平安時代の人たちも「おにぎり」を食べていた。平安貴族の一日は、おなかにやさしい「あのメニュー」でスタート!
*TOP画像/詮子(吉田羊)大河ドラマ「光る君へ」 27話(7月14日放送)より(C)NHK
『光る君へ』ファンのみなさんが本作をより深く理解し、楽しめるように、40代50代働く女性の目線で毎話、作品の背景を深掘り解説していきます。今回は平安時代の「お米の食べ方」について見ていきましょう。
◀この記事の【前編】を読む◀ 『「自分の子じゃないけど…」年上の夫は包容力抜群。「理想の夫婦関係」がまひろと宣孝にあった⁉【NHK大河『光る君へ』#27】』__◀◀◀◀◀
『光る君へ』にはまひろが「おにぎり」を子どもたちに配るシーンも。平安貴族もおにぎり(頓食)を食べていた!?
ここ数年、おにぎり専門店がメディアを度々にぎわせています。人気店では数時間待ちの日もあるんだとか。
おにぎり専門店では定番具材のおにぎりやお米のうまみを味わえるシンプルなおにぎりはもちろん、具材がゴロゴロ入ったおにぎりや贅沢な食材が使われたおにぎりがお客さんの心をつかんでいるようです。
また、おにぎりは仕事の合間にさっと食べたり、朝ごはんに食べたりするのにも便利ですよね。
現代人も大好きなおにぎりですが、「光る君へ」の26話(6月30日放送)にはまひろ(吉高由里子)、いと(信川清順)らが大水と地震から生き残った子どもたちにおにぎりを配るシーンがありました。
まひろたちがにぎったであろう大きなおにぎりは、愛情が込められていておいしそうでしたね。
私たちにとっても馴染み深いおにぎりですが、日本人はおにぎりのようなものを弥生時代の終り頃には食べていたと考えられています。杉谷チャノバタケ遺跡から炭化した米粒のかたまりが発見されたことに、この説は裏付けられています。
国内におけるおにぎりの一般的なはじまりは平安時代の頓食(とんじき)と考えられています。頓食とは蒸したもち米を一合半ほど使用した楕円形のおにぎり状のものです。現代のおにぎりはお米がほどよくやわらかいですが、頓食は強飯(こわいい)をにぎりかためていたため現代人にとってはややかたく感じるかもしれません。
平安貴族たちも饗宴で頓食を食べていました。また、頓食は貴族の下で働く役人も口にしていたと伝わっています。頓食は皿を用意する必要もなく、手でつかんで食べられる手軽さからも、招待した客の従者に出されることもあったそうです。
ちなみに、おにぎりにうるち米が使われるようになるのは鎌倉時代後期、おにぎりに海苔がまかれるようになるのは江戸時代以降といわれています。おにぎりは戦国時代になると携帯食としても重宝されました。なお、庶民の間でおにぎりが広まったのは江戸時代以降です。
平安貴族の朝は「おかゆ(粥)」でスタート!?
現代の日本では朝昼晩の3回にわたって食事をとる人が多いと思います。一方、平安貴族の食事は朝と夕の2回のみ。朝の食事は10~11時頃、夕の食事は16時頃でした。
平安貴族の朝は早く、夏場は4時頃には起きていたので、出勤前に軽食を食べていました。軽食として食べていたのが粥(かゆ)です。
粥にも二種類あり、お米にたっぷりの水分を含ませた汁粥(しるかゆ)とややかための固粥(かたかゆ)がありました。固粥は私たちが日頃からお茶碗にもって食べているような状態のお米です。平安貴族たちがどちらを朝に多く食べていたのか答えるのはむずかしいところですが、汁粥を食べていたと思われます。
平安貴族の食膳に置かれている山盛りのごはんって?
平安貴族の食事を再現したレプリカを博物館や美術館などで見たことがある人や、平安貴族が食べていた料理のイメージ画を教科書などで見たことがある人も多いのではないでしょうか。このとき、山盛りに盛られたごはんが印象的だった人もいるはずです。
この山のようなかたちにもられたごはんを強飯(こわいい)といいます。字のごとくかたく、お米を蒸したものです。
貴族たちはごはんを主食とし、魚介類や干し肉、野菜、海藻類、漬物などを食べていました。これらは味つけされておらず、小皿に盛られた味噌や塩などの調味料をそれぞれがつけて食べていたそうです。
都は海から距離があるため、都で暮らす貴族は干した魚を主に食べていました。海が近い越前では新鮮な魚をふんだんに食べていたといわれています。『光る君へ』ではまひろがウニのおいしさに感動していましたが、紫式部も越前で暮らしていた時期は新鮮な海鮮類など都とは違う食事を楽しんでいたと考えられています。
参考文献
本多 利範『おにぎりの本多さん: とっても美味しい『市場創造』物語』プレジデント社 2016年
西東社編集部 (編集)『心に響く! 美しい「日本の伝統」1200』西東社 2018年
川村裕子『平安男子の元気な!生活 』岩波書店 2021年
晋遊舎 (著)『100%ムックシリーズ 完全ガイドシリーズ 380 紫式部完全ガイド』晋遊舎 2023年
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