私立小学校に「向かない親」ってどんな人?そして気になる世帯年収は?【ワーママお受験#1】後編
数年前までは働くママには不利と言われたお受験ですが、2016年度に聖心女子学院初等科が学内に学童保育を設置したことでもわかる通り、ワーママ比率は増加中。コロナ禍による在宅勤務の普及も後押しし、現状では60%以上がワーママという説もあります。
みんなはなぜ私立小学校への進学を決めたのか? どんな対策をしたのか? 入学してみたらどうだったのか? 費用はどのくらいかかるの? 前編『私立共学小学校ママ「子どもの18年に対する投資です」』に続き、そのリアルな内情を聞きました。
親の出番は多い。「親同士の関わりがつらい人」には難しい環境かも
入園させてみて感銘を受けたのは、学園が持つ見守りの姿勢でした。一貫校は幼小から高校までの長い期間を通じて一人の子どもの教育を成し遂げるカリキュラムを持つことも多く、沙織さんの学園もその1つでした。子どもの自発的な意思を尊重し、そのために大人が陰ながら手を尽くします。
「年少のうちから、金づちで釘を叩いたり、絵の具で絵を描かせたりと、説明会で伺った方針がそのまま実践されていて、まさに望んだ通りの教育内容でした。ただ、自由を大切にするという割に、親にはとても細かい指示が下されます。例えば、お弁当には仕切りを入れない。当初は戸惑いましたが、空になったお弁当箱を見せにくるとき仕切りが落ちるから、でも子どもの見せたい気持ちをいちばん大切にしたいからと理由があるんです。こうしたことは園からすべてを説明してもらえるわけではありません。そのため、先輩ママたちとのコミュニケーションが重要になりました」
私学は親の出番が多いと言われますが、沙織さんの学園もママ友が「職場より学園にいる時間のほうが長い月がある」と愚痴をこぼすほどに親の稼働が必要でした。
「よく小学校のPTA問題が話題になりますが、私学ではむしろ積極的に学校行事に関わり、今しか見ることのできないわが子の成長を分かち合いたいと考えるご両親が多い。仕事がどうしても忙しいご家庭や、そもそも行事参加を苦痛に思うお母様にはつらい環境かもしれません」
沙織さんの園もバザーやお祭り、季節行事や親の会など行事が多数あり、フリーランスという働き方に転向していても仕事のやりくりは大変でした。そのかわり、上下の学年のお母様がたとのつながりもでき、得難い友人が増えたと言います。
「私学はその学校ごとに似たような志向のご家庭が選りすぐられて集まるうえ、学校と保護者が密接に連携し、子どもによいことを分かち合うという互恵意識も非常に強いため、ママ友という言葉はポジティブな意味を持っていると感じます。言われるほどにお金のかかるお付き合いでもなく、家族ぐるみのステキな友人がたくさん増えていく感覚です」
もちろん、うなるほどにお金を持ったセレブママたちのお付き合いならばお金がかかっているのでしょうが、実際には学園の中でも同じような家庭構成の人同士が仲良くなることが多いため、自分自身が気にしない限り付き合い切れないほどの格差を感じる機会はないそうです。
「私は幼稚園での人形劇上演活動に参加して学園内のネットワークを作りましたが、この先12年以上を過ごす学園内での立ち居振る舞いも先輩お母様から教えていただき、細かな情報を得やすくなりました。子どもが2人とも小学校へ進学した今でも、この人脈にとても助けていただいています」
長ければ20年以上を過ごす。一貫校に進学するメリットとは
さて、幼稚園から大学院まで揃う一貫校に幼稚園から進学するとなると、気になるのは学費です。また、周囲がお金持ちばかりならば肩身が狭いのでは?と余計な心配も。
「こればかりは学校によりますが……私学すべての学費が高いわけではなく、私たちの学園は比較的抑えめです。もちろん、地元の地主さんや代々のお医者様、士業のご家庭など名家も多いのですが、半数は共働きのサラリーマン家庭。体感では世帯収入1200万円くらいが分岐点ではと思います。ご自営のほか、二馬力で2人とも5~600万以上、ご主人が外資や上場企業、メディアほか専門性の高い職業で奥様が専業主婦。わが校は教職、教授のお家も多いです。また、郊外ならではですが、我が家のように同居で、住宅ローンのないであろうお家もあります」
幼稚園や小学校から私学を選ばず、ご自身がなさったように中受をする方法もありました。なぜ、敢えて早い時点からの一貫教育を考えたのでしょうか?
「中高の6年間を一緒にすごしたお友達は私の大切な財産です。早ければ早いほど結びつきは強くなりますから、遅くとも小学校で一貫校へとは考えていました。これからの長い人生を損得勘定なしに助けてくれ、力になってくれるお友達ができる。年少から大学まで進学すれば19年もの間一緒、そんなお友達は間違いなく財産です」
一貫校での教育は親が子にできる最大の投資だと考えているそう。
「大学を卒業するまでの長い時間の間で、良質なご家庭のお子さんたちと一緒に優れた教育を受け、自分がどのように実社会に出ていくかをじっくり考えてほしい。大人になってからでは作れない、無償の愛を与えてくれるお友達と過ごしていってほしい、これを投資と言わずして何が投資なのか!くらいに感じます」
不合格の可能性もあった。近視眼的に合否だけを見ないことです
いっぽうで、幼稚園受験や小学校受験は、まだ6歳にも満たない子どもが「不合格」を突き付けられる可能性もある世界。受験時にはどのように考えましたか?
「ご縁がなく幼稚園に入園できない可能性も考えましたし、小学校への連絡進学も100%の保証ではありませんでした。肩をたたかれてしまうお友達もいます。私はファッションエディターなのですが、夫婦の教育への思いを分かち合ってくれる学校を探し出して受験し、その学校のファミリーの一員になっていくことは、自分が着たい服を探し出し、またその服に似合う自分に自分を変えていくことと似ていると感じています」
もし服が着こなせなくても、たまたまその服が私とマッチしなかっただけ。結果が出ないのならば場所を変える、近寄って見すぎずなるべく引いた目線で捉える、そう考えていたそうです。
「幼小でご縁がなくても、19年の間のどこかではあるかもしれませんし、結局ずっと公立に進学しても人生は大差ないかもしれない。お受験はどうしても親の代理戦争になりがちですが、子どもの人生の幸福というなるべく遠い未来を見据え、それに比べれば些細と言える目先の合否には思い悩まないようにしました」
日頃からお子さんとの接する際もできる限り長期的な視野を持ち、肯定的な言葉を選んで会話するよう心掛けているといいます。
「子が自分にマッチする場所を自分で探し出し、望む人生に自力でたどり着く力を持つことが私たち夫婦の最大の望みです」
この記事の前編>>>『私立共学小学校ママ「子どもの18年に対する投資です」』
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