不倫と「純愛」の線引きってどこ?大好きなカレが私を避けるんです
後ろ指をさされる関係とわかっていても、やめられない不毛なつながり。
不倫を選ぶ女性たちの背景には何があるのか、またこれからどうするのか、垣間見えた胸の内をご紹介します。
【不倫の精算#27後編】
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「してないから不倫じゃない」それって本当?
その話をした半月後に緊急事態宣言が出され、ジムでもいろいろなルールが新設された。
既婚の彼とJさんはすぐに休会の手続きをとったそうだ。
「どうしたって安全な場所じゃないのよ。
家族がいるから、絶対に感染したくない」
ときっぱり言ってのけるJさんだったが、すぐに続けた。
「彼もね、明日には休会して家でのトレーニングに切り替えるって言っていたの。
彼と会えないならジムに行っても仕方ないしね」
これが本音かと思ったが、LINEでやり取りができる状態になっていたJさんには、別の思惑があった。
「離れたらさ、今度は家トレの話ができるじゃない?
会えなくてもいい、LINEでもっと個人的な話がしたいな」
その目的は、Jさんが想像した以上に果たされることになる。
すぐに返信をくれて、自重トレーニングのポイントや水分のとり方を教えてくれて、昼食に食べるものまでアドバイスがある。
顔を合わせなくてもそれまで通りに言葉を返してくれる彼の存在は、Jさんのなかでどんどん大きくなっていった。
「会えなくてもいい」という“わきまえ”が崩れるのは簡単で、Jさんから届くLINEには
「何とかして彼と会う方法ってないかな?」
と、焦りが伝わるものが多くなった。
「え、こんな状況のときに会ってどうするの。
奥さんがいるんだよね?
誘う理由がないでしょ」
冷たいと思うだろうなとわかっても、これ以上進むと彼女が苦しむことはわかっていた。
「どうしてよ?
いいじゃない、好きなだけなのよ。
プラトニックなら不倫じゃないでしょ?」
すぐに返ってきたメッセージは、「肉体関係を避けるなら自分も彼も責められない」という、求める側の言い訳が書かれていた。
認めたくない罪悪感と、突っ走る心
その頃Jさんの家庭では、夫は変わらず会社での勤務を続けていたものの、子どもは学校の休校に伴い家で過ごしていた。
「手がかからない」
「家族に迷惑はかけない」
「だってプラトニックだから」
これが、それ以降Jさんから聞かされてきた既婚の彼を好きになる言い訳だ。
既婚の彼とは特に“そういう雰囲気”にはならず、それは送られてきたスクリーンショットでもわかった。
「だから」
Jさんは夫以外の男性を好きになる自分は間違っていないと、必死に理解してもらおうとしていた。
あの日の公園で、
「夫以外のオトコと恋愛したって、別にいいでしょ?」
と言い切るほど好意が大きくなっていたJさんは、夫への罪悪感をプラトニックを理由に見ないフリをしていた。
「……」
旦那さんへの気持ちを突っ込むのは無粋で、空気を読まない発言で、「そんなの聞きたくない」という反発が返ってくることはよくわかっていた。
夫以外のオトコとの恋愛が、いいはずがない。
その選択は、夫や家族だけでなくいずれ自分自身を滅ぼすのだと、その未来を「あえて見ない」のは、不倫のはじまりによくある光景だ。
ないがしろにするものより、今の感情に素直でいたい。
Jさんからは、それを他人に認められることで安堵を得たいことが伝わった。
「そう簡単には話に乗らない」心を奪ったあとの既婚男性は
だが、Jさんの恋は思い通りにはいかなかった。
Jさんが家での筋トレ用品を買いに行きたいから付き合ってほしいと誘っても、密を避けられそうなカフェでお茶することを提案しても、既婚の彼は絶対にOKしないのだ。
「外で会うのは控えたい」
Jさんに何度も送られたこの返事は、そのまま、既婚の彼の「これ以上親しくなるつもりはない」という明確なサインだった。
だが、Jさんはその事実を認めなかった。
「だって、本当に会うのがイヤなら
『自分には嫁がいるから』
とか、そっちを言うんじゃない?
そう返されたら、私だって諦めるわよ」
あくまで恋愛の土俵で彼とのつながりを考えている彼女は、彼から妻との親密さを示す言葉がないことを逆手にとっていた。
「○○さんも感染には本当に気をつけて」
「控えたい」の後に続くこの言葉が、Jさんに対する大きな思いやりであり、ジムの外でまで親しくなることを拒絶する自分を消す隠れみのでもある。
Jさんは言う。
「私、そんなに魅力ないのかな?
友達としてもこれ以上はダメってこと?」
だから、あなたがその“友達”という枠を持っていないじゃない。
「そんなことないよ」
と返しながら、破滅に向き合っている既婚男性の冷静さを垣間見た気持ちだった。
思わせぶりなオトコ、暴走するオンナ
既婚男性の思惑はともかくとして、Jさんにとっては「妻がいるから会えない」という最終通告がないことが、どこまでも希望をもたらしている現状。
そのギャップが、最後は彼女の暴走を招いた。
「ダメだった。
『行けません』
ってさ。
もう、LINEやめちゃおうかな」
その日、電話をかけてきたJさんから聞かされたのは、ジムの前にあるコンビニで彼を待つという“暴挙“の顛末だった。
“ああ、こうなっても「もうやめてほしい」とは言わないのだな“、と彼女とはまったく違う感慨を覚えた。
「そっか……。
残念だったね」
Jさんの落ち込みを感じれば、馬鹿なことはしないでとか迷惑をかけるなとか、正論は不要だった。
「謝ったんだよね?
しばらく連絡はやめてさ、もとの距離感を取り戻そうよ」
「……」
Jさんは無言だった。
彼からの拒絶で失ったのは、彼女が望んだ恋愛ではなく、彼の存在そのものだ。
そこまで進めてしまったのは、引き際を間違えた彼女自身だ。
「不倫は相手しだいでもある」
自分が吐いたこの言葉を、今どんな気持ちで噛み締めているのか、それが気になった。
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