【40女の恋愛事情】story2 私は彼の特別になれますか?-45歳・真由子の場合(1)-
この世の中で、誰かが私のことを気にしてくれていた。
たったそれだけのことで、ひとりぼっちの私の毎日に、色が射した。
その日から、私はSNSにグチを書かなくなった。
彼に読まれたら、恥ずかしいから。
彼は、役者生活2年目の、23歳。
大学を卒業してから、この世界に入ったとプロフィールにあった。
まだまだ新人なので、舞台では脇役が多い。
SNSでも彼にコメントするファンらしき女性は、数えるほどだ。
今のところ、人気があるという状態ではなさそうだった。
あの日のやりとりをきっかけに、私は、彼を応援するようになった。
そして、半年後、今、ベンチに座って、彼を待っている。
たった半年で、私たちの距離は、ずいぶん縮まっていた。
前から演劇が好きだったけれど、彼に出逢ってさらにヒートアップしてしまった。
彼の次の舞台は、終演後にロビーで役者さんと話ができる時間もあった。
彼も「あの時カゼをひいていたものです」と言ったら、わかってくれて、うれしかった。
彼に優しく微笑みかけてもらえると、自分の全てを受け入れてもらえたような気がして、幸福感でいっぱいになれた。
私は時間さえあれば彼の舞台に通った。
同じ演目を公演の全期間、毎日観続けたこともある。
彼も私のことをお得意様だときっとみなしてくれていると思う。
今回のお芝居には、思い切って大きなスタンド花を彼に贈った。
役者はスタンド花をもらうとうれしいと聞いたことが、あったから。
劇場入り口に、彼の名前が大きく書かれたピンク色のスタンド花が立っていて、ドキドキした。贈り主の私のSNSネームが、彼の名前の下でキラキラしていたから。
今夜は初日だったからか終演後に、出口で役者達が整列し、客を送り出していた。
私が前に立った時、彼が素早く囁いた。
「お花のお礼をしたいから、近くの公園で待っていてもらえませんか?」
私は道の向こう側の劇場の明かりに目をやった。
明るく輝いている建物の周辺の人影はまばらになっている。
もしかして、忘れられているのだろうか。
そう心配になった瞬間、黒い影がひょこっと現れた。
「すみません、お待たせしちゃって」
普段着の彼が、私の目の前で微笑んでいた。
【私は彼の特別になれますか?-45歳・真由子の場合(2) -につづく/過去のまとめ読みはこちら/毎週火曜17時更新】
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