SNSの批判に落ち込み3ヶ月ひきずった。60代エッセイストが「他者の評価」から立ち直るために行った場所は【一田憲子×大平一枝対談】

2026.10.20 LIFE

「こんなふうに思うんだってびっくり」。他人の目が気になる人と気にせず生きる人の違い

一田: この本を出したとき、いろんな方に見本誌をお送りしたんですが、お付き合いのあるスタイリストの方から、「こんなふうに思うんだってびっくりして読みました」って言ってくださったんです。いつも送ったらすぐ読んでくれて、一番に感想を送ってくれる方なんですけど。

 

大平: それは、その方が「褒められなくちゃ」なんて一ミリも思わない方だから、ですよね。

 

一田: そうなんです。自分がやりたいようにやる人なんですよ。世の中にはそういう人もいるじゃないですか。私はどうしても「褒められたい」って思っちゃうから、「褒められたいなんて一ミリも思わない」という人の思考回路が理解できない。

 

例えば、インタビューをしていても、生きていて「つまずかない人」っているんですよね。そうすると、ドラマチックに書けないから、「つまづいてくれ」って思ってしまう(笑)。でも、自分の文脈にその人を引き込んで理解するとだめなんだなっていうことが、この年になってやっと分かってきた。その人の文脈の中で理解しないと。

 

大平: 自著の『東京の台所』(毎日新聞出版)でも全く同じことがあって。

 

市井の人の台所を訪ねる連載なんですけれど、ドラマが何もない人だっているんですよ。それでも最初の80回ぐらいまでは、起承転結をつけて自分の文脈でその人を理解して、書いていたんです。ところが、やはり齟齬が出てきて、ある方に原稿を送ったとき「大平さんにとって、私ってこんなかわいそうな人なんですね」って言われて、今でもトラウマになっているんです。

 

取材した日がゴールだと思っていたんですけど、人生ってそのあとも続く。それに気づいてから、「何回訪ねても答えは出なかった、でもそれでいい」って思えるようになったんです。人生はその先も続くっていう終わり方でいいんだって。

 

一田: 結論づけたり、意味づけたりしなくても、そのままでいいってことね。私も、何回も取材でお会いしている明るい人柄の奥さんに、全然違うテーマで取材をしたときに初めて、お母様との関係が悪くて、心理的にも落ち着かなくて病院に通っていると聞いたんです。

 

何回も訪ねていたのに、全然知らなかった…。取材のときに知る、その人自身って、本当に氷山の一角でしかないんですよね。

 

大平:それを知ったうえで書いたら、選ぶ言葉が全然違うんですよね。

 

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