気が付いて。既婚男性の狙いは「都合よくカラダの関係を続けること」だって【不倫の精算#51】後編
前編「50歳なのに「頑張ってくれる」カレ。この不倫、終わるタイミングがない【不倫の精算#51】前編」の続きです。
後ろ指をさされる関係とわかっていても、やめられない不毛なつながり。
不倫を選ぶ女性たちの背景には何があるのか、またこれからどうするのか、垣間見えた胸の内をご紹介します。
独身女性が離れがたくなる既婚男性の「手口」って?
Hさんが今の不倫相手と出会ったのは、会社だった。
あるイベントでコンタクトを取った会社のスタッフにいた既婚の彼は、わからないことをまっすぐに確認して現場でもてきぱきと動くHさんを見て、「パートなんてもったいない」と言ったそうだ。
会社の上司からも同じことを言われたことがあったHさんは、外の人間にも認められたことがうれしくて、また彼が「その場限りのつながりの人」だったこともあり、気安く接していたという。
会社を通さない個人的なやり取りとしてLINEのID交換を持ちかけたのは彼のほうで、その頃には業務以外の話もたくさん打ち明けていた彼女は、何の疑いもなくOKした。
イベントは無事に成功し、合同で開いた飲み会で「ふたりだけで二次会をやろう」と彼に誘われたHさんは、「酔った頭で特に何も考えられず」ついていき、そのままホテルに入った。
不倫が始まるよくある流れで、彼女が「手を出しても大丈夫な独身女性」と思われたことはすぐに想像できた。
その可能性はHさん自身もわかっていたが、彼の誘いを断らなかったのは「男性に求められる自分」が見たかったからだ。
相手が既婚者であっても、恋愛のような甘い雰囲気を持ちかけてくれる男性の存在は、離婚して5年、誰とも付き合ってこなかったHさんには貴重だった。
抵抗を失った独身女性。流れる先に「きちんと用意してあった」ワナ
そんな情報もつかんでいた既婚男性は、「抗えない刺激」を用意した。
褒めていい気分にさせ、情を引き出し、カラダに欲を持たせる。
ホテルに入り、土壇場になって「不倫になるけど」としっかり断りを入れることも忘れない既婚男性の周到さは、慣れていることを思わせた。
それでも、乗ってしまったら後は落ちていくだけで、最初から主導権を握られたような形で、Hさんの不倫は続いていた。
「どうやって終わればいいのよ」
の言葉は、応えた側である自分から行動を起こすことへの畏怖があった。
その気持ちに気づいているから、彼は自分の要求に応えない彼女を見るとすぐ「もうやめようか」を持ち出せる。
自分との肉体関係に溺れて「別れたくない」と思っている彼女の心を見抜き、快楽をエサに都合よく扱っているにすぎなかった。
「いつ飽きるのかしらね」
レモンのチューハイを店員さんから受け取って、Hさんが軽い調子でつぶやく。
先のない関係に身を置き、既婚男性に振り回される自分への抵抗は、とうになくしていた。
さっきからちらちらと視線を送る先には自分のスマートフォンがあり、たまにあるという「週末突然のお誘い」を気にかけているのはすぐにわかった。
「あなた次第だろうね」
彼女の前に焼き鳥の乗った皿を進めながら、同じく何でもないような口ぶりで返した。
男性側にばっかり有利。不明瞭で都合のいい、「飽きるまで」
「あなた、最近冷たいよね」
焼き鳥を頬張って、Hさんが不意に言った。
「え?」
「前はもっと親身になってくれたのにさ」
串を皿に置いて、Hさんは拗ねたような表情でこちらを見る。
「だって」
自分のチューハイに視線を投げながら、
「終わらせたくないってわかるからさ」
と、目を合わせないように気をつけながら答えた。
「……」
Hさんは黙る。
これを言うと、彼女はいつもテンションが下がる。
他人に本音を見抜かれる居心地の悪さは、自分の振る舞いが原因だとわかる程度には、理性があった。
「だから、飽きるまでよ」
薄く作ってもらった緑茶のチューハイを一口含んでそう言うと、喉の奥にじわりと刺激が広がった。
「自分で決められないなら、流れに任せるしかないじゃない」
彼女が求めていない「結論」だとしても、不明瞭で都合よく使えるのが「飽きるまで」であり、まだまだそれは遠い、と改めて感じた。
「……」
Hさんは黙る。
不倫に翻弄される自分にまとわりつく虚無感が、下げた肩先からふと漂うようだった。
この記事の前編▶▶50歳なのに「頑張ってくれる」カレ。この不倫、終わるタイミングがない【不倫の精算#51】前編
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