カレからすればあなたは客であって、恋愛対象ではないの【40代のダメ恋図鑑#2】前編
40代。未婚でもバツイチでも、「独身」を楽しみたいと思いながら恋愛でつまずいてしまう女性たちは、どこで間違えてしまうのか。
アラフォーの女性たちが経験する「恋の迷路」をお伝えします。
「地元に戻ってきた女」はどこで男性と出会うのか?
Bさん(38歳)は独身、ひとり暮らしをしていたが40歳を前にして地元に戻ってきたと以前話してくれた。
経理の資格とキャリアがあるため、こちらでも簡単に就職できるだろうと思っていたら予想に反して求人は少なく、また見つけても「今まで働いていたところに比べたら、基本給が5万円も低い」とボヤいていたのを覚えている。
それでも、何とか派遣社員として今の会社に勤めている。
仲のよかった友人たちはみんな既婚者だったりバツイチで子持ちだったり、自分だけが独身のまま、合わない話題に疲れて「無理に会うのはやめた」そうだ。
代わりに通いはじめたのが、個人経営の小さなジムだった。
情報誌でトレーニングの内容の記事を読み、「体力作りと気分転換を兼ねて」見学に行った。
そこで出会ったのがトレーナーのひとりである彼で、Bさんはかれこれ半年ほど、この男性に熱を上げていた。
Bさんからランチに誘われたのは師走に入ったばかりの平日で、「ちょっと聞いてほしいことがあるの」とスマートフォンから流れてくる浮かれた声に気づいたとき、相変わらずだなと小さなため息が漏れた。
「気のあるそぶり」をされると舞い上がる女性の気持ち
待ち合わせたのは彼女の好きなイタリアンのお店で、仕切りがあって周りの視線を気にせず過ごせるのがお気に入りの理由だった。
「ねえ、告白してもいいと思う?」
いつものコースを注文すると、せかせかとした調子でBさんが話し始めた。
「あれから何かあったの?」
告白するかどうか、の話題は先月から出ていたが、行動に移せないのはBさんいわく「彼が大丈夫なタイミングがわからない」からだった。
先月、Bさんはやっと彼を食事に誘うことができていた。
行くこと自体はOKだったが、「彼の都合が良い日を教えてもらってから」という足踏み状態で、具体的な約束はできていないのが今だった。
「それがね」
水の入ったグラスを掴むと一気に半分ほど喉に流し込んでから、Bさんが口を開く。
「12月はイベントやら年末年始の新規受け付けやらで、忙しいって」
「……」
ああ、やっぱり進まないのだな。
何も言わずに視線を返すと、Bさんは慌てて「わかっているわよ。少しの時間でもいいから本当に会う約束しろと言うのでしょ」と、肩をそびやかして言った。
「でもね」
ちらりとこちらを見るBさんの瞳が光った。
「次のレッスンの日ね、彼が私の新しいプロテインを選んでくれるって。お店で売っているなかでおすすめのものを試飲させてくれるって言うのよ」
「……」
だから。
やっぱり「お客さま」から出ていないじゃないの。
そう思ったが、うれしそうに話す目の前のBさんにそうは言えなかった。
率直にいって、あなたは単なる「太客」なんだと思うけれど
Bさんから聞く限り、35歳の彼は、彼女を顧客の一人として丁寧に扱っていた。
運動不足を解消したい、体力をつけたいという彼女の希望に沿って、マシンを使った筋トレや有酸素運動を組み合わせたメニューを提案し、食事についても高タンパク低カロリーな内容を考えてくれた。
トレーニング用のマシンを使うのが初めての彼女に、付きっきりで姿勢や呼吸の仕方までその場で指導してくれる。
身体的な距離が近くなるのはどうしようもなく、彼のほうは触れすぎないように十分気を使ってくれているが、今やBさんのほうがわざと腕をくっつけていくような無遠慮さを見せていた。
Bさんがトレーナーの彼を好きになった理由は聞いていなかったが、
「どんな質問をしても必ず答えてくれる」
「うまくできたら褒めてくれる」
「成果が出てきたら一緒に喜んでくれる」
と、「寄り添ってもらえる実感」を持てるからかもな、と感じた。
彼の姿は、こちらから見れば客に対して当たり前の姿といえる。
いくつかあるなかでも通う日が多く決して安くない金額のコースを選び、ときには別料金の集中プログラムも申し込むBさんは、彼から見れば「太客」と呼べるだろう。
それなら、彼女がより満足するように「接客」するのはプロとして普通なのだ。
だが、恋の熱に浮かされたBさんにはそれが恋愛感情がある故の特別扱いに思えてしまい、いつしか「彼ともっと親しくなれるはず」に意識を向けだしたのだった。
【彼女がモテない理由#2】後編続きを読む
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