禅の所作に学ぶ。〇〇に気をつければ「食事マナー」が美しくなる
これから出会いの多い時期になってきます。数名で食事に出かけることもあるでしょう。そんな時に「気がきく人」と思われるポイントは数あれど、大きな失敗を引き起こさない、さりげない気のきかせ方は難しいものです。
でも、たった一つのことを気をつければ大丈夫。そのヒントを、禅寺の食事作法からお教えしましょう。
隣の人の「手首」「肘の下」を視界に入れる
誰かと一緒の会食中、一番多い失敗はなんでしょうか?
食べ物を口からお腹にこぼしたりするより多い失敗。意外と気がつかないかもしれませんが、確実に誰でもやってしまうこと。
それは、袖。
料理を取ったり醤油を取ったりした時に、袖が手前の料理やタレなどにつくことじゃないでしょうか。
禅の修行では、自分がご飯をよそってもらっても、次の人が終わるまで待っていて、袖がいろんなものに掛からないか気にしています。修行道場によっては、袖を毎回押さえるようにするところもあるくらいです。
慣れてしまうと、隣の人の腕が前に出ると、無意識に手首と肘の下に手を差し出すようになります。
隣の人が物を取ろうとしたときには、自分はいつでも隣の人の袖がつかないか気にかけるようにします。そして、手首の下の料理などを少し動かすようにしてあげましょう。しょう油皿ならなおさらです。
立ち上がって取る、お座敷なら立て膝で取る
そうすると、今度は自分も袖に気をつけるようになります。
前かがみで食べ物を食べると、周囲に袖がつく以上に不快な思いをさせることがあります。
なぜなら、覗き込む形になると、食べ物に息や唾がかかるかもしれないからです。
修行道場では、ご飯を給仕する際にも桶を口より下に持ってくることは決してしません。背筋を伸ばして肩と同じ高さで持って移動しながら配っていきます。
食事の際の立ち座りをスマートに見せるあら、やはり背中を丸めずに少し立ち上がるか、立て膝で余裕を持って物をとること。このように心がけると、袖も気にせずスマートな動きで食事ができます。
茶碗、お椀は両手で持ち上げてから
自分で食べる時も、人に渡す時も必ず両手で茶碗を持ってから次の動きにつなげるようにしましょう。
そうすると姿勢がよく見えるうえ、淵の中に指を入れずにすみます。
これだけでも相手に与える印象は、だいぶ違ってくるんですね。
洋装になって消えた「隣を気づかう」習慣
私の祖母が若かった頃ならば、着物で生活している人も大勢いて、袖が大きいのも普通でした。
隣に座る人が着物だったりすると、常に自分の袖の下と隣の人の袖の下を気にしないと綺麗に食事をいただくことができないかったのです。
隣の人と同時に物を取ると、どちらかの袖が汚れるので、「お先にどうぞ」という気持ちも生まれます。
茶道で隣の人を気遣う習慣を大切にするのは、そのためかもしれませんね。
そうして気をつけていると、人の動きも自分の動きのように感じられます。
常に動きを観察して、気に留めないようにしてみてください。
それが出来るようになると、相手に与える印象が良くなることでしょう。
動きに表される感謝の心
手の動きに注目しましょう。私は両手で食器を持ち上げることをお勧めしました。これは、見た目の美しさに加えて、食べ物に対する感謝を表すように感じられます。
いただきますは、文字どおり命をいただくのですから、食事の席では一つになるというのが大事なのではと思います。
食べ物と、それを一緒にいただく仲間と、自分とが、一つになるような動作を身につけることができれば、きっと印象が良くなるはずです。
もっと食事の作法はうるさいのですが、体験したい方は、各地の座禅会で食事を提供するところもあるので、ご相談ください。
■建長寺宿泊座禅会
毎年6月と12月に開催。1泊で食事の作法と座禅を体験できます。
■三光院
女性限定の精進料理。
https://tabelog.com/tokyo/A1325/A132501/13039545
■東京禅センター
世田谷区で坐禅を体験することができます。
http://www.myoshin-zen-c.jp/event/event_taiken.htm
■白山道場
文京区にある龍雲院の道場。鎌倉円覚寺管長の南嶺老師が住職をされています。
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