隣家の騒音やペット、どうにかして! 被害を受けたとき、もし自分が加害者になったとき、対処法は?【弁護士が解説】
家の物音やテレビの音によるトラブル
続いては、よくある騒音トラブル。これは戸建てだけではなく、マンションやアパートでも起こり得ます。上の階の部屋の足音が響くということは多いものです。
●加害者にならないための予防法は?
「騒音トラブルの予防では、生活音が近隣に迷惑となっていないか気を払うことが大切です。過去の裁判例では、静粛が求められる夜間の時間帯に騒音が生じたことに着目して慰謝料請求を認めたものもあり、特に夜間の生活音については、注意する必要があります。
しかしながら生活音は無意識のうちに生じ、近隣住民から指摘されるまで気づかないことも多々あります。そのため、足音が響かないよう厚手のカーペットを敷く、椅子を引く際に音が生じないよう椅子の脚にカバーを付けるといった対策が考えられます。
テレビについては、部屋の壁を伝って隣室に音が伝わることが多く、テレビの設置場所を隣室の壁と接する以外の場所にするといった予防策が考えられます」
●被害者になったらどうする?
「ご自身のみでの対処が困難な場合、騒音の日時や内容を記録し、騒音計で計測した上で、賃貸住宅であれば、管理会社や大家さんに相談することも考えられます。
騒音トラブルの裁判例では、都道府県が定める騒音の規制基準の範囲内かという点が重視されます。そのため、騒音の程度を客観的なデータで明らかにするとよいでしょう。自治体によっては騒音計の無料貸し出しを行っているところもあり、利用するのもおすすめです。
また騒音が受忍限度を超えるかは、騒音の規制基準以外にも、被害防止措置の有無といったさまざまな事情を考慮して判断されます。そのため法律の専門家である弁護士に測定したデータを持参して、受忍限度を超えるかの判断や今後とるべき対応について相談するのもおすすめです」
足音を立てないようカーペットやカバーなどのグッズを利用して予防しつつ、騒音が気になるなら騒音計を使うなど道具の使用がポイントといえそうですね。
ペットの鳴き声、共用部分の悪臭・不衛生さによるトラブル
続いては、ペットを飼っている場合のトラブルです。自分が飼っている場合はもちろん、隣人のペットに困っているという人も必見です。
●加害者にならないための予防法は?
「犬の鳴き声が周辺住民の受忍限度を超えるかどうかが争われた裁判例では、飼い主が昼間に家を不在にすることが多く、飼犬を運動させる機会もわずかであったことを理由に、周辺住民に対する損害賠償責任が認められたものもあります。そのため、日頃からペットにストレスを溜めさせない工夫をしたり、しつけを丁寧に行うことで、必要以上の鳴き声を生じさせないことが重要です。
悪臭については、悪臭防止法や各都道府県が定める基準によって規制されています。裁判例では、においの程度を数値化した臭気指数を用いて、ペットの悪臭が受忍限度を超えていると判断するものもあり、糞を放置せず適切に始末する、尿を十分な量の水で流すといった処理を確実に行うことが重要です」
●被害者になったらどうする?
「ペットの鳴き声は騒音計で測定してから、第三者に相談するのがおすすめです。悪臭の場合は、臭気測定を個人で行うことは困難です。
動物の愛護及び管理に関する法律では、都道府県知事が動物の飼養に起因した騒音や悪臭の発生等によって周辺の生活環境が損なわれている事態が生じていると認めるときは、当該事態を生じさせている者に対し、必要な指導または助言をすることができると規定されています。
そのため居住する地域を管轄する保健所に騒音や悪臭について相談することで、状況が改善される可能性があります。また悪臭や騒音で、他の近隣住民も同様の悩みを抱えている可能性があり、他の住民と連携して自治会に相談するのも対処法の一つです」
ペットを飼っている人は、可愛いペットのことを大事にする意味でもマナーを守って隣人にも気を遣いながら暮らしたいですね。もし隣人のペットに困っているなら、第三者への相談も検討しましょう。
近隣トラブルを回避するポイント
森田さんに近隣トラブルをうまく回避するポイントをアドバイスいただきました。
「まずは自らの日常生活を見つめ直して、迷惑行為をしていないか、意識することが重要です。特に生活音は無意識のうちに近隣住民に不快感を与えることもあり、注意が必要です。
万が一トラブルに巻き込まれた場合、不要なトラブルを防止するため、当事者同士で直接話し合わず、管理会社や弁護士といった第三者を通して解決を試みることも重要です。
管理会社への相談でも、管理会社からトラブル元の住人に直接苦情が伝えられるのか、管理会社が居住者全員に注意喚起を行うのかなど、対応方法は異なります。どの対応がベストかといった判断は、経験による部分も大きく、法律的な判断が必要なこともあり、近隣トラブルの経験が豊富な弁護士に相談するのも有効な対処法です」
この春、新しい環境で暮らし始めた人は特に、これからトラブルに発展せず、快適な生活を送れるよう、意識しておきたいですね。
【取材協力】
森田 雅也さん
弁護士。東京弁護士会所属。賃貸管理を中心に数多くの不動産案件を取り扱い、多数の不動産賃貸管理トラブルを解決へと導いた実績を有する。また、不動産法務だけでなく、不動産と切り離せない相続問題にも注力。依頼者や顧問先企業のニーズに寄り添い、柔軟に対応することを信条としている。
久田 優美さん
三菱電機株式会社空調冷熱システム事業部
入社以来、家庭用エアコンをはじめ業務用エアコンまで幅広く担当。その結果、外を歩けば自然と室外機が目に入る体質に。現在は、テレビやWEBメディアを通じて、エアコンに関するお役立ち情報を発信している。
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