30代半ば芸人は年収190万、バイトで生計を立てる。その暮らしは明るいのか?
元国税局職員のさんきゅう倉田です。
吉本興業で芸人をやっています。
日々、お金の知識や情報を集めていますが、その中でも芸人たちのお金事情は大変興味深いと思います。
実録!若手芸人のアルバイト事情とは
95%の芸人がアルバイトをしていて、居酒屋やコンビニ、バー、送迎、アスベスト剥がしなど、一般的なものから体調を悪くするものまで様々です。
売れていないからアルバイトをしているとは限りません。テレビに出ていない、みなさんが知らない芸人でも、アルバイトをしていないことはよくあります。
例えば、ぼくですね。
ぼくは芸歴10年目ですが、5年くらい前からアルバイトはしていません。でも、「何のアルバイトをしているんですか」とよく聞かれます。芸人といえば、アルバイトをしながら頑張るイメージがあるので、当然だと思います。
ぼくですら、売れていない芸人を見たら、何のアルバイトをしているか気になります。
アルバイトをしている芸人の月収は、10万円から20万円で、ボーナスはないので、年収は120万円から250万円です。
彼らの収入は簡単に予想できるので、その年収で生活している人が、どのような思考を持っているかが、最も気になります。
今回は、年収190万円の芸人に話を聞きました。
実録!年収190万円の芸人の思考とは?
さんきゅう倉田「日常生活で気をつけていることなどありますか?」
芸人「(1分ほど沈黙があって)…ないかな」
さ「例えば、飲食店での店員さんへの対応とか」
芸「…ないかな」
さ「優しく接するとか、無理なことは言わないとか」
芸「こっちは客なんで優しくする必要はないし、お金払ってるんでちゃんと対応してもらいたい」
さ「店員さんに、ミスなどがあったらどうしますか?」
芸「むちゃくちゃ切れるよ」
さ「自分にミスが有った場合は、どうしますか?例えば、予約の時間に遅れたり、注文の仕方が悪くて希望のお酒が来なかったりした場合」
芸「別に。謝りもしない。店員なんだから、それくらいいいだろって感じ」
少し話を聞いて、胃がもたれてしまいました。
ある程度、回答は予想していましたが、それにしても、「やはり、芸人さんだな」と思わせる思考です。
「お金を払っている」といっても、それはサービスの正当な対価であって、そこには互いに感謝があって然るべきです。そもそも、アルバイトをしている芸人が行く店なので、大した金額を支払ってもいません。
未だに「お客様は神様だ」という、誤った教義を信じているようです。
要するに「他人には厳しい」が「自分にはとことん甘い」
自身が、30歳を超えてアルバイトをしていることについて聞くと、「普通だと思ってる」、先輩でアルバイトをしてる人については「がんばってるなあ、と思ってる」。
40歳を超えてアルバイトをしている先輩については「お笑いやってたらそういうこともあるなあ、と思ってる」そうです。
楽観的です。楽観的でなければ、30歳を超えて何の不安もなくアルバイトなどできないのでしょう。
彼の毎日心がけていることや抱負が気になったので、聞きました。
ぼくも毎年一つ、身につけたいスキルを抱負として設けて、何も考えずにできるようになったら忘れるようにしています。
彼の抱負は「電車の中で席が埋まっているときは、お年寄りの前に立つ」だそうです。理由は、お年寄りは早く降りる傾向が強いから。
彼は、電車に乗ったらすぐにお年寄りを探すそうです。
仕事や人間関係、スキルアップのための何かではなく、電車で座ることを日々大切にしています。
もっと考えるべきことはあるはずですが、他には思いつかないようで、「電車だね、電車」と電車の話をずっとしていました。
お笑いで心がけていることは
お笑いで心がけていることをしつこく聞くと、
「もはや、運頼み」
とたのしそうに言いました。
座右の銘は、
「努力したものが報われるとは限らないが、成功したものは、みなすべからく努力しておる」
で、年に数回、思い出すそうです。でも、努力は決してしません。
「努力はそう簡単にはできない。難しい」
と名言のようにつぶやいていました。
貯金はしておらず、今、手元には10万円しかありません。
毎日、なるべく安いものを買います。靴はよくわからないメーカーの物を履き、服は実家からダンボールで送ってもらっています。高いブランドを調べることもしません。
「履ければいい、着られればいい」
5年前に作った70万円の借金は、毎月利息だけ返済しており、芸人として売れたらまとめて返すそうです。
そんな日がくることを願いつつ、今回のインタビューを終わります。
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