私にも「救える女」と「救えない女」がいる。独身女性の未来、どっちだと思う?【不倫の精算#53】後編
前編「会うなりホテルに直行するカレ。私、コーヒーを奢る価値もないのかな【不倫の精算#53】前編」の続きです。
後ろ指をさされる関係とわかっていても、やめられない不毛なつながり。
不倫を選ぶ女性たちの背景には何があるのか、またこれからどうするのか、垣間見えた胸の内をご紹介します。
「期待通りの慰めを口にしてくれない」相談相手の私にまで敵意を隠さない
「え、何でそんなことを言うんですか?」
唇の端を歪めながら低い口調で返すJさんには、明らかな怒りが見えた。
「不倫相手にお金をかけなくなった男は、その後も変わりませんよ。
本当に忙しいだけであなたに申し訳ない、大切にしたいと思うなら、慌ただしく呼び出すようなことはしないのでは、と私は思いますが」
光の宿った目をまっすぐに見返しながら続けると、今度は怯えたように視線を揺らす。
「そうでしょうか……」
「……」
不倫相手にないがしろにされる自分に、可哀想だ、もっと大事にされるべきだ、と言ってほしいのはわかる。
そう思っているから正論を言われると反発する気持ちが湧くし、自分の期待通りの言葉をくれない相手に容易に怒りを向けられる。
その幼稚さを、受け止めるつもりはなかった。
もういいか、と思い伝票に目を走らせたとき、不意にJさんが言った。
「別れたくないんですけど」
ごめんなさい、私にも「救える女」と「救えない女」がいる。あなたは
「え?」
思わず聞き返すと、Jさんの瞳には新しい種類の光があった。
「どうやったら前みたいな関係に戻れますかね?」
話の流れのおかしさに、この人は気がついているのだろうか。
大きくなる違和感は、これがメールにあった「悩みを聞いてほしい」人の姿ではなく、ただ自分の機嫌にこちらを付き合わせようとする身勝手さにあった。
「……」
バレないように深呼吸して、Jさんを見る。
「戻りたいのなら、男性の言う通りに会い続けるしかないと思います。
余計なことを言ったのを謝って、これからも楽しく会いたいんだって。
一途に思ってくれるのを見れば、男性のほうもまた大事にしたくなるかもしれません」
そう言うと、今度は安堵したようなため息がJさんの口から漏れた。
「やっぱりそうですよね。
この間のあれで喧嘩別れになるのがイヤだったんですけど、こっちが折れたらあの人も反省してくれるかもしれませんよね」
不倫相手を適当に扱う男が、反省などするわけがないだろう。
折れる相手を見れば、このやり方でもこいつは大丈夫だという確信を深めるだけだ。
だから、不倫相手の様子が変わったのなら、自分を哀れむのではなく別れるのが最善なのだ。
自尊心を失わないために。
Jさんはさっきとは打って変わった機嫌の良さで、また勢いよくアイスコーヒーをすすった。
「不満は、機嫌がいいときにさりげなく伝えればいいと思いますよ。
できればご飯も食べに行きたいなあって」
どんなに白々しくても、思っていることとは違っても、いま、Jさんが求めているのは自分への慰めであり、それを引き出さない限り引けないのだ。
彼女が聞きたいのは不倫相手の既婚男性の心理ではなく、誰にも相談できない自分への慰撫だった。
実は、この「相談」パターンはよくある。だが、幸せになった人はいない
不倫している女性で、未婚既婚に関係なく、Jさんのように「不倫相手にないがしろにされる可哀想な自分」を知ってもらおうとする人は多い。
ほしいのは問題の解決策ではなく、不倫相手に翻弄され悩む自分を認めてもらうこと、「大変だね」と共感してもらうこと、そして慰めだった。
初対面で一時間も話していない目の前の人間に、「どうしてそんなことを言うんですか」と期待外れを責めるのが、こんな人の本性だ。
機嫌がころころと変わり、それを相手に見せる自分への振り返りが一切ない。
おそらく不倫相手の前でも、こうやって感情の振り幅をコントロールできずに「ダダ漏れ」状態で、嫌悪感を持たれているのだろうなと想像がついた。
態度の変化や大事にされないことには理由があり、それが自分に由来するという可能性を、こういう人はわからない。
「やることはやるんだ」と下品な言葉をぶつけられる人間性が、相手の態度に反映されるのだ。
夫の不倫が原因で離婚したけれど、いま自分がその憎むべき不倫関係に身を置いている異常さについて、恥は理解できても正そうとする気はない。
プライドがあるから身近な人に相談することはできないが、インターネットで見つけたまったく未知の人間には気軽に感情を出せる。
間違った自己愛は必ず破滅を招く現実を、これまでもたくさん目の当たりにしてきた。
この日はこのままJさんの不倫話に終始して解散となったが、彼女の口から「ありがとうございました」という言葉は出なかった。
この記事の前編▶▶【不倫の精算#53】前編
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