なぜあなたは、不倫がやめられないの?「ご新規さん」に別れを告げられた既婚女性が「気づいていないこと」【不倫のその後】
いけないことだとわかっていても、既婚者と肉体関係を持てば「不倫」になります。
誰かとのつながりを求める自分をそのときは止められず、身を浸した先に終わりを迎える人も多いもの。
過去に不倫をしていた人は、その後どんな人生を歩んでいるのでしょうか。
相手との関係や自身の生活の変化について、女性たちのリアルをお伝えします。
プロローグ
夏菜から「ちょっと話したいことがあって」と呼び出されたのは、寒さがきつい土曜日の午後だった。指定されたカフェが、いつもの落ち着いたお店ではなくチェーン店であることに、「周囲に喧騒が必要な話題か」とふと思った。
互いに静かななかでお茶をするのが好きなのに、騒音を避けられないところをあえて選ぶことには、意味があるはずだ。そう考えながら待ち合わせの時間に到着すると、お店の一番奥のテーブルに座っている夏菜が見えた。
「お待たせ」と向かいの椅子にバッグを置くと、「一緒に注文したくて」と夏菜は立ち上がり、それから飲み物を買ってふたたび席に戻った向かい合って落ち着いて見てみると、夏菜の表情には翳りがあった。
休日なのに濃いメイクをしているのは珍しく、目の下に浮かんでいるクマを見つけて疲れを感じ取った。
目を伏したままの夏菜と最初はお互いの近況などを話していたが、カフェオレを一口飲んでカップを置き、「あのね」と切り出されたとき、その声は明らかにトーンが落ちていた。
「例の人と、ダメになっちゃって」
ああ、と夏菜の状態について了解する。
「そっか、ダメだったか」
と冷静に返すと、ちらりとこちらに視線を寄越した夏菜は
「案の定って感じなんでしょ、どうせ」
とひねくれた口調で言った。その軽口を無視して「何かあったの?」と尋ねると、
「何かね、やっぱり無理をしていたんだって。私と会う時間を作るのが大変だったみたい」
夏菜はカップに視線を戻して力なく答えた。
「……」
「今度はうまくいくと思ったんだけどな……」
夏菜のつぶやきは、半年前に「ご新規さんをゲットしたの」とはしゃいでいた声と正反対の、重たい響きがあった。
やめられなかった不倫
42歳の夏菜は既婚者で、同い年の夫とふたりのお子さんと、結婚してすぐに建てたという家で安定した暮らしを送っていた。
営業職のせいか人と知り合う機会が多く、過去に聞いた不倫相手はひとりだがそれも仕事でつながりがある男性で、仲を深めホテルに行くような親密な関係になってからは、とにかく「バレないこと」で苦労していたのは知っていた。
不倫なのだから大変なのは当たり前だが、それでも一年ほど続いたのは、仕事でつながっているため普段から距離が近かったからで、打ち合わせや飲み会の後は必ずふたりきりで会う時間を作れていた。
関係が終わったのは、夏菜が仕事で忙しくなり逢引する時間の捻出が難しくなったのが理由だったが、そのとき相手の男性から「何度も引き止められて」しつこく連絡をもらっていた話も聞いていた。
あの頃、夏菜は「不倫って、やめるときのほうが大変なのね」とうんざりした顔で繰り返しており、食い下がる不倫相手への愛情などとうに手放したと言いながら、最終的に仕事でも最低限の会話しかしないことで「終わり」を貫いた。
だから、その3か月後だったか、夏菜から「ご新規さんをゲットしたの」と報告されたときは、正直に言えば「懲りてないのか」という驚きのほうが強かったのだ。喉元過ぎれば何とやらなのか、ストレスが強かったはずなのに不倫をやめられないのはなぜなのか、夏菜の心の状態が気になった。
「ご新規さん」を求める気持ち
その既婚男性とは、「マッチングアプリで知り合ったの」と夏菜は言った。これも驚きで、「そこまでして」と思ったがそれは言わず、出会いから今の状況まで楽しそうに話す夏菜を見つめていた。
「今度は会社のつながりとか何もないから、気楽なのよ。カラダの相性もいいし、ご飯が美味しいホテルでのんびり過ごすのが息抜き」
相手の男性は自営業と伝えているらしく前の男性より時間の融通がきくことも、会いやすい理由だった。お互いに既婚者なら無茶を言うこともなく、カラダだけの関係と割り切って現実を忘れる時間を持つことに、夏菜はためらいを持っていなかった。
「だって、夫とはとっくにレスだし。私もまだまだいけるんだってわかったし、相手がいるならいいじゃないって」
過去の不倫相手とのお付き合いで、夏菜が見つけたものに「まだ女性としての魅力がある自分」がいるのは気づいていたが、それを引きずったまま、「ご新規さん」を探していたのだろうか。
だが、その次の人との不倫は、最初より短い半年という期間で終わりを迎えていた。
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