「秀吉譲りの女好き」秀次(山田涼介)の「妻など誰でも」発言に秘められた真意。茶々(井上和)は己の意思で覚悟の道へ【NHK大河『豊臣兄弟!』39話】
*TOP画像/秀次(山田涼介) とも(宮澤エマ) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』39話(10月11日放送)より(C)NHK
戦国時代のど真ん中を舞台にした『豊臣兄弟!』(NHK総合ほか)の主人公は仲野太賀が演じる豊臣秀長。兄弟の絆で“天下統一”という偉業を成し遂げた豊臣兄弟の奇跡を描いた大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK総合ほか)の第39話が10月11日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、作品の内容や時代背景を深掘り解説していきます。
秀吉の後継者問題勃発
第39話「茶々の本心」での秀吉(池松壮亮)の年齢は脚本と史実を照らし合わせて考えると、49歳前後。秀長についても40代後半です。織田信長は「人生50年」と詠いましたが、当時の平均寿命を鑑みると、秀吉と秀長(仲野太賀)は晩年期にあるといえます。この年齢になり課題となるのが、秀吉の後継者をめぐる問題です。
秀次は本作では秀吉を尊重するも……。本心から言っている?
最近は家臣たちの祝言話を取り持つことが多いという秀吉。そんな秀吉は「ところで 秀次。お主 嫁をとる気はないか?」と、秀次(山田涼介)に尋ねました。前野長康(渋谷謙人)が「秀次様は 既に 池田恒興のご息女をめとられておりまする」と説明したように、秀次にはすでに正室がいました。
それでも、秀次は「いえ。もし殿下のお望みとあれば 私は 新たな妻をもらっても構いませぬ」「私は 殿下のためならば 妻など 誰でも ようございます」と答え、秀吉を立て、忠誠心を示します。

秀次(山田涼介) 秀吉(池松壮亮) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』39話(10月11日放送)より(C)NHK
史実では、秀次は秀吉に負けず劣らずの女好きであり、しかも育ちのよい女性が好みだったと伝わっています。さらに、秀吉の元側室にして関白就任を支えた一の台を、隙をうかがい我が妻となすなど、本回の発言からは到底想像し得ぬ所業を重ねています。
本回の別の場面では、秀次は「まだ たったの40万石にすぎませぬ。私は もっともっと偉くなって 母上にも喜んでいただきまする」と、とも(宮澤エマ)の前で出世欲をあらわにしていました。

秀次(山田涼介) とも(宮澤エマ) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』39話(10月11日放送)より(C)NHK
秀次といえば、家臣の死に心揺さぶられることもなく、戦の失敗責任を家臣に丸投げし、秀長を困惑させた姿が視聴者に違和感を残しました(第35話「秀長誕生」)。本回でも、妻をもつ身でありながら「妻など 誰でも ようございます」と軽く言い放つところに、彼の軽薄さが浮かびます。秀次にとって秀吉の跡継ぎとなる己こそが、誰よりも大切なのか……。
山田涼介の巧みな演技により、秀次の話しぶりは感情がこもっていないようにも見え、まっとうなことを言っていても、“殺傷関白”とも呼ばれる秀次の奇異な気質がうっすらと感じられました。秀長も秀次の人柄をよく理解しており、「秀次は 天下人の器ではないと思うておる」と、秀吉に述べる場面がありました。
秀吉と茶々の婚姻を提案したまさかの人物とは……!?
第33話「北庄城の別れ」では、市が「父上のようなお方と巡り合って よい子を産むのです。さすればその子が きっとあなたたちを幸せにしてくれる。この母がそうであったようにな」と、茶々らに伝える場面がありました。しかし、茶々は母の想いとは裏腹に、誰かと夫婦になることを望んではいません。

茶々(井上和) 秀吉(池松壮亮)ほか 大河ドラマ『豊臣兄弟!』39話(10月11日放送)より(C)NHK
秀吉はあさひ(倉沢杏菜)、副田吉成(前原瑞樹)、秀長らに、茶々へ夫婦のよさを説くよう頼みます。しかし、あさひと吉成の口から出るのは、「まき割りとか水汲みとか力仕事をしなくて済むようになったでしょ」「話したいことがあった時にすぐ話せたり」といった、憧れのかけらもない現実的な言葉ばかり。しかし、二人の姿そのものが、夫婦のよさを物語っていました。語り合ううちに口論へと発展したように、本音をさらけ出せる相手がそばにいることこそが、夫婦の真のよさなのかもしれません。

茶々(井上和) 秀吉(池松壮亮) あさひ(倉沢杏菜) 吉成(前原瑞樹) 秀長(仲野太賀) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』39話(10月11日放送)より(C)NHK
秀吉が茶々の結婚に頭を悩ませる中、秀長と石田三成(松本怜生)は豊臣家の将来のために、秀吉が新たな妻を迎え入れる必要性があると感じていました。秀吉は寧々(浜辺美波)を想い、反対の意思を示していたものの、秀長から「これまで 我らが作り上げてきたものが 水の泡となってしまう」「真に我が家の行く末を思うなら 子を作り 我らの手で育てるのじゃ」と説かれると、もう一人の妻を持つ話を渋々受け入れました。
茶々の夢
秀長が秀吉の相手として提案した人物は、茶々。茶々は秀長に秀吉の側室になるよう提案されると、怒りをあらわにします。秀長は茶々に矢を向けられながら、追いまわされる事態に……。

茶々(井上和) 秀長(仲野太賀)ほか 大河ドラマ『豊臣兄弟!』39話(10月11日放送)より(C)NHK
「今や 殿下は 力も位も手に入れた まさに天下人。もし子が産まれれば いずれは後を継いで天下人となる。信長公も お市様も 浅井殿も なしえなかった天下人の夢を 茶々殿の子がかなえられるとしたら きっと お市様も 喜んでくださるに違いない。[中略]わしは始めは 妻から敵と思われておりました。敵だからといって心を閉ざし続けるのは あまりにも寂しくはござりませぬか。」
秀長は個々の人間の今の想いを重んじていましたが、この機に及んでは“家”を重んじています。そうはいっても、秀長は個別の人物に薄情になったわけではなく、自らが妻・慶(吉岡里帆)にとって“亡き夫の仇”だった経験も踏まえて、この判断にいたったのです。
一方、寧々は自身と秀吉の間に授かった我が子である“家”を守るため、茶々が秀吉の妻になることを受け入れました。さらに、秀吉の妻になるべきか迷う茶々に弓の勝負を挑み、勝ったら自ら選び、負けたら秀吉の妻になるようにと約束しました。

茶々(井上和) 寧々(浜辺美波) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』39話(10月11日放送)より(C)NHK

茶々(井上和) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』39話(10月11日放送)より(C)NHK
生まれて初めて自ら決めた道を進む喜びを語り、自分にもこうした日が訪れることを願ってくれている母・市(宮崎あおい)の想いを、茶々は思い出しました。母の想いを胸に矢を放つと、見事に的の中心を射抜きました。
茶々は「私は 殿下の妻になりとうございます。父と母の夢のため そして 豊臣のため」と、寧々に敬意を示しつつ、自らの意思を明らかにしました。
戦国時代を生きた女性たちには己の意思で道を選ぶ自由は、ほとんど許されていませんでした。しかし本作は、そうした制約の中にあっても彼女たちにも心が確かにあることを描き、許される範囲で自ら道を切り拓いていく姿を描き出しています。
つづく>>父母の仇・秀吉の子を産んだ市の長女・茶々、現代へ血を繋いだ三女・江【浅井三姉妹が生き抜いた戦国サバイバル】
では、秀吉の子どもを産むのはイヤじゃなかったのか?現代女性には想像できない時代を生き抜いた「茶々(淀姫)」についてお届けします。
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