【40女の恋愛事情】story2 私は彼の特別になれますか?-45歳・真由子の場合(2)-

2016.08.16 LOVE

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「これからも頑張りますから、僕のこと、ずっと見ていてください」

「……」

胸がいっぱいで、何も言えなかった。

半年前、舞台の上で王子様の格好をして輝いていた彼が、今、私だけを見つめている。

もう、それだけで、充分すぎるくらい幸せだった。

彼は夢のような時間を私にくれたから……。

 

それからますます、彼は、私の生きる目的になった。

公演には必ずスタンド花を贈ったし、帰りには彼は私と公園で待ち合わせてくれた。

わざわざこんな時間を作ってくれるのは、私がたくさんお金を使っているお礼のつもりなのかもしれない。

 

私だけにこんなことをしているの?と聞いたら、

「そうですよ。あなたは僕の大切なたったひとりのファンだから」

と彼は微笑んだ。

 

私と彼だけの秘密の面会は、最初はほんの数分だった。

でも、時には30分近くに及ぶこともあった。

いつのまにか彼は私に、いろいろな話をしてくれるようになった。

将来、こんな役者になりたいんだとか、来年あたりは主演をしていたいとか。

そしていつかは戦隊ヒーローとしてテレビ出演したいとか。

 

「素敵ね」

私は目を細めた。

彼と一緒に、彼の未来を夢見ていると、私まで二十代になったかのように、気持ちが高揚した。

若い彼は、何だってできる。何にだってなれる。

転職したくても、年齢のせいで、何かとうまくいかない、そんな私とは大違いだ。

 

そして毎回会ってくれる彼の気持ちを知りたくなっていた。

いつも私のことを大切にしてくれるのは、私がお得意客だからなのだろうか。

それとも恋愛感情を多少なりとも持ってくれているのだろうか。

 

聞きたくても、怖くて聞けなかった。

「……私は、あなたの特別な女性になれますか?」と。

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