【岩井志麻子】不倫した彼にたずねた「どっちが好きですか?」問題を考える

2020.04.07 LOVE

ある人気俳優が、新進女優と恋仲になった。しかし彼には有名女優の奥様と、その間にできたお子さんがいた。だから二人の恋は、大スキャンダルとなった。

「好きと大事は別」でしょう

謝罪記者会見を開いた俳優に、「奥様と恋人とどっちが好きですか」という質問がなされ、彼は答えられないとした。私も感想を述べたところ、ネットニュースになった。

「好きな人と大事な人は別でしょう。彼は愛人が好きで奥さんが大事なんですよ」

結婚とは当事者だけでなく、他の家族や親類縁者、法律にも社会にも縛られ守られるもの。だから、好きという生々しい感情より優先されるものがある。自身の生活を守る、家族の暮らしを維持する、そのための理性的な判断や、打算的といっていい割り切りね。

結果的に愛人より奥さんを取ったのは、彼も今後の俳優人生を考えてのこともあるとしても、「好きな人」と「結婚生活」をイコールにせず、後者の方が大事だったからだ。

 

好きと結婚は、あまり両立しない

そりゃ、好きな人と結婚、それが最も幸せに決まっているけど。実はあまり両立しないもんだ。ていうか、本来は両立させる必要はないもんだったのよ。

たとえば病気やケガをしたとき、人柄がよく親身になってくれ、それこそ好きだけど腕の良くない医者より、嫌な奴で好きになれないけど腕の確かな医者に手術してほしいわ。腕さえ良ければ、だんだん医者自身を好きになっていくこともありよ。

名前は出せないけど、作品は大好きなのに本人が好きになれない作家や漫画家、監督なんて人達もいるし、作品は下手で退屈だけど作り手が人として好き、ってのもある。
多くの男達は、好きな女の裸にしか興奮しない、ってことはない。面識のない女優や金だけで割り切る風俗嬢のそれに興奮するわけよ。

 

だけど今の夫とは・・・

とはいえ、世間は広い。考え方も、人それぞれ。

あの好きな医者なら失敗して死んでもいいと思える人や、作者が嫌いなら作品もすべて駄作と見向きもしない人がいてもいい。

私は人柄が好きで下手な医者とは食事などはしたいけど、手術は勘弁してほしい。ある作家の新刊は欠かさず買ってるけど、本人はかなり苦手というここだけの話もある。

なのに、浮気者で金無しの今の夫とは、好きという感情だけで続けている。それほどまでに好きなのか、そこまでして結婚を維持したいのか、自分でもわからなくなっている。

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