あの人はもう、結婚しちゃいましたか?-42歳・絵美の場合(1)-【40女の恋愛事情・story3】

2016.08.30 LOVE

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その日は、ノリコの家の近くで仕事があったので、寄った。

「すごいよね、絵美は。バリバリ働いてて」

「ノリコこそすごいよ、子どもをこんなに大きく育てて」

本当にすごい、と思った。

 

ノリコの娘は13歳になったという。

彼女が子どもを育てていた13年もの間、私は何をしていたのだろう。

結婚も妊娠も出産もしていない。

それどころか今、恋人すらいない。

スタートしか切れていないのに、ノリコはもう、ゴールが見えている。

子どもが20歳になれば、子育てだって終わりを迎えるはずだ。

 

「29で産んだから、成人するときは49かあ」

それを聞いて、うらやましくなった。

ノリコはそれから自分の人生を歩くことができる。習い事に行ってもいいし、旅行に出かけてもいい。果てしない自由が彼女にはある。それなのに、私は……。

 

ノリコ夫婦はもうすぐ一戸建てのローンを返し終えると言う。いつか結婚すると思っていたから、マンションも買っていない。彼と一緒に住むことになってから買えばいいと思っていたら、40歳を過ぎていた。

 

私には、何もない。家も、子も。

「絵美には仕事があるじゃない」

そう慰められても、むなしかった。

私は仕事に夢中になるあまり、大切なものを得られなかったんじゃないだろうか。

それとも、大切なものから目を逸らして、仕事に逃げてきたのかもしれない。

最近仕事以外にしていることとしたら、オンライン英会話くらいだった。

それだって、そのうち仕事で必要になるかもしれないと思って始めたのだ。

 

「私、絵美は、あの人と結婚すると思ってた」

「あの人って!?」

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