帳や振込は夫がすべて管理していました。月末の振込もHさんがしたほうがずっとスムーズに回るのに、お金に関することだけは、絶対に自分しか触れられないようにしているのです。
夫に反論すると、給与を振り込んでもらえないこともありました。さらに、毎月の生活費まで渡してもらえないこともありました。
「俺がお前を養ってやっている」
という言葉とお金を使って妻を従わせようとする、経済DVの傾向がありました。
違う意見は「絶対に」許されない
Hさんが夫と違う意見を言えば、
「お前は何もわかってない!だからお前はダメなんだよ」
と10倍になって返ってきます。
反論だけならまだしも、今話していることとは関係のないことまで持ち出され、人格まで否定されるのです。
Hさんが傷ついて
「そんな言い方はしないで」
と伝えても、
「俺を怒らせるお前が悪い」
と、冷たい言葉が返ってくるだけでした。
いったん夫が不機嫌になると、家の空気は一気に変わります。ドアを大きな音で閉める。話しかけても返事をしない。「何か怒ってる?」と聞けば、「うるせえな。ほっとけよ」と怒鳴られる。いつの間にかHさんは、玄関のドアが開く音や足音だけで、その日の夫の機嫌を探るようになっていました。
本来なら、いちばん安心できるはずの自宅で、Hさんは気を抜くことができなくなっていたのです。
接待で風俗店へ行くこが多い夫
Hさんが、ずっと嫌だと思っていたことがもう一つありました。夫は夜の接待が多く、帰宅が朝方になることもありました。そして、取引先の社長たちを風俗店へ連れて行っていることを、悪びれる様子もなく話すのです。
「今日も社長連中を店に連れて行った」
「地方から来た客だから、いい店を紹介してやった」
聞くたびに、Hさんは嫌な気持ちになりました。
「あなたも一緒にお店に入るの?」
そう聞くと、夫は途端に不機嫌になります。
「俺は行ってねえよ、店を紹介してるだけだ。お前には経営者の付き合いなんかわからないだろ? ……しつこいんだよ。仕事の邪魔までされちゃたまらないよ」
最後には、夫を疑ったHさんのほうが悪い、という話になっていました。
Hさんは、「風俗に行ってほしくない」という自分の気持ちを伝えていただけですが、いつの間にか、「仕事を理解しない妻」「夫を疑う妻」という話に変えられてしまいます。
これは、モラハラでよく見られる「論点のすり替え」です。
何を言っても「お前が悪い」で終わる会話が続けば、自分の気持ちを口にすること自体が怖くなっていきます。さらに怖いのは、いつの間にか自分の感覚まで信じられなくなってしまうことです。
「私が気にしすぎなのかな」
「経営者なら、このくらい普通なのかな」
最初は「嫌だ」と思っていたはずなのに、何度も否定されるうちに、夫を疑うより先に自分を疑うようになっていました。
ある日、赤い発疹ができて
そんな生活が続いていたある日、Hさんは体に赤い発疹が出ていることに気づきました。発疹は手のひらにも広がっていました。最初は、何かにかぶれたのだと思いました。体にも手のひらにも発疹があるのに、かゆみはほとんどありません。
「何だろう、これ……」
これまで見たことのない発疹が気になり、Hさんは皮膚科を受診しました。診察を受け、医師から勧められた検査も受けました。そして後日、検査結果を聞きに行ったHさんは、思いもしなかったことを告げられたのです。
「梅毒の検査が陽性です」
「梅毒……ですか?」
すぐには意味を理解できませんでした。梅毒が性感染症であることくらいは、Hさんも知っています。でも、Hさんには夫以外の男性との関係は一切ありません。夫はやっぱり風俗に行っていたのだろうか。それとも、浮気をしていたのだろうか。さまざまな考えが頭の中を駆け巡りました。そして、これまで何度も聞かされてきた、
「俺は行ってない」
「紹介しているだけだ」
という夫の言葉を思い出しました。
帰り道、Hさんは何度もその言葉を反芻しました。
「嘘つき……」
Hさんの頬を、涙が流れました。
夫の強気な言動を、おかしいとは思っていた。でも自分の言葉は封殺されて、挙句にこんなことに。そう思うと、みじめで、悲しくてたまらなかったのです。
本編では、「仕事の付き合いだから」と風俗店との関わりを正当化する夫を信じようとしてきたHさんが、ある日、思いがけず梅毒陽性と診断されるまでについてお届けしました。
▶▶夫も梅毒陽性。それでも「俺からうつったとは限らないだろ!」妻がついに見切った“モラハラ夫の嘘”
では、責任を認めようとしない夫の姿を目の当たりにしたHさんが、「おかしいのは私ではない」と気づき、離婚を決意するまでについてお届けします。
続きを読む
スポンサーリンク
【注目の記事】
スポンサーリンク
















