「ママ友に女として負けたくない」不倫の虚栄とその末期

後ろ指をさされる関係とわかっていても、やめられない不毛なつながり。

不倫を選ぶ女性たちの背景には何があるのか、またこれからどうするのか、垣間見えた胸の内をご紹介します。

【不倫の精算#21前編】

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何も起こらない現実の、ささやかな刺激

Hさんは40歳。夫とふたりの子どもとともに実家に住んでおり、自身はパート勤務をしながら家事や育児をがんばっていた。

中小企業に勤める夫の収入でも何とかやっていけるのは、二世帯住宅に改築した家のローンを両親が払ってくれているから。

Hさんは稼いだお金を子どもたちの習い事や自分のジム代などにあて、「それなりに満足のいく日々」だと、以前話していた。

 

そんなHさんから不倫の話を打ち明けられたのは、半年前。

相手は子どもが通うスポーツ教室のインストラクターだった。

 

Hさんより3歳年下の男性で、Hさんいわく

「最初からいいなって思っていたのよ。

でも、子どもたちと一緒で既婚とわかっている私にまさか興味はないだろうって、

勝手に片想いしていたの」

関係が不倫に発展する可能性は考えていなかったそうだ。

 

夫との関係は

「順調よ。

特に変化もない毎日だけど、子どものいる家庭ってこんなもんだろうって思っていたの」

大きな問題がないことは聞いていた。

平穏さの中に少しずつ侵食してきたささやかな刺激がインストラクターの彼だった。

 

半年ぶりに会った彼女は激変していた。その理由は

「ああ、春からどうしよう……」

今日Hさんに呼び出されて会ってみると、彼女は明らかに元気がない。

またそわそわと落ち着かない様子が目立った。

 

「どうかしたの?」

あたたかい日差しがあふれるテラス席で、不倫をはじめる半年前より明らかに女っぽさが増しているHさんを見つめながら尋ねた。

 

マスクをしていてもわかる、ツヤのある肌。しっかりファンデーションを塗り、ピンクのアイシャドウ、眉もきれいに整えられている。

その姿は、半年前に「子どもの習い事だし、母親なんて誰も見ないでしょ」とメイクの手抜きを笑い飛ばしていた彼女とはまったく違う。

 

「あのね、教室が終わってしまうの」

Hさんは、アイスのカフェオレが入ったグラスに目を落として答える。

「え、そうなの?」

「うん。

コロナの影響でね、人も集まらなくなったし、いったん教室は閉めるんだって」

力なくつぶやきながら、Hさんはストローに手をかけた。

 

指先を彩る淡いイエローのマニキュアは、生成りのワンピース姿にほどよい甘さを加えていて、このあと約束をしている彼との時間を彼女がどれほど楽しみにしているかを伝えるようだった。

 

「今まで通りには会えなくなっちゃう」

マスクを外してストローを口元に近づけながら、彼女は何度めかの「春からどうしよう」を繰り返した。

 

「よそのママの影」が独占欲を燃え上がらせる

Hさんがインストラクターの男性と不倫関係になったきっかけは、LINEだった。

 

休むことなく子どもを連れて教室に通い、我が子が熱心に練習する様子を見ながら、指導する彼の姿も楽しんでいたHさんは、思い切って彼にLINEのIDを尋ねた。

 

「食事の内容とか家でやれることとか、質問してもいいですかって聞いたの」

インストラクターの彼は、特に渋ることもなくOKをくれたそうで、

「そういう親御さんは多いですよ、って言われたのね。

そのときに、何となくこの人モテるかもと思っちゃって」

彼とやり取りをしているほかの女性たちの存在を早くも意識したそうだ。

 

教室で見かける子どもたちの付き添いは、たいていが母親だった。

顔見知りになって言葉を交わすような女性もいたが、その人が彼と親しそうに話しているのを見ると胸がざわつき、つい間に割って入るようなこともしてしまったと言う。

 

「それで、焦ってLINEなんてお願いしたのよね。

家に帰ったら早速タンパク質について質問のメッセージなんか送っちゃって。

でも、彼はすぐに返してくれて、教室と変わらず丁寧で優しい言葉遣いがね、やっぱりいいなあと思っちゃった」

 

それから、Hさんは教室のない日でも積極的に彼とやり取りをして距離を縮めていった。

 

嬉しくてたまらない、ついに彼が私を誘ってくれた

教室で彼に会えるのは週に2回。それ以外はLINEで話す日々がはじまってから、Hさんはどんどん彼に惹かれていったそうだ。

 

メッセージの内容はいつしか個人的な話に流れていき、彼が独身であることやHさんの仕事の話などどんどん情報の交換が進んだ。

 

「やっぱり後ろめたかったのだと思うけど、夫の話だけはしなかったのね。

彼も特に聞いてこないし、LINEでだけはふたりきりの時間を楽しみたかった」

 

そう話すHさんは、「子どもたちに焼いたついでに」と彼のためにクッキーを用意し、実家の畑で収穫した野菜を持っていき、少しでも彼の気を引くことに執心していた。

 

そんなある日、彼のほうから

「いつもいただいてばかりなので、たまにはお茶でもおごらせてください」

とLINEで誘われて、はじめてふたりきりで教室の外で会うことになる。

 

「もう、うれしくてたまらなくて」

そのとき、電話で報告してくれた彼女の浮かれきった声が、すでに「教室のインストラクターとその生徒の親」という関係から外れてしまっていることを教えた。

 

男性のほうにもその気があるのだろうな、と何となく感じたが、その予感は的中し、

「ね、ついに彼とホテルに行っちゃった」

とふたたび報告を受けたのは、それから1ヶ月後のことだった。

 

>>後編へ続く

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