まだ更年期なんて早い…油断する44歳に「コロナストレス」で最悪の影響が
閉経の前後5年を一般に、更年期と呼びます。日本人の閉経の平均年齢は50歳なので、45~55歳の世代は更年期に当たる人が多いもの。身体の不調に苦しみ「更年期障害」の状態に至る人もいます。
私ってもう更年期なの? みんなはどうなの?
オトナサローネは同世代の女性100人がいまどのような更年期を迎えているのか、そのあり方を取材しています。(ご本人の年齢や各種の数値は取材時点のものです)
【100人の更年期#56】
プロフィール
Oさん 44歳、東京都下で一人暮らし。大手外資系会社に勤務するSE。
私、更年期症状なんてないし!と取材を断ったが…よく考えると、もしかして?
若い頃から生理も軽く、ホルモンバランスと自分の関係なんて考えたことがなかったというOさん。
「病気したことがないのが自慢なくらいです。だからこの取材で、更年期の話を聞かせてと打診された時には、一度お断りしたんですよね。まだ私にはそんな症状ないし……と」
でも改めてこの1年半を振り返ると「もしかして?」と思うことがあったそう。いちど話をしてみようと連絡をくれました。
Oさんの仕事は大手外資系会社のシステムエンジニア。一つのプロジェクトに3年ほど関わり、仕事が完了したら別のプロジェクトに移るという働き方です。プロジェクトによって仕事内容も体制も関わる人たちも変わり、社内転職と呼ばれるレベルなのだそう。
「実は私、コロナ渦の直前、2020年2月からに3ヶ月間休職していたんです。7年もの間いたプロジェクトが辛くなってしまって……マネージャーに相談して、産業医とも面談しながら、休職という形で別の仕事に移行させてもらったんです」
2月から5月までの3ヶ月間は、一切仕事をせず回復に専念するのがミッションになりました。
「要するにのんびりしながら、家でゴロゴロする日々でした。ほぼ引きこもり生活で、ゲームをしたり本を読んだり、趣味の書道をしたり。もともとおうちが大好きなインドア派なので割と楽しく過ごしていました。仕事の連絡を取らないし、ニュースも見ないので、コロナもちょっと他人事で、世間の変化もよくわかっていなくて」
ところが4月、いざ復職の準備をしようとしたところ、世間はコロナ禍の真っ最中。出社しないリモートワーク形式にがらりと変わってしまっていました。
「直接話せない」せいなのか?些細なことにイライラが募る
「次のプロジェクトに移るためには、社内で転職同然の面談を何度も受けてクリアしていく必要があります。ですが全てがリモートになって、なかなか思うように進みません。画面越しだとイマイチ自己アピールができなくて……」
自分の行きたいプロジェクトに希望を出しても断られ、2ヶ月も宙ぶらりんに。ふと気がつくと、すでに6月になっていました。
「リモートワークなんてみんな初めてで、誰もが辛い時期でしたが、私は特に辛さしか感じませんでした。同僚と電話で話していても、うまくいっている同僚の話が贅沢に聞こえて。それ自慢?みたいにイライラすることも多くなったのを覚えています」
ずっと年下の同僚がマネージャーに出世して、年棒が1000万円を超える地位についたり、後輩が1億円近いマンションを購入したという成功話を聞くたびに、自分が追い詰められていくような気がしました。
「仲が良かったはずの同期メンバーの些細な愚痴も、今までだったら顔を見ながら聞いてあげられていたのに、カメラ越しだったりメッセンジャーアプリだとイラッとしてしまうんです」
そんなOさんをさらに「こんなはずでは」という事態が襲います。
「私って、監視がないと仕事ができないダメ人間なんだ…?」ウツウツとする日々
ようやく、7月に入ってから参加プロジェクトが決まりました。希望するプロジェクトではなかったものの、途中まで進んでいるところに入っていくので、頑張って追いつこうと気合は十分でした。
「でも、いざ仕事を始めるとびっくりするほど捗らないんです。一人暮らしのリモートワークなので、家族からの邪魔が入るわけでもなく、通勤のストレスもない。デスク周りの環境は人から驚かれるほど完璧に整えて、座り心地のいい椅子まで買ったんです。なのに、集中力が全くなくて、ダラダラと過ごすばかりで……」
クライアントとのオンラインミーティングに向けて、前日に慌てて体裁を繕うような仕事の仕方になってしまいました。
「それで気がついたんですけど、私って周りに人がいて、見られている状況じゃないと仕事ができないんだって。誰かが監視してくれないと仕事ができないし、会って話さないとコミュニケーションも取れないダメ人間だと思い始めました」
打ちのめされながらふと気がつくと、季節は秋も終わりの10月に差し掛かっていました。
「前はこんなにイライラしたり、落ち込んだりしないはずでした。でも、秋から冬はずっと感情の波がすごくて。対面できず言葉が足りないから生まれる波なのか、更年期の症状としての波なのか、判断はできませんが……でも、あまりにも急にこういう状態が始まったので、もしかして?と、取材の話を受けて思い当たりました」
そんなOさんにトドメを刺すように、体重増加が襲います。
追い打ちをかけるように太ってしまった。体重が70キロに
「年末には、私のいるプロジェクトが再編成されることになったので、私も離脱する希望を出したんです。環境を変えて、新しいプロジェクトに行けば、気持ちも変わるかもと思って。その後、今年の3月から新プロジェクトに配属されましたが……」
一縷の望みをかけた新しい仕事でも、結局は同じことの繰り返しでした。朝はダラダラと過ごし、昼はお弁当を買ってきて食べて、コンビニで大量のお菓子を買い込み、食べながら仕事をする。
「一応、定時の18時まではデスクに座っているんですが、1日のタスクは終わりません。残業申請をして夜中まで仕事して取り戻す繰り返し。1日15分くらい外に出て歩くだけなので、去年からブクブクと太り始めてしまい……」
Oさんは現在、休職前より7kg太り、70kgです。
「むしろ、この体重増加は更年期のせいだと思いたいくらいです。それなら、更年期が終われば痩せてくれるという希望が見えるから」
私、更年期の上にテレワークだなんて絶対無理。社会の変化に適応できない……
これから先の暮らしに不安しかないとOさんは続けます。
「私のいるプロジェクトは、きっとコロナが落ち着いてもリモートワークのままだと思うんです。できれば、私としては世の中が落ち着いたら出社して仕事をしたい。このままじゃ、どんどん人間としてダメになっていく気がしちゃって……」
いざ仕事に取りかかっても、どうしてちゃんと英会話を学んでこなかったんだろう、30代の頃にマンションを買っておくべきだった、断捨離しなくちゃ、ダイエットをしなくちゃ……そんなことばかり毎日考えてしまいます。落ち込んだり、焦ったりと、まるで感情がジェットコースターのように動くそうです。
「自分がダメ人間だから、こんな風なんだろうと思っていたのですが、こうして振り返ってみると、年齢的にも更年期という時期が関係しているのかもしれませんよね。それはそれで、むしろ原因に理由がつくので救いになるくらいです」
改めて更年期という状態を自分なりに調べて、対策できることがないかを考えてみたいけれど、今後の社会と自分の働き方については不安しかありません……そう言って、Oさんはため息をつきました。
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