「年下の不倫相手」がいても孤独…。40代女性がハマる偽物の愛【不倫の清算・リバイバル12】(前編)
どうして彼女たちは妻ある男と関係を持つのか。
彼女たちは、幸福なのか。不幸なのか。
恋愛心理をただひたすら傾聴し続けたひろたかおりが迫る、「道ならぬ恋」の背景。
【不倫の精算・リバイバル2023】#12 前編
ファーストフード店での出会い
— E子(43歳)からの呼び出しは、いつものように彼女が出勤する前、朝早くから開いているファーストフード店だった。
平日のうち数回、そこで朝食をとってから勤めている夫の会社に向かうのがE子の習慣だ。会社では総務部長という肩書きだが、実質は「社長の奥さんのためのポジション」であり、仕事はほかの社員がほとんどを担当しているという。
「遅刻したって誰も何も言わないしね、本当に『お飾り』だと自分でも思うのよ」
E子はからからと笑う。それでも、仕立ての良いウールのスーツに身を包み、パールのイヤリングが控えめな光を放っているE子の姿はどう見てもキャリアウーマンだ。従業員は10人ほどの小さな会社ではあったが、そこの「社長夫人」という自分を、E子はいつだって忘れていなかった。
こんなファーストフードで済ませなくても、と以前言ったが、「別に節約じゃないんだけどね、何か普通っぽくない?」とE子は楽しそうに答えた。
学生やサラリーマンが慌ただしく出入りする店内で、E子は「馴染んで」いた。それこそ、普通の会社員のように。
同じメニューを注文して席に座り、最近の「彼氏」との話を聞く。
E子の彼は年下の35歳、独身で仕事は製薬会社の営業をしている。出会いはこのファーストフード店だった。
いつも同じ席に座るE子を見初めたのが彼で、あちらから話しかけてきたのがきっかけだった。
「この年でナンパじゃないとは思ったけど」
と、そのときのことを思い出してE子はふふっと笑う。
彼からの最初の言葉は、「これから出勤ですか?」だった。顔を上げると、自分と同じようにマフィンを手に持ったスーツ姿の彼が斜め向こうに座っていて、思わず「そうです」と普通に答えていた。
そのときは短い会話で終わったが、それからたびたび同じ時間に見かけるようになった。注文の列に並んでいると「おはようございます」と彼から声をかけられるときもあって、気がつけば「何となく隣同士の席で食べるようになった」という。
明らかに彼より年上で、若くもなく美しさの消えた自分にどうして話しかけてくるのか、E子は不思議だった。
「でも、刺激的だった。こんなことってあるのね」
と笑うE子の顔は、以前より濃い目にチークが入り、アイシャドウも華やかなピンクのラメが印象的だった。
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