独身男性との不倫におぼれる40代既婚女性の誤算【不倫の精算 ・リバイバル7】(後編)
「不倫」という罪を抱えた事実
だが、L子は大きなことを忘れていた。
彼女が記している「夫婦関係が破綻している証拠」は、夫が週末何も言わずに一日家を空けたり、子どもの授業参観のプリントも目を通さず捨てたりと、確かに夫としてマイナスなことが正しく示されている。
それはいざ離婚するときに夫を黙らせるための大切な記録であったが、その一方で、彼女自身が「不倫」という人の道から外れた関係を持ったことは、みずから不利な状況を用意したことにはならないのだろうか。
そこを突っ込むと、
「うーん……。そうだけど。でも、バレなかったら大丈夫じゃない?」
とL子は笑って肩をすくめる。「バレなかったら、ねぇ」と首をかしげると、続けて
「そもそも、うちの人が先に壊したのよ」
L子は言った。その口調はさっきと違う強い響きがあり、顔を上げるとこちらを睨みつけるL子の視線があった。
私は悪くない。L子の瞳はそう語っていた。
不倫は決して正当化される関係にはならない。たとえ不倫前から夫婦関係が悪かったとしても、それが夫のせいだとしても、「だから」独身の男性と肉体関係を持つことを「良し」とされることはない。
その大きなマイナスを、L子は「バレなかったら大丈夫」で片付けるが、子どもたちが進学して家を出るまでまだ何年もかかる中で、そう上手くいくのだろうか。
いま、彼女は家庭での家事を放棄する時間が増えている。彼と過ごす時間が多い分、それは当然のことだった。夫からの嫌味は止まず、家庭は手入れの行き届かない状態が続いている事実から、彼女は目をそらす。
その自分は、まさしく責め続けた夫と同じように家庭そのものを壊す行いをしていないかと、もう一度L子に問いたい気持ちがあった。
仮面夫婦だから不倫に走るという既婚女性は多く、その根底には「好きで不倫したわけじゃない」という言い訳がある。
だが、いずれ離婚を考えているなら尚のこと、みずから立場を悪くするような選択は本来控えるのが正解だ。
夫婦関係を軽んじているのはお互い様であり、もしバレてしまえば、大きな責めを負うのはL子になる。
この誤算に、彼女はいつ気がつくのだろうか。
<<前編:会社の部下である独身男性との不倫
(取材・文/ひろたかおり)
この記事は2018年1月に初回配信されました
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