「体だけの不倫」のハズだった。「女として終わりたくない」そう執着する彼女の末路は…(後編)
「女」であることの証明は自分でもできる
真紀は何を求めているのだろう。不倫を受け入れ、結局は異常なつながりにみずからが耐えられず関係を切り、夫のもとに戻ったけれどやっぱり愛してはもらえない。その不満と悲しみは、「女」であることの証明がかなわない現実への絶望かと思った。
「話せない気持ちはわかるよ。それならさ、別の部分で自分を満たしていくしかないと思う」
なるべく穏やかに聞こえるように声を抑えながらそう言った。
「……」
真紀は黙っている。
「それだけが女の証明じゃないでしょ。服でもメイクでも、体型でもいい、私は美しい女なのだと実感できることをさ、増やしていこうよ」
40代の年齢に相応の、肌のシワや似合う服の変化に真紀は愚痴をこぼすことがあった。でも、極端に顔の造作がおかしいわけでも決して太っているわけでもなく、努力しだいでまだまだ輝きは取り戻すことはできる。そう言いたかった。
ベッドでのことにばかり意識をとらわれると、そのほかの部分でできる努力に意識が向かない。それに気がついたのか、
「……ダイエットはしようと思ってる」
と、真紀は小さく返した。「女の証明」という言葉は、他人任せで叶えることを期待するからつらさが増すものだった。
「うん。旦那さんはもう放っておこうよ、今は。それより自分に集中しようよ、きれいになると気分が変わるし、自信がつくよ」
ありふれた提案で、手垢のついた言い方だとわかってはいても、真紀の意識をそれ以外にそらす必要があった。やみくもに求めるのではなく、まずは自分自身を見つめ直すことが、新しい現実を連れてくる可能性は確かにあるのだ。
「うん」
真紀は短くうなずく。付け焼き刃の解決法ではない。夫に己の存在を証明させるのではなく、みずからで存在感を作っていく努力は、決して無駄にはならないはずだった。
「……大きな声を出してごめんね」
冷静さを取り戻した真紀の声を聞きながら、女性が自分の魅力を育て続けることの大変さを思った。若い頃より時間はかかるし、結果も想像通りにはいかないこともあるだろう。それでも、自分の人生の責任を負うのは自分だけなのだと、いいものにするために努力するのだと、改めて真紀の背中を押す次の言葉を考えた。
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