別れた不倫相手と、職場で再会して…。アラフォー女性の取った行動は(前編)

2024.05.24 LOVE

過去の不倫相手との再会。それは意外な…

日向子は38歳、10年前に婚約まで進んだ恋人がいたが「自分に隠れて元カノとも関係を続けていた」ことが発覚して破談となり、怒り狂った親が弁護士を代理人にして慰謝料の請求まで行ったことがトラウマとなっているのは、本人から聞いていた。

 

「それからずっと親とは仲が悪いし、彼氏ができても絶対に言わないし結婚もする気はない」

と、カフェでアイスコーヒーに挿されたストローを噛みながら漏らしたときの暗い表情を覚えているが、そんな日向子が次に本気になったのは、結婚している男性だった。不倫関係になり、「これくらいの位置が自分にはいいかも」なんて日向子はうそぶいていたが、結局は日陰の存在に耐えられなくなって自分から別れを告げていた。

 

「あの人がいたの……」

と揺れる声で告げられたとき、日向子はある会社に派遣社員として勤務していた。得意なスキルを活かして大きな戦力として尽力しているのは見ていてよく伝わったが、その仕事の取引先に「あの人」がいたのだった。送られてきたメールにスタッフとして男性の名前があるのを見たとき、日向子は文字通り「息が止まった」と言った。

 

不倫関係が終わって一年ほど経った頃だった。

 

「仕事相手」と割り切れない理由

別れた不倫相手と派遣先の仕事を通じて再会するなんてケースは狭い地方と業界ならあることかもしれないが、問題は日向子が男性に嘘をついていたことだった。「あの人には仕事は事務員ですって言っていたから」と、実際は建築や設計に関するスキルの高さでいろいろな会社に派遣されていることを日向子は黙っていたのだ。

 

それこそ「狭い世界だから、本当のことを言えば特定されそう」と当時の日向子は警戒していて、それが不倫が終わった後で避けられない事態となったことは大きなショックだった。でも、だからといって派遣の契約を終わらせる選択肢はなく、周囲には黙ったまま、日向子はその男性と関わるしかなかった。

 

「向こうは気づいているの?」

と尋ねると、

「メールとか電話でやり取りをするのは別の人だから、あの人とは直接話してはいないの。でも、メールのCCにあの人の名前のアドレスがあって、ってことは正社員だろうし私の名前でメールが来ていることも確認してるだろうし……」

と、日向子は動揺したまま上下する声で答えた。相手に自分が認知されたかどうか、確認するすべはない。その会社に出向くのは日向子以外の人間で、おそらく男性と顔を合わせる機会はないだろうことが唯一の救いだった。

 

日向子の気持ちを考えれば、嘘をついていた罪悪感と気まずさは、「不倫」という人に知られてはいけない関係だったからこそ重い。自分の名前を目にして男性がどう思ったか、自分とは別の衝動を抱えたことは容易に想像できる。プライベートではなく「完遂が前提の仕事」での関わりは、互いに逃げ場がない。

 

不倫は過去であって「今はただの仕事相手」と割り切れないのは、日向子のほうに負い目があり、男性から嫌悪される可能性をどうしても考えてしまうからだった。

 

▶きれいに別れることができず…

スポンサーリンク

スポンサーリンク