でも、彼はまだ若くて、きっと熱い欲を身体の内側に持っているから【不倫の精算#55】後編

2022.06.24 LOVE

前編「こんな年齢なのに、まだ若い子にモテモテで」あなたはそう言いたいのね?【不倫の精算#55】前編」の続きです。

後ろ指をさされる関係とわかっていても、やめられない不毛なつながり。

不倫を選ぶ女性たちの背景には何があるのか、またこれからどうするのか、垣間見えた胸の内をご紹介します。

 

「純愛」を言い訳にする既婚女性が「本当に欲しいもの」って何だ

「会う時間が減っても、LINEもあるし外で約束できるじゃない」

 

そう言うと、自分でも何度も考えたのだろう、Lさんはすぐに首を振って

 

「こんなおばさんが20代の若い子とレストランで食事とか、どう見てもおかしいでしょ。

私はまだいいけど、彼のほうがね、嫌がるかもしれないし」

 

とため息をついた。

 

そうだろうか。

年の差があっても、不毛な関係でないのなら堂々と外で会っていても咎められることはない。

 

先ほど目の前に出されたスマートフォンの画面では、LINEでLさんに対して「好きです」とはっきり書かれていた。

 

照れたキャラのスタンプはさすがに若者らしいと感じたが、「次のバイトが待ち遠しいです」「早く会いたいです」と続くトークは、始まったばかりの恋愛に浮かれる様子が伝わってきた。

 

お互いに恋愛感情があるのなら、バイトの数時間だけ顔を合わせるのではなく、外でふたりきりの時間を持ちたいと思うのが普通じゃないのか。

 

こちらの疑問をおそらく予想していたのだろう、何も言わないうちに

 

「だって、彼を大事にしたいから。

こんな関係は純愛だもの、私のせいで変に悩ませたくないの」

 

と、わずかに力がこもる口調でLさんが言った。

 

「純粋」「純愛」、自分たちの関係を神聖なものとして扱いたい気持ちはわかるが、

 

「それなら、純愛だと思うなら、私だったら流れに任せるかな。

本当に好きなら会えない時間も大切にできるでしょう」

 

と言うと、返答に詰まったようにLさんは横を向いた。

 

この姿が本心だ。

 

直感でそう思った。

 

要するに「好きです大好きです」と言われ続ければそれで満たされるのね

さっきの言葉は意地悪だと自覚はあったが、「純愛」を強調して行動を起こさない自分を正当化する様子には、「若い独身男性との関係をいいとこ取りで楽しみたい」のようなずるさが透けて見えた。

 

だから「会えなくても平気なはず」と言われると黙るのだ。本心はそうではないから。

 

「好きだ」とためらいなくLINEで送ってくる彼に、デートに誘われたい。

自分からではなく、彼のほうに動いてほしい。

 

好きならできるでしょ?

 

ずっと消えない違和感は、彼を褒め称える割に関係を一向に進めようとしないことで、「不倫しているの」と極端に思い詰めながら実際は肉体関係も持っていない現実への不満が見えるのだった。

 

第三者として見れば、若い男性に言い寄られて自分も好意を持ち、ピュアな恋愛ごっこを大事にするフリをしながら、プラトニックな関係に欲求不満を募らせている既婚女性がLさんだった。

 

「純粋な人だものね、あなたの気持ちを大事にしてくれると思うよ」

 

重ねて言うと、「そうね」と小さな声で返すLさんは複雑な表情を作っていた。

 

「誘えばいいじゃない」

「彼にこれからどうしたいか聞けばいいじゃない」

 

おそらくほしかったのはここらへんなのだろうと思ったが、Lさんなりに既婚者としての葛藤は当然あるわけで、これを言われてもまた返事に困るだろう。

 

堂々と誘えないのは、「本物の不倫」に進む一歩を自分で作ることへの不安だった。

 

でも、彼はまだ若くて、きっと熱い欲を身体の内側に持っているから

この日は結局Lさんの「バイトのシフトが変わりそうで彼と会う時間が減る」という悩みについては解決できずに終わったのだが、それは「あなたはどうしたいのか」が見えないからで、Lさんは「彼は純粋な人だから困らせたくない」「この関係は純愛だから大事にしたい」にこだわり続けた。

 

そのスタンスを貫くなら他人が口を出すことはないと思うのだが、それは置いても、相手任せの関係がどうなるか、特に既婚者と独身者の場合は独身者のほうが選択肢の幅は多いのが現実だった。

 

Lさんは気づいていないが、独身の彼にとっても「既婚者に自分からふたりきりの時間を提案することのリスク」はあり、若くて恋愛の経験が少ないとしても、行動を起こすことには勇気がいるだろう。

 

うがった見方をすればお互いに「不倫への第一歩を相手に踏ませたい」と思っている可能性はあって、そうやって悶々と過ごす間に関心は引いていき、誘われない現実を見て恋愛ごっこに飽きるのは、不倫でなくてもよくあるパターンだった。

 

プラトニックな関係を尊いと思える期間は、そう長くない。

 

これがこちらの実感であり、男女の情愛は距離が近くなるほどに性に走るのが当たり前であって、性愛を求めるのは醜いからでも汚いからでもない、愛する人と愛情でつながっていることを肉体で確認したい「純粋さ」なのだ。

 

Lさんの口にする「純粋」「純愛」は、「既婚者と独身男性が恋愛感情を大事にしてプラトニックな関係を続ける」ことで、その恋愛ごっこがいつまで続くのか、欲に蓋をし続ける限り本当の純粋さにはたどり着けないだろうなと、会計を済ませながら考えていた。

 

 

この記事の前編▶▶「こんな年齢なのに、まだ若い子にモテモテで」あなたはそう言いたいのね?【不倫の精算#55】前編

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