【40女の恋愛事情】story2 私は彼の特別になれますか?-45歳・真由子の場合(3)-

2016.08.23 LOVE

flowers in basket and lights of night city

「あーなんかストーカー熟女がいるとか言ってたあれ?」

「そうそう」

「今日、そんな人いた? 囲んでたのは若い子ばっかだったけど」

「その熟女、しつこくくっついて離れなくて怖いから、外で待たせてるんだって」

「考えたな」

「他のファンと話してたら、泣き出しちゃったりして、大変だったらしいよ」

「痛いなそれ」

 

顔がひきつる。

これは私のことなんだろうか。

確かに私は、若い女の子と彼が楽しそうに話している姿を見て、涙を流したことがある。ほうっておかれて悲しくなって自然と涙がこぼれた、それだけなのに……。

 

彼がなんて言ったかを、思い出してみた。

「公演終わってすぐ行けるかもしれないから、なるべく早く公園で待ってて」

そう何度も言われていた。でも結局現れるのは必ず30分以上経ってからだった。

その30分の間に、彼は女の子達と話していたというのだろうか。

 

今すぐ席を立ち、もう二度と、彼に会わない。

そうするのが一番いさぎよい。

でも、できない。

明日から何を楽しみに生きていったらいいのか、わからない。

 

「あいつはいいよな。女んとこ転がり込んでるから、家賃もいらないし」

「彼女、ネイリストだっけ? 面倒みてもらってるんじゃ、ラクでいいな」

 

そんな、まさか。

彼は、男友達とルームシェアしていると言っていた。

彼女の部屋って、どういうことだろう。

心が凍りつきそうになる。

 

……気にしちゃダメだ。

私は首を横に振った。

この人達はきっと、別の役者の話をしているに違いない。

私が応援している彼の話であるわけがない。

だって彼はいつだってまっすぐに私だけを見つめてくれる。

あの瞳の中には、きっと好意だって、含まれているはずなのだから。

 

私は公園の時計を見上げた。

そろそろ彼が現れる頃だ。

いつもと同じ笑顔になろうと、私はなんどもなんども口角を上げて練習した。

彼が私のところに歩み寄ってきた時に、

「おつかれさま」と心をこめて、微笑んであげたい。

私は彼にとってたった1人のファン。

彼が、そう言ってくれているのだから。

彼の言葉を信じるしか、ないのだから……。

 

【私は彼の特別になれますか?-45歳・真由子の場合 完/過去のまとめ読みはこちら/毎週火曜17時更新】

1 2 3

スポンサーリンク

スポンサーリンク

スポンサーリンク