あさひ(倉沢杏菜)の輿入れで家康(松下洸平)と秀吉(池松壮亮)が義兄弟に!“爪噛み癖”の完治から紐解く、家康の心の変化とは【NHK大河『豊臣兄弟!』40話】

2026.10.21 LIFE

*TOP画像/家康(松下洸平) あさひ(倉沢杏菜) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』40話(10月18日放送)より(C)NHK

 

戦国時代のど真ん中を舞台にした『豊臣兄弟!』(NHK総合ほか)の主人公は仲野太賀が演じる豊臣秀長。兄弟の絆で“天下統一”という偉業を成し遂げた豊臣兄弟の奇跡を描いた大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK総合ほか)の第40話が10月18日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、作品の内容や時代背景を深掘り解説していきます。

 

数正の家康への揺るがぬ忠誠心、吉成のあさひへの愛

第40話「あさひの輿(こし)入れ」では、そばで支えることはできなくても、相手の幸せのために遠くから見守ることを決めた二人の人物が登場しました。徳川家康(松下洸平)の重臣・石川数正(迫田孝也)、あさひ(倉沢杏菜)の夫・副田吉成(前原瑞樹)は、大切な者のために自ら距離をとる決断をしました。

 

数正が秀吉に寝返った真意。家康の心の成長に涙

第34話「最強のライバル」で描かれていたように、家康は幼少期から人質として今川家に送られ、心を踏みにじられ、大切なものを何度も奪われました。そうした中で、家康は「奪われないために、自ら奪う側になりたい」と心に決めました。

 

家康のみじめな姿を間近で目にし、寄り添ってきたのは、数正でした。本回では、そんな数正が秀吉(池松壮亮)のもとに出奔し、「この石川数正。これよりは豊臣のため 殿下のため この命をささげる所存」と、秀吉に誓いました。

 

家康にあきれ果てたかのように振る舞う数正でしたが、秀長(仲野太賀)が察していたように、数正が出奔したのは徳川家を守るためでした。家康が折れなければ戦が始まる今、この事態を回避するため、数正は徳川家を捨てたのです。

家康(松下洸平) 数正(迫田孝也) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』40話(10月18日放送)より(C)NHK

数正の決断の背景には、家康と数正が三方ヶ原の戦いで、武田家に大敗を喫したときに交わした約束がありました。家康は自身のもの忘れの激しさを踏まえ、「お前は決して忘れるでない。この先 わしが同じ失態を繰り返さぬよう にらみを利かせ いさめてくれ」と、数正に命じていたのです。

 

数正が豊臣家へ出奔した真意を綴った文を読む家康はいつもの癖で爪を噛み、納得しきれぬ表情を浮かべていました。「殿。爪を噛むのは おやめくだされ」という一文に目を通すと、家康は数正の存在を感じ取り、爪を噛むのをやめます。

 

ちなみに、爪噛みは子どもだけでなく、成人にも見られる症状で、自分に対する攻撃的・自虐的な感情の表れだといわれることもあります。また、人間は欲求不満や不安、寂しさを口元で発散しようとするとも言われており、爪噛みもその一つと考えられています。

 

家康は、秀吉が無理難題を受け入れ、あさひが徳川家に嫁ぐことになったと家臣らと話すときも、思惑が外れて動揺しているのか、爪を噛もうとしていました。忘れやすい家康ですが、数正の注意を思い出し、爪から口を必死に遠ざけようとしていました。

 

この場面ののち、結婚の白装束に身を包んだ家康とあさひが向かい合い、家康が「よう参られた。これからは ここが あなたの住まいじゃ」と、あさひをあたたかく迎え入れる場面が続きます。人質のつらさを知る家康は、40代という当時においては老いを感じる年齢で、嫁いできたあさひをねぎらっていました。

 

本作の家康は腹黒く、人を嘲るような態度をとり、信用しがたい男という印象もあります。その根本には家康の自己防衛意識や他者への恐怖心が見えます。そんな家康ですが、数正がそばを去れば、まるで糸の切れた凧のようになってしまうかと思いきや、確かに成長を見せました。数正の出奔を知らせる書状を読んだ際には、顔を真っ赤にし、眼に涙を浮かべて、声を上げ、混乱していましたが、平常心を取り戻しました。数正は身を引くことで、家康が自暴自棄になることはないと分かっていたのでしょう。

 

あさひの想いを察し、身を引いた吉成

あさひは豊臣兄弟の末っ子で、天真爛漫な少女でした。中村時代、秀長やとも(宮澤エマ)が、秀吉の口だけ達者で中身が伴わない面や、突飛な言動で被る迷惑にうんざりする中でも、あさひだけは幼さもあって秀吉をいつも慕い、一家の窮地にも笑っていました。

 

39話「茶々の本心」では、あさひは秀吉に命じられ、夫・吉成とともに茶々(井上和)に夫婦のよいところを説明していました。しかし、二人の口から出てくるのは、「まき割りとか水汲みとか力仕事をしなくて済むようになったでしょ」「話したいことがあった時にすぐ話せたり」といった、ロマンティックさのない言葉ばかり。それでも、二人だけの世界があることが感じられ、仲のよさが伝わってきました。

 

本回では、この夫婦の絆をさらに強く感じられました。中部と近畿を中心に襲った巨大地震が起きた際、吉成はあさひを守り、怪我を負いました。秀長らに感謝されると、「亭主が女房を守るんは当たり前じゃ。どうということはありませぬ」と口にします。

 

乱世を生きるあさひと吉成には、厳しい運命が待っていました。秀吉は地震の被害を鑑み、家康と戦っている場合ではないと察し、和睦を決めます。仲介役は織田信雄(山脇辰哉)。信雄は家康の和睦意思を伝えつつ、「どなたか お身内の方を 妻として迎え入れたい」という条件も伝えました。

 

豊臣家の身内で該当するのは、ともとあさひ。しかし、秀吉に子が産まれなければ、秀次(山田涼介)が跡取りとなる以上、その母を徳川にやるわけにはいきません。残る候補はあさひだけです。(視聴者からは秀長の娘・末(池端杏慈)がいると鋭い指摘があるが……。)

 

史実では、秀吉があさひを出世の道具として、夫と強引に離縁させたエピソードが、彼の非情さを裏付ける一つとして語られています。しかし本回では、世の安定の代償として、実の妹とその夫に酷なことをする秀吉の身を引き裂かれるような苦しみが細やかに描かれていました。

 

秀吉は吉成にこれまでの感謝を伝えた上で、「お主には 但馬の国を与える」と言い、離縁を命じます。吉成は「あさひと離縁など…。」と声を震わせ、あさひは「私も嫌でございます」と拒みます。

寧々(浜辺美波) 秀吉(池松壮亮) 吉成(前原瑞樹) あさひ(倉沢杏菜) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』40話(10月18日放送)より(C)NHK

そこで気持ちを改めて動いたのは、吉成。あさひにかけ落ちを誘い、自ら密告し、“あさひが裏切った”ことにして怒らせ、関係を断ち切ろうとしたのです。吉成がそう企てたのは、あさひが“自分は何の役にも立たない”と苦しんでいたことを知っていたから……。子を授かれず、戦に行けず、字も下手で銭勘定も暗いと自分を責め、いつも笑って皆を明るくすることに存在意義を見出していました。

吉成(前原瑞樹) あさひ(倉沢杏菜) 秀長(仲野太賀)ほか 大河ドラマ『豊臣兄弟!』40話(10月18日放送)より(C)NHK

吉成はあさひにとって“豊臣家の天下統一を支える一人”になることが、一番の幸せだと考えたのです。最愛の人に背中を押されたあさひは、自分にしかできないことをやる覚悟を決め、家康のもとに晴れやかな笑顔で嫁ぎました。

吉成(前原瑞樹) 大河ドラマ『豊臣兄弟!』40話(10月18日放送)より(C)NHK

吉成には但馬の国主として秀長らとともに生きる選択肢が提示されたものの、彼が選んだのは出家。自分を“果報者”とし、あさひからもらったたくさんのものを胸に、生きていくことを決めました。

 

つづく>>夫は自害という説も……。離縁させられたあさひだけではない!政略に翻弄された戦国の姫たちと秀吉の母・なか
では、あさひの夫や戦国時代の離縁についてお届けします。

 

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