【1000年ぶりの流行】ネットで話題の「蘇」を作ってみた!これは究極の美味
一斉休校の余波で、小1の子どもが自宅にいます。これがもう、体力が余っているせいでうるさくてうるさくて、リモートワークどころか私が発狂しそうです。
折しも、給食停止の余波で牛乳も余っているとの話。
そこで、牛乳の大量消費と、子どもの動き封じのため、奈良時代のごちそうだったと言われる「蘇」を作ってくれと頼んでみました。
できあがってみたら……話題になるのも納得! これは確かに、火力も乏しい当時はぜいたく品だったでしょう! 単に牛乳を煮詰めるだけなのですが、いくつかわかったコツをお伝えします。
どんな味なの?
ぱっと見、これはチーズです! 口に含むと、まずは濃密なミルクの香り。乳糖がカラメル化したのでしょうか、まるでキャラメルのような香ばしい甘さも感じます。そして、驚くのがほのかな塩気。こんな塩気、牛乳に入っていたんだ。
これと似た味の食べ物、ちょっと思い当たりません。敢えていうなら、チーズからチーズの酸味と発酵の臭みを、バターからバターのオイリーな臭いを抜いたような、完全なる甘味とうま味です。さっぱりとした、日本人好みの味と言えるでしょう。
そもそも「蘇(そ)」とは?奈良時代までさかのぼり…
古代に作られていた乳製品の一種。酥とも書かれる。《政事要略》には,文武天皇4年(700)10月に蘇を作らせたという記事があり,これが文献上最古の記録と思われる。(後略)
出典 平凡社世界大百科事典 第2版(コトバンク収載)
牛乳が余るという報道の直後から、にわかにネットで話題になっている蘇。奈良・平安期を通して作られていた乳製品ですが、その具体的な姿は解明されていません。
「延喜式」での記載も「乳を煮詰めたら蘇」くらいの簡単なものだそうです。
そもそも当時と現代とでは牛の種類も違うはずなので、ここでは「市販の牛乳を煮詰めたら蘇」ということにします。
煮詰めるのに1リットル約60分かかった!
今回の私の主目的は「子どもの動きを封じること」なので、時間はかかってもOK。でも、あまりの手間なら再現性がありません。なので、2回試して「ちょうどいい火力」を探りました。
【用意したもの】
・牛乳1リットル
・間口の広い鍋
・木べら
【作り方】
室温に戻した牛乳をひたすら煮詰める。
弱火でコトコトしなくてもいいかも?
牛乳1リットルを26㎝径のウォックパンにあけたところがこの写真。意外とたっぷりなので、ふちの浅いフライパンだと混ぜている間にこぼしてしまうかもしれません。先に水を注いで適量を調べたほうがよさそうです。また、意外にこびりつくのでフッ素加工の鍋を推奨します。
開始は9時40分でした。この写真で9時50分。沸騰までは強火で、その後弱火に落としました。
開始から15分、早くも子どもが飽きています。
開始から25分、ちょっと煮詰まってきました。
ひっきりなしに混ぜていればそれほど焦げ付かないので、25分から中火にしました。
開始から40分くらいで、急激に乳のいい香りが立ち始めました。生地が明らかにもったりして、水分が飛んだことが一目瞭然。盛り上がってきた!
開始55分、ぱっと見シチューみたいです。台所は猛烈なミルクの香り。想像以上の濃厚さです。
開始から65分、もういいかな?とストップ。
計量したら約180gでした。
子どもの希望でわざわざ麺棒で伸ばして成型しましたが、そんな面倒なことをしなくても、ラップに包んで茶巾絞りでOKです。
強火で40分まで短縮はできる
2回目は上の工程をすべて強火でトライ。ひっきりなしに混ぜていれば焦げ付かないことがわかりました。結果、1リットルを強めの火で煮込むと40分程度でできる手ごたえが。でき上がり重量は同じ180gでした。
2段階進化!「焼き蘇」が最強の食べ方かもしれない
さて、そのままでもミルキーで美味な蘇ですが、さらにどう食べたらベストかを考えてみました。おつまみにするならリキュールかなあ。これ、あんまり醸造酒とは合わないように思います。カルーアの従妹みたいなイメージです。
■はちみつ蘇
意外なことに、今回試した中ではいちばん不満な味でした。もともとついているミルキーな甘みと、はちみつの甘みがケンカします。結果、牛乳の獣臭さが強調されてしまいました。味覚の不思議を感じます。
■塩蘇
ヨーロッパでのチーズ史を軽く調べると、王道は塩味のよう。奈良時代の日本でもこの味付けはできたことでしょう。もともと塩気があるので、これは無難においしい。
■焼き蘇
これが最強!口にした瞬間に「んふっ?」と声が出ました。もともと持っている甘さ、塩気を最大限に引き出すのは「焼き目」の香ばしさだった! ただし、焼いて時間がたつとただの焦げ臭に変わってしまいます。トースターで焼いたら焼き立てを食べてください。
蘇そのものが、煮詰めている最中にも、火からおろした瞬間からあとも、どんどん味が変わっていくように思います。基本は作りたてを食べるのがオススメ! また、用具は清潔を保ち、作ったらなるべく早く賞味してください。
参考
1・日本における古代乳製品の”酥”および”醍醐”の本草網目(李著)にもとづく再現試験 1988 有賀 秀子, 高橋 セツ子, 倉持 泰子, 浦島 匡, 筒井 静子
2・「本草綱目」に基づき再現した熟酥と醍醐の性質についての研究 1990 有賀 秀子, 大谷 能子, 竹内 真澄
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