不倫関係だった年下彼への執着。32歳の彼女が彼に会いたい「本当の理由」とは…(後編)
わからない「現実」
「あのさ」
この「相談」は、もう3回目に及んでいた。忘れものを取り戻す手段は見つからないまま、それでも凛子は諦めがつかずに苦しんでいた。
「ん?」
「もうないかもって、考えない?」
「え?」
不意をつかれたように凛子が高い声を上げた。
なるべく穏やかに伝わるよう意識しながら
「もしかしたら、捨てられているかもしれないじゃない?」
と静かに言うと、スマートフォンの向こうで凛子が身じろぎしたような気配がした。
「……」
沈黙には、そんなこととっくに考えた、と無言の返答が含まれているようだった。
「まだあるのかどうか、確認のしようがないよね。返してほしいって言ったときに、『もうないよ』って答えられるのが私は怖いよ」
「……」
その「現実」は何より凛子がおそれるもので、男性の振る舞いを見ていれば自分の存在がどれほど軽いものか、置いてきた私物も等しく軽んじられるだろうことは、想像がつかないはずがないのだ。
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