ひみつの不倫、年下男性が「45歳の私の身体に夢中になる」快楽【不倫の精算 ・リバイバル8】(前編)
「あえて飛び込んだ不倫」の理由
Dさんの不倫相手は年下の独身男性で、趣味のスポーツ教室で知り合った。
体を動かすことが好きなDさんにその男性は最初から親しげで、はじめて彼の話を聞いたときから下心がありそうなのは見えていた。が、実際に彼女が肉体関係を持つことはまったく想像していなかった。
彼女には同い年の夫がいて、夫婦仲は順調だった、と思う。夫とは実際に町で会ったことがあり、そのときは「ふたりでデート中」と口を揃えて笑う二人に羨望を覚えた。
10年目の結婚記念日にはダイヤモンドのリングを贈ってくれる夫がいて、仕事は波に乗っていて、趣味もしっかり楽しんでいる。
Dさんの人生ははたから見れば「勝ち組」であり、彼女自身もそんな自分に自信を持っていたはずだ。
会社の部下やスポーツ教室で男性から思慕を寄せられることも珍しくなく、それらを自慢とともにあっけらかんとネタとして話してくれるのは、こちらにとっても楽しい時間だった。
だが。
「ね、どうしよ、ついに進んじゃったんだけど」
半年前、浮かれた調子で話す彼女の声に、胸がガンと音を立てたのを覚えている。
「旦那さんとうまくいっていたのに、どうして?」
そう訊きたい気持ちを必死にこらえ、ひたすら彼女が「彼に甘えきってホテルに誘わせた話」を聞いていると、そこに横たわるひとつの感情に気がついた。
「私を欲しがる彼が見たかった」
「どうしても彼の口から『ホテルに行きたい』と言わせたかった」
「今夜は夫と“する日”と嘘をついた」
Dさんは、求められる自分を知りたかったのだ。
それは、見たことのない彼女のもう一つの顔であり実体であり、表の世界で充実した暮らしを満喫している姿から遠く、「そんなことを思うはずがない」ものだった。
最初の頃は「ソレ目当ての男なんて、こっちから遊んでやるくらいでいい」なんて豪胆に笑っていたのに、自分から飛び込んでいくなんて。
そんなショックは、その後の彼女の苦しみを見ていると、ますます苦い鉛になった。
「充実した暮らし」だけど埋まらない部分
「だって、ねぇ、45歳の女の体に夢中になるって、すごくない?」
不倫がはじまった当初、大げさに目を見開いて明るい声をあげるDさんには、夫を裏切っている罪悪感はなかったように思う。
一度寝てしまえば次の約束もホテルに行くのが当然であり、スポーツ教室が終わったあとでこっそり向かったり、ときには「我慢できずに」クルマの中で行為に至ったり、彼との濃密な時間について報告を受けるたび、快楽を純粋に楽しんでいるような、初めての経験に心を踊らせるような高揚感ばかりが伝わってきた。
「気をつけないとね」
それしか言えない。夫から贈られたダイヤモンドのリングは依然として左手で光っていたが、手入れされた指先は年齢を感じさせない若々しい輝きを持っていたが、彼女がいまどんな危険な状態かを考えると、「良かったね」なんて相槌づちは返せなかった。
不倫相手は、小さな製造工業で働く独身の男性で、彼女より8歳も年下だった。
高い収入に努力の成果であるキャリア、優しい夫に趣味と充実した暮らしを送っているはずの彼女が、どうして夫以外の男性におぼれるのか。
「私をよろこばせようと、必死になってくれるの。
早く早くって急かすのを見ていると、かわいいなと思うし、私もまだまだ頑張れるなって」
無邪気な笑顔を見せるDさんを見ていると、どうしても違和感があった。
そして思い出すのが、夫とのベッドの事情をDさんから聞いたことがない事実だった。「求められる自分」を見たがるのはそのせいか、とひそかに勘ぐったりもしていた。
外から見れば「充実した暮らし」も、本人にしか埋まっていない部分のことはわからない。
そこを確認できないまま、Dさんの声を聞いていた。
後編▶▶不倫相手の「別れたいサイン」を認めない。人妻の驚愕の行動は
(取材・文/ひろたかおり)
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