不倫関係だった年下彼への執着。32歳の彼女が彼に会いたい「本当の理由」とは…(後編)
「存在のゴリ押し」に走る理由
不倫はどうしたって人には言えない関係で、だからこそ親密度を人前でアピールしたがる人たちがいる。「あのふたり、おかしいよね」と陰口をたたかれる可能性すら歓喜になるような歪んだ刺激は、ふたりの仲を盛り上げるスパイスなのだと感じた。
だから、相手が独身者だった場合、自分との不倫が終わって「次の人」とは堂々と仲を見せつけるような姿を目にすると、怒りと恨みが強くなる。自分とはできなかったことをしているのが憎らしくなる。そうなると、次に湧いてくるのが「自分の存在のゴリ押し」をすることの欲求で、仲に水を差したくなるのだ。
要は「私を忘れるな」というメッセージを伝えたいのが本音であって、不倫相手の部屋に置いてきた私物を3ヶ月も経ってから取り戻したいなんて言い出す気持ちも、抑圧された怒りを発散させる手段にしたいのだろうなと考えていた。
「だからさ、もう忘れるのがいいと、私は思うよ」
「諦める」という言い回しを避けたのは、その表現が惨めさを呼ぶものだからだ。今は新しい相手と幸せな恋愛をしている相手に、今ごろになって自分の存在をアピールしても、おそらく凛子が望むような展開にはならない。忘れるのが今の凛子に必要な意識だろうと思った。
「今さら私のことなんてね、どうでもいいだろうし」
口を開いたとき、凛子の口調は疲れたものに変わっていた。その現実について、自分では口にできないけれど人に言われたら「やはり」と受け止めるのが伝わった。わかっているのだ、存在のゴリ押しをしてもかえって痛みを受ける結末になることを。
香水を返さない彼は… 次ページ