娘の合格を願うほど、離婚できなくなる?レス歴10年の46歳夫が「たぶん、僕は別れようと言わない」と話す理由

2026.11.06 LOVE

話そうとしたら『今それどころじゃないでしょ』と言われた

離婚の前に、話し合う道はなかったのか。マサノリさんは、この夏に一度だけ、奥さまに切り出そうとしたといいます。「娘が塾の夏期講習に行っている昼間に、『俺たちのことなんだけど』と言いかけたんです。そうしたら妻が、『受験が終わってからにして。今それどころじゃないでしょ』と。何の話か、たぶん分かっていないと思います」

 

マサノリさんは、それ以上は言えませんでした。奥さまがこの10年をどう受け止めているのか、マサノリさんは知りません。

 

「もしかしたら、妻もつらいのかもしれないし、もうどうでもいいのかもしれない。受験が終わって話をしたら、妻のほうから離婚を言われる可能性だってある。僕はずっと自分が切り出す側のつもりでいましたけど、そこから目をそらしているのも、たぶん僕のほうです」

 

 

たぶん、僕は別れようと言わない

来年の2月、娘さんの受験が終わったら、離婚を切り出すのか。取材の最後に尋ねると、マサノリさんは少し考えてから答えました。

 

「合格したら、たぶん言わないと思います。言えない、のほうが正しいかもしれない。娘の学費を払って、ローンを払って、このまま妻と同じ家で暮らしていく。それを家族のためと呼ぶのか、自分の弱さと呼ぶのか、まだ決められていません」

 

 

どこにも数えられていない、夫たちの沈黙

マサノリさんのように、夫婦間の問題を抱えながら家計の大半を担う夫は珍しくありません。妻が子育てのために働き方を抑え、夫が稼ぐ。その分担は、家族がうまく回っているあいだは合理的に見えます。けれど、夫婦の関係が壊れたとき、その分担は互いを縛るものに変わります。妻は経済的に離婚を選びにくく、夫は妻と子の生活を落とすことを恐れて離婚を言い出せない。そこに子どもの進学費用が重なれば、選択肢はさらに狭まります。

 

2026年4月からは、離婚後も父母の双方が親権を持つ共同親権を選べるようになりました。けれど、親権の形が変わってもフルタイムの共稼ぎでない限り、1人の稼ぎで2つの家計を支えなければならない構造は変わりません。

 

司法統計に表れる「夫婦関係の不和」は、離婚を申し立てた人の数です。その手前で、家計と子どもの将来を前に口を閉ざした夫たちは、どこにも数えられていません。夫婦間の悩みは「そんなこと」として扱われ、本人もまた、自分の苦しみを「そんなこと」だと思い込もうとする。

 

娘さんの第一志望校の入学金は、すでに準備してあるそうです。10年間、妻に触れていない夫が、合格したらその入学金を振り込む。それが、彼がいま選ぼうとしている家族の形。

 

「家族のため」という言葉の陰で、口を閉ざす夫は、きっと彼だけではありません。誰にも数えられないその沈黙を、私たちはまだ知らないままでいるのです。

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