私たち、このままコロナ倒産…?呆然とする居酒屋夫婦に訪れた「心境の変化」とは
コロナ禍の影響は、まだまだ続いています。
経済的な面も例外ではなく、今まで「当たり前」としていたことにとらわれることなく、変化していくことが求められるでしょう。
しかし、人が人を思いやる心は変わらないのではないでしょうか。大変な時期だからこそ、より一層、気持ちの温かさが心にしみることがあります。
今回は、マネー相談の中から聞いた、あたたかいエピソードを紹介します。
3月4月の休業が飲食業にとって致命的だったワケは
A子さん(45歳)は、夫婦で20年前から居酒屋をやっています。東京・中野駅に近い立地でお客さんも多く、街の繁盛店でした。和洋とりまぜたメニューは学生や若い会社員にも人気で、毎年春には歓送迎会の予約でいっぱい、という状況でした。
が、コロナ禍の影響で事態は一変します。3月から客足は遠のき、4月からは休業せざるを得なくなりました。当然、お店の売上は激減します。
本来、春は歓送迎会が多く、かき入れ時のはずでした。年の稼ぎの多くをこの時期に立てるのに。A子さん夫婦は呆然とするばかりでした。
お店の家賃や水道光熱費、仕入れの支払いなど、当初は貯蓄を切り崩していましたが、先行きが見えない中で貯蓄が減っていくのは大変心細いものです。
そんな時、筆者はA子さんの相談をお受けすることになりました。ファイナンシャルプランナーのマネー相談は、暮らし全般にわたる困りごとが対象です。お店のこと、家計のこと、そして今後の希望のことなどをふまえて、お話することになりました。
受けられる助成はすべて受け、減免も申請する
A子さんのお店はコロナ禍の影響で収入が激減しています。そのため、政府からの支援が受けられるので、まずはそれらの申請をはじめました。
まずは、一律10万円が受け取れる特別定額給付金、ひと月の売上が前年同月の半分以下の場合、個人事業者でも100万円を上限に受けられる持続化給付金の申請です。
給付金は「もらえるお金」なので、条件が合えば早めに申請することが大切です。今回は申請が殺到し、給付まで時間がかかることが各自治体でありました。そのため、少しでも余裕のあるうちに申請をしておかないと、必要な時にお金がないという事態になりかねないのです。
それから、各支払いの減免や猶予を申請します。
国民健康保険料、国民年金保険料は、負担が重くても払わなくてはならないと思い込みがちですが、収入などによっては申請をして減免や免除が受けられるようになっています。
単に払わないだけにしてしまうと未納となり、いざと言う時に必要な保障が受けられなくなります。
他に、電気・ガスの料金、電話料金、NHKの受信料についても、支払猶予等の柔軟な対応が、政府から事業者へ要請が出されています。
これだけ困っているのに「助けを求める」ことに躊躇する人たち
これらのことを、自分ひとりですべてこなすのは、情報収集の点からも難航することでしょう。
困ったら、ガマンするより、まず困っていると声をあげ、知識のある人に相談することが重要です。
A子さんも「私なんかよりもっと苦しい人がいるのだからガマンしなくては」「行政に助けを求めるだなんて申し訳ない」「自分が該当するのかもわからない」と躊躇していました。
ですが、マネー相談を通じて、一連のことから、自分たちだけで頑張らなくてもいい、周りを頼っていいんだ、と思うようになっていったと言います。
自分を知っている人たちに「助けて」と発信する重要性
A子さんのお店は6月中旬から時間を短縮して営業を再開し、テイクアウトも扱うようにしました。
同時に、お客さんにも現在の状況について声をかけるようになりました。ただし、お金に関わることですから、重くならないように、さわやかに。
お店のブログや、店先で宣伝することはもちろんですが、連絡先を知っているお客さんには、個別にメールをします。
すると、お客さんから励ましや応援の言葉がかけられ、「すぐには行けないけれど」と言って予約をしてくれる方が少なくないそうです。
予約といっても、具体的に日時や人数を決めるのではなく、事態が収束したら行くことを見込んで予めお会計の一部を払ってもらう「先払い」です。
そんな予約は、まとまった人数でいつも歓送迎会などの飲み会で利用してくれていた幹事さんからも入れてもらえるようになりました。
この先、大人数での飲み会ができるようになるかどうかもわかりませんが、お客さんからの応援の気持ちを受け止めて、できる限りのことはしていくつもりだと話してくれました。
店主とお客さん、お互いの気持ちの温かさに、聞いている私の心まで温まりました。
個人事業主こそFPに相談してみたほうがいい。その理由は
A子さんとの相談は2回でしたが、こうしてお金の悩みを相談できる相手が本当に見つけられなかったと言います。
特に個人事業主の場合は、仕事のお金のことだけではなく、家計も併せて総合的に考えなくてはならないことがよくあります。
役所に相談しても公的補助の話だけ、仲の良い友達では結局おしゃべりで終わり、身内では気まずい思いをすることが多い(お金の無心をするわけではないのに!)ため、結局どこにも相談できない、という場合も。
そんな時にはファイナンシャルプランナーの相談もある、とぜひ思い出していただきたいと思います。アクションを起こすことで周りの助けが得られ、道がひらけることがある、と実感することの多い今日この頃です。
いま、投資といっしょに「寄付」が増えている。その暖かなな背景は
さて、暖かい話の流れでもうひとつ、ファイナンシャルプランナーの仲間同士で話題になった、特別定額定額給付金のことをお話します。
一律10万円が受け取れる給付金ですが、もう受け取った方も多いことでしょう。
収入減に見舞われた人は生活費に充当していますが、会社員などで収入に大きな変動が無かった人にとっては、どのように使うか考えどころになっています。
在宅勤務の広まりと飲み会の自粛によって、時間ができた人が増えました。そこに10万円なので、みなさんいろいろと使いみちを考えるわけです。
まずよく聞くのは、在宅での仕事に役立つものの購入です。腰痛対策に長時間座っても疲れにくい椅子やクッション、業務効率化に大きなモニター、ウェブ会議用にライトなどは定番のようです。
それから投資が増えています。インターネット証券会社大手5社では、2020年6月末の投資信託の月間積立額が、2019年末と比べて5割増ですが、その多くは個人投資家です。
かねてより興味はあったが始めるきっかけがなかった、という人が改めてNISAやiDeCoについて、ファイナンシャルプランナーのウェブセミナーなどを通じて調べた上でスタート、という話も聞きました。
対面での相談やセミナーは減りましたが、その一方でオンラインでの相談やセミナーの利用が増えています。
そして、寄付です。
自分にとって10万円はどうしても必要なお金ではないので、本当に必要としている人に使ってほしい、という気持ちで寄付をする人も少なくありません。
寄付金は控除もできる。誰かを助け、自分にもメリットのある制度
特別定額給付金の申請にも、辞退をする旨を記入することができますし、世帯が自分だけであれば申請自体をしない、ということもできます。
しかし、せっかく寄付をするなら、自分が支援したいと思うところに寄付をしたほうがいいのではないでしょうか。
子どもやその家族に無料で食事を提供する子ども食堂や、貧困家庭の子どもの学習支援のための学習スペースを提供しているNPO法人など、日ごろから問題に思っていることに尽力している団体に寄付をする人もいます。
ニュースなどを見て心を痛めても、自分一人でできることには限りがあります。ボランティアをするにしても、継続的な活動は難しかったり、そもそも時間を確保することができなかったり、といった場合もあります。
その点、寄付であれば気持ちだけで選ぶことできます。
認定NPO法人への寄付であれば、来年の確定申告で寄付金控除をすることもできますので、節税にもなって自分へのメリットもあります。
また、災害に遭われた地域へのふるさと納税も注目されています。こちらの寄付金控除は、1年間で寄付をした先が5自治体までなら、会社員の場合確定申告をしなくてもいい、ワンストップ特例制度の利用も可能。
ただし、医療費控除などのために確定申告をする場合には、ワンストップ特例制度は無効になるので、寄付金控除もする必要があります。
コロナ禍で殺伐としがちな風潮ですが、そんな中で人を思いやる心がひときわ光る、と感じています。
タケイ啓子
ファイナンシャルプランナー(AFP)。36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録FPパートナー。
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