「やっぱり、庶民の暮らしが分かる人がトップがいい」秀長(仲野太賀)なら現代日本の問題も「万事円満」か?片岡鶴太郎の圧倒的存在感も話題【NHK大河『豊臣兄弟!』38話】
*TOP画像/秀長(仲野太賀)ほか 大河ドラマ『豊臣兄弟!』38話(10月4日放送)より(C)NHK
戦国時代のど真ん中を舞台にした『豊臣兄弟!』(NHK総合ほか)の主人公は仲野太賀が演じる豊臣秀長。兄弟の絆で“天下統一”という偉業を成し遂げた豊臣兄弟の奇跡を描いた大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK総合ほか)の第38話が10月4日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、作品の内容や時代背景を深掘り解説していきます。
郡山の商いを活性化するために駆けまわる秀長
大和国の国主となった秀長(仲野太賀)。本回において、彼が向き合う相手は、奈良の大商・川窪清俊(カトウシンスケ)をはじめとする大商です。自国において座に縛られない商いを許可したものの、古いしきたりが邪魔をし、現状はうまくいきません。
そんな中、末(池端杏慈)が「大坂に行かせてくださりませ」と、秀長に懇願。理由は、郡山のお米はおいしくない、街は寂しい、買い物ひとつするにもわざわざ奈良まで人をやらねばならない、というものでした。年頃の娘が寂れた土地での暮らしに飽き飽きし、父に訴え、母に宥(なだ)められる……そんな光景は時代を問わず、どこの家でも見られます。

末(池端杏慈) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』38話(10月4日放送)より(C)NHK
秀長は座を組んできた豪商たちが裏で睨みを利かせていることに気づき、清俊らのもとを自ら訪ね、交渉を試みます。筆者は彼らを自らの利益ばかりを追う貪欲な者たちとみなしていましたが、その主張は頷けるものでした。豪商らはこの地で先祖代々にわたり商いを守り継いできたのです。たとえ秀長に従ったところで、すぐに別の大名に入れ替わる……という考えにも、同情せざるを得ません。
心を込めて商いをする才蔵が起こしたキセキ
秀長は藤堂高虎(佳久創)ら家臣を連れ、慶(吉岡里帆)から聞いた評判の筆職人・才蔵(間宮祥太朗)を訪ねます。
才蔵は「郡山に来れば 誰でも自在に商いができる と聞いて 飛び出してきた次第。しかし…ご覧のとおり」と、現状をしんみりと語りました。彼の想いや現状を知った秀長は、「わしもこのようなことになるとは 思いも寄らなんだ。許せ!」と謝罪。民が置かれている厳しい現状を自らの責任と受け止め、才蔵の悔しさに寄り添う秀長の姿が、ここにはあります。

秀長(仲野太賀) 才蔵(間宮祥太朗)ほか 大河ドラマ『豊臣兄弟!』38話(10月4日放送)より(C)NHK
秀長は清俊らが卑怯な手段で金を稼ぎ、このことも才蔵を困らせる原因となっている事実を知っても、彼らを力ずくで説き伏せようとはしません。「ひとつきで 郡山を人が集まる栄えた町にしてみせよう。そして その目で 奈良と郡山どちらが 商いに適した町か 見極めるがよい」と、最終的な選択を大商らに委ねたのです。
秀長が郡山を商いに適した町にするために考えた案は2つ。1つは、商人らの店の借り賃を免除し、当座の商いに入り用の金を貸し付けること。ちなみに史実でも、豊臣秀長は商人らに自らの銭を貸し付けていました。そしてもう1つは、才蔵の筆。才蔵の商いが郡山でヒットしたと広まれば、奈良に商人たちが集まるだけでなく、京や大坂からよい筆を求めて足を運ぶ者が増えると考えたのです。
秀長と家臣らは筆を買ってくれる者を探し、奮闘するものの、事はそううまく運びません。そうした中で、堺の商人・千宗易(吉岡秀隆)が、絵師・狩野永徳(片岡鶴太郎)を紹介してくれました。

狩野永徳(片岡鶴太郎) 高虎(佳久創) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』38話(10月4日放送)より(C)NHK
永徳は屏風の端から端までかすれずに線を引ける筆を作ってほしいと、高虎経由で才蔵に依頼。才蔵は秀長らの協力を得ながら、永徳を満足させられる筆を生み出すために、動物のさまざまな毛を使い、模索します。

秀長(仲野太賀) 才蔵(間宮祥太朗) 末(池端杏慈) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』38話(10月4日放送)より(C)NHK
そうした中で、末の腰についた天竺伝来のヤクの毛で作られたファーテールが、才蔵の目に留まりました。末は才蔵の懇願に戸惑ったものの、最終的に折れ、毛の一部を筆に使うことを許しました。ヤクの毛を使った筆は、永徳が求める長さの線を引ける筆となりました。
永徳はこの筆に満足し、見る人によっては秀吉と秀長を彷彿とさせる獅子の屏風を描き上げました。

永徳(片岡鶴太郎) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』38話(10月4日放送)より(C)NHK
本作において、初登場となった片岡鶴太郎扮する狩野永徳。片岡は昨年の大河ドラマ『べらぼう』(NHK総合ほか)では、鳥山石燕を演じていました。『べらぼう』では妖怪画の大御所らしい堂々としたたたずまい、歌磨(染谷将太)に寄り添う師としての愛情深さを表現していましたが、本回でもキーパーソンを好演。片岡のただ立っているだけで物語が動く存在感に圧巻。ちなみに史実でも、狩野永徳は金地に二頭の獅子が悠然と歩く『唐獅子図屏風』を制作しています。この屏風は2mを超える大きさです。
秀長は自身が納める大和を「大いなる和の国」にし、民を豊かにすることを願い、奮闘します。数々の問題を「万事円満」に解決してきました。秀長は百姓であったゆえに、民としての苦悩も、経済苦も身をもって知っています。国内一ともいえる権力者の弟となった今もその気持ちを忘れておらず、偉ぶることもしません。人は突然にして大金を手にしたり、社会的地位を上げたりすると、傲慢になったり、富を見せびらかしたりしたくなるものですが、秀長は違います。
「今より わしは 羽柴豊臣朝臣秀吉じゃ」 「豊臣」に込められた思い
秀長が古いしきたりを変えるために奮闘している頃、秀吉も「真 やっかいだわ。古いしきたりっちゅうんは」と、慣習に頭を抱えていました。秀吉は帝のお許しを得て、新たな氏(うじ)を頂こうと試みていたのです。
寧々(浜辺美波)が「今のまま 藤原ではいけないのですか?」と尋ねると、秀吉は「関白になるために 近衛龍山殿の猶子となり その氏の藤原となったはよいが あれやこれやと 縛られることが多くてのう」と、悩みを打ち明けていました。また、寧々は秀吉が新しい氏を得れば近衛家への義理立てが不要になり、我が家から再び関白を出せる可能性が開けることも理解していました。秀吉は我が家の繁栄を長い目で見ていたのです。
秀吉は龍山(前野朋哉)に養子にしてほしいと懇願する際、「天下一統を成し遂げた暁には あなた様のお子に譲って わしは身を引きますゆえ どうか」と誓っていました(第36話「姫若子と鬼若子」)。しかし、秀吉は考えが変わったのか、当初から口先だけだったのか、自らが衰えたあとは家の者を跡継ぎに据えることを企てているのです。人の言葉を安易に信じ、鵜呑みにしてはいけない……そう痛感したのは、おそらく筆者だけではないはずです。

秀吉(池松壮亮) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』38話(10月4日放送)より(C)NHK
秀吉が決めた姓は「豊臣」。秀吉は「万民を豊かにするという意味じゃ。わしのことを支えてくれておる全ての民たち わしが大切に思っておる すべての者たちのことじゃ」と、寧々、江(西川愛莉)、初(田牧そら)に名の由来を喜々として話していました。
秀吉と秀長には心がすれ違う時期もありました。そんな日々を乗り越え、今は「万民を豊かにする」という同じ目標に向かい、国のトップとして奮闘しています。
つづく>>女性は身売り、男性は農労働へ……。鉄鎖で船底に押し込められた日本人奴隷貿易と秀吉の激怒【戦国時代の裏歴史】
では、戦国時代における「奴隷・人身売買」についてお届けします。
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