「お食事のあとにどこへ行くのか」もちろん知っていたでしょう?【不倫の清算・リバイバル】(後編)
お食事のあとに「当然何かがある」そう彼女は予期していた
「どうしても忘れられなくて」
テーブルに肘をつき、額に手を当ててBさんは下を向いた。
「何が」
尋ねると、そのままの姿勢で
「……独身の頃に付き合っていた人が」
と、低い声が返ってきた。
「え、元彼!?」
新しい登場人物に驚いて声を上げると、しばらく無言だったBさんはそろりと顔を上に向け、
「そう、元彼に似ているの、その人」
と、揺れる声で言った。
あやふやに揺れる瞳にはいまだ光が見えて、Bさんが何に興奮しているのかがわかった。
「ああ、元彼に似ているから、昔を思い出したってこと?」
「……」
その言葉に、今度は首をかしげてBさんが言った。
「昔を思い出したというか、何だろう、こう、男の人に求められる自分がね……。
不倫でもそういう対象になるんだって教えてもらったようで」
何度か食事に行くうちに、独身男性から「好きだ」と言われたBさんは、「ああやっぱり」と思ったそうだ。
その「やっぱり」は好かれているという実感ではなく、「食事の先を求めているサイン」を相手が出してくるだろう予想が当たったことに対してで、最初から男性が体目当てであったことを正面から受け入れていた。
関係は不倫であっても、「そういう対象」になる自分を目の当たりにして、流されてしまったのだろうか。
夫と長い間レスであることは以前聞いており、それもBさんの欲を加速させたのか、とちらりと思った。
「そんなものでしょ」
先ほどと同じ、投げやりな響きの言葉が続いて、Bさんが唇を歪めるのが見えた。
「結婚している女に声をかける男なんて」
▶本当に「忘れられない」のは、元カレではなく…
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