バツイチ独身女がハマった「都合の良い不倫」のドロ沼【不倫の精算リバイバル・9】後編
「都合の良い恋」の代償
「別に独身になってもいいじゃない。それは向こうの自由なんだし」
そう言うと、G子は
「でも、そこまでさせておいて面倒になったから別れるなんて、ひどくない?」
と泣きそうな声で言った。普段は柔和な笑顔で和ませてくれる彼女は、今は髪を乱して引きつった表情を見せていた。
G子は後悔していた。彼と奥さんが冷めた仲だからと、不倫であることをあまり意識せずに堂々とふたりで旅行にも行っていた。そんな親密度が、彼を本気にさせたと思っていた。
そして、彼女もまた、そんな彼との時間を愛おしく感じていたのも本当だった。だから、再婚する気がないことを強く言えなかった。彼を拒否することで別れを選ばれることもまた、心のどこかで恐れていた。
そんな中途半端な付き合い方が、彼に離婚届を書かせることになったのだ。
「都合の良い恋愛なんてないよ」
そう言うと、G子は怯えた目を向けた。
本当のことを話すなら、早いうちでないと取り返しがつかないことになる。それはG子もわかっていた。
「恋は面倒だ」と思いながら、実際は彼の愛情を引き寄せ、また自分もそれに応えるようなことを続けていた。その結末が彼が離婚を決意することであっても、責任は彼女にもあるのだ。
独身になった彼と向き合う勇気がないなら、彼に伝えないといけないのは嘘ではなく本音。
それが、せめてもの彼に対する誠意になると、うなだれる彼女に告げるしかなかった。
G子は、彼が離婚することはないだろうとどこかで高をくくっていた。
だが、それとは裏腹に彼との時間を愛する自分もいたことが、かえって彼の背中を押す事態になってしまった。
不倫でつく嘘は、大きな代償を払わされる。
それは、相手の愛情を裏切るという、大きな痛みを引き受けることになるのだ。
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