気の毒よ、カレだって断れないでしょ、お客に言い寄られて【40代のダメ恋図鑑#2】後編

2022.03.18 LOVE

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前編「カレからすればあなたは客であって、恋愛対象ではないの」の続きです。

40代。未婚でもバツイチでも、「独身」を楽しみたいと思いながら恋愛でつまずいてしまう女性たちは、どこで間違えてしまうのか。

アラフォーの女性たちが経験する「恋の迷路」をお伝えします。

 

恋センサーのない人は「脈」のありかがわからない

好きになると、相手の一挙一投足に敏感になり、自分に向けられる態度や言葉の意図を探るのはわかる。

 

トレーニングが終わった後で「今日もよくがんばりましたね」と笑顔でタオルを差し出してくれる姿すら、「好きな女性に対するいたわり」と受け取ってしまうのは、「客」という立場を超えて好かれていると思いたいからだ。

 

だが、本当に好きなら、Bさんに恋愛感情を持っているのなら、もっと確信的な言動が見えるはずだった。

 

ジムではスタッフとお客さんの個人的な連絡先を交換することは禁止されており、ジムの外で会うのもご法度だった。

それを知っているにも関わらず、BさんはLINEでやり取りすることを熱心に頼み込み、「規則ですから」と何度か断られてもめげずにアタックし続け、やっと「プライベートは明かさない」のを理由にIDを交換していた。

 

Bさんにとって決定的だったのは

 

「あのね、LINEを交換しているの、私だけなのだって」

 

という彼の言葉で、自分は特別な存在と思いたい気持ちはわかるが、第三者のこちらから見れば

 

「じゃあどうしてプライベートな話はしないの?」

 

となる。

 

金払いが良く真面目にレッスンを受け、指導も聞き入れてくれて、それなりの結果もついてきている。

そんな「お客さま」であるBさんに少しだけルールを緩めるのは考えられたが、本当に好きならジムの外でも距離を縮める様子が見えるはずだった。

 

気が付いて。はっきり断らないのは「それが商売だから」

LINEを交換してから、「本当に私生活について教えてくれないの」とBさんは不満そうだったが、それでも必ず返信があること、食事の写真を撮って送るとアドバイスが返ってくることなどで、好かれている可能性を持ち続けていた。

 

だが、「ふたりきりでの食事」だけは頑なに「無理です」と却下されていて、これをBさんは「やっぱりお店のルールから抜け出せないのね」とため息をつくが、こちらには

 

「これ以上親しくなるつもりはありません」

 

のサインに見えた。

 

結局、Bさんの勢いに今回も負けた彼は、「都合のいい日をこちらで決めること」を条件に、のんだ形になっていた。

 

「好きならすぐに誘うはずでしょ」という言葉の代わりに、「わずかな時間でもいいからふたりきりで過ごす約束をすること」をBさんに言い続けたのは、それが叶うかどうかで彼の真意がわかるからだ。

 

お店の外で顧客と会うことはリスクがある。

それでも彼女との時間を選ぶかどうかが見たかったが、案の定、誘いのメッセージはいつまで経っても送られなかった。

 

「12月ってうちの会社も忙しいもの、彼のジムも混むのは当然よね」

と彼の状態を尊重する様子でBさんは話すが、「いつまでも客とトレーナーの枠から出ようとしない彼」にはまったく目を向けていなかった。

 

いっそはっきり断られたほうがいい、次の恋へ向かってほしい

「ねえ、告白してもいいと思う?」

 

デザートの皿が下げられ、食後のコーヒーが運ばれてきてから、改めてBさんが言った。

 

「うん。どうなるかはわからなくても、気持ちを伝えるのは大事だと思うよ」

慎重に言葉を選ぶのは、無責任に「きっとOKだよ」などと言って期待させるのが嫌だからだった。

 

レッスンが終わった後でプロテインを選んでくれる約束など、お店のなかでなら気兼ねなく話せるので、Bさんに対する「自分に向ける好意へのお礼」でしかないだろう。

 

「でも」

 

湯気の上がるカップをソーサーに戻しながら、Bさんが口を開いた。

 

「彼と付き合うことになったら、私はジムを辞めないといけないのよね、きっと。

それとも、恋人になったのを隠して通わせる気かしら」

 

ふふ、と目を細めて笑う。

 

「いつ言うの?」

“妄想”には触れずにそう返すと、Bさんはぱっとこちらを見て

 

「プロテインを選んでくれたときかな。彼の仕事が終わるのを待つつもりよ」

 

ときっぱりした声で言った。

 

私には結末はわからないけれど、聞くまでもないと思う

「それはやめたほうがいいと思うけど」

 

さすがに止めようと思ったのは、そこまでする彼女を見れば、彼のほうは逃げ出すことが想像できたからだ。

 

Bさんは「そんな自分が歓迎されるはず」と決め込んでいるが、サービス業ともいえる相手に対して客の立場を超えた言動は、必ず拒絶される。

 

今はまだ彼が関係の主導権を握っているから、彼女は夢を見ていられるのだ。

「迷惑な存在」と本気で思われたら、その後どんな対応をされるかわからなかった。

 

「え、そう?」

と眉をひそめてBさんは声を落とすが、

 

「あなたが待っているのをお店のオーナーとかほかの会員さんに見られたら、彼が困るでしょう」

と言うと、目を開いて大きくうなずき、

 

「そうね、そうかもしれない。

じゃあ、仕事が終わったら○○に来てってLINEで送るわ」

 

と、行きつけのカフェに呼び出す方向に変えた。

 

「……」

 

そのメッセージにどんな返信が来るのか、肝心な部分で寄り添ってくれない彼の本心に彼女がいつ気がつくのか、暗い気持ちでカップのなかに広がる黒い波を見つめた。

 

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前編>>>【彼女がモテない理由#2】前編

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