「えっ、車の中で…!?」不倫相手の自分勝手さに乱され、ほだされた果てに女が見たものは(後編)
思わぬ不倫の後遺症が…
「楽しんでおいでね」
と、浮かれた様子にテンションを合わせてそう言うと、
「うん。今度は大丈夫だと思う」
と亜樹は力強い声で答えた。
既婚男性に別れを告げ、その後しばらく執拗に復縁を迫られる恐怖にも耐え、亜樹は何とか「ご新規さん」を探す前向きさを取り戻した。もちろん「相手は独身に限る」で、使うマッチングアプリは女性も課金しないとやり取りができないような出会いの意識が高いものにした。
不倫で男の身勝手さに懲りたからこそ、出会いから間違えずに誠実な男性を探そうとする亜樹の姿勢を応援してきたが、やっと会話までたどり着けても、亜樹は「その気になれなくて」と早々にお断りすることもあった。お互いにプロフィールを気に入ってメッセージのやり取りが始まるが、何がやる気を削ぐのか聞いてみたら「物足りなくて」とため息が返ってきた。
「丁寧だし優しいし、私の話を聞いてくれるんだけど、控えめすぎるのね、向こうが。もっと強引に引っ張ってくれたら早いのになって……」
困惑した顔で頬杖をつく亜樹を覚えているが、過去の不倫相手から受けとっていた「刺激」を忘れられていないことはすぐにわかった。男性の気遣いが、亜樹には「意思の弱さ」に映るのだ。
まさに「不倫の後遺症」だった。男性からの支配とそれにつきまとう抑圧に辟易したはずなのに、そうやって振り回される自分に酔っていた感覚が、「ご新規さん」を探す段になっても必要不可欠な条件のように亜樹の心に根を張っていた。そんな状態で出会いを活かせるはずがなく、亜樹はマッチングアプリをやめようとしていた。
ところが、新しい男性とマッチングして… 次ページ