あの人はもう、結婚しちゃいましたか?-42歳・絵美の場合(1)-【40女の恋愛事情・story3】
その日は、ノリコの家の近くで仕事があったので、寄った。
「すごいよね、絵美は。バリバリ働いてて」
「ノリコこそすごいよ、子どもをこんなに大きく育てて」
本当にすごい、と思った。
ノリコの娘は13歳になったという。
彼女が子どもを育てていた13年もの間、私は何をしていたのだろう。
結婚も妊娠も出産もしていない。
それどころか今、恋人すらいない。
スタートしか切れていないのに、ノリコはもう、ゴールが見えている。
子どもが20歳になれば、子育てだって終わりを迎えるはずだ。
「29で産んだから、成人するときは49かあ」
それを聞いて、うらやましくなった。
ノリコはそれから自分の人生を歩くことができる。習い事に行ってもいいし、旅行に出かけてもいい。果てしない自由が彼女にはある。それなのに、私は……。
ノリコ夫婦はもうすぐ一戸建てのローンを返し終えると言う。いつか結婚すると思っていたから、マンションも買っていない。彼と一緒に住むことになってから買えばいいと思っていたら、40歳を過ぎていた。
私には、何もない。家も、子も。
「絵美には仕事があるじゃない」
そう慰められても、むなしかった。
私は仕事に夢中になるあまり、大切なものを得られなかったんじゃないだろうか。
それとも、大切なものから目を逸らして、仕事に逃げてきたのかもしれない。
最近仕事以外にしていることとしたら、オンライン英会話くらいだった。
それだって、そのうち仕事で必要になるかもしれないと思って始めたのだ。
「私、絵美は、あの人と結婚すると思ってた」
「あの人って!?」
この記事は
作家&エッセイスト
内藤みか
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