【40女の恋愛事情】story2 私は彼の特別になれますか?-45歳・真由子の場合(1)-
半年前のあの日、私は風邪で寝込んでいた。
熱が高く、ひとり暮らしのマンションで、ただ静かに寝ているしかなかった。
暇だったから、演劇の感想をSNSに書き込んでいた。
『先週観た『ラストプリンス東西南北』という舞台、東の国の王子役だった男の子、可愛かったなあ。品があって本当に王子さまみたいだった。おとなしそうに見えたけど、プライベートではどんな感じなんだろう。お話してみたい』
そうひとりごとを書いたら、夕方に、返信を告げるメロディーが鳴った。
見たら、その役者さんからだった。
『ご観劇ありがとうございます。東の王子役は僕です! 気に入ってくださり、ありがとうございます。プライベートでは結構明るいんですよ。また舞台を観に来てくださいね。来月は池袋のブルーミュージアムに出ています♪』
本人に読まれるだなんて思ってもいなかったので、熱がある体が一層熱くなった。
『ごめんなさい。好き勝手なこと書いてしまって。またぜひお芝居観てみたいです』
あたりさわりのないレスを送る。
そうしたらまた返信があった。
『お待ちしてます♪ 風邪、おだいじにしてくださいね』
胸がどきんと鳴った。
彼は、私のSNSの他の書き込みにも目を通してくれたのだ。
『カゼでしんどい』『今日も熱がある』という書き込みまで読んでくれたのだ。
思いがけないお見舞いの言葉が、ひとりぼっちで寝ている私に、しみていった。
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