「論破好き」はモラハラの典型例?夫に論破され続け、心が壊れていった私は(後編)
夫婦問題・モラハラカウンセラーの麻野祐香です。
モラハラ(精神的DV)をする夫と話し合いをしたくても、うまくいかない方々がたくさんいらっしゃいます。今回は夫との話し合いがまったく進まないAさんのケースをご紹介します。本編は【後編】です。
<<この記事の前編:「論破好き」はモラハラ夫の典型。その特徴と心理
論破され続け心が徐々に病んでいくAさん
Aさんは、一人になるといつも夫の言葉が頭の中を巡るようになっていました。
「なんで君はいつもダメなんだ?」
「僕の言う通りにすれば問題ないだろう?」
その一つ一つの言葉が心に突き刺さり、自分は価値がないんだ、自分は必要ない人間なんだと思い自然と涙が溢れます。毎日、夫に怒られないか、夫の機嫌ばかり気をつかうようになっていました。
夫が「自分の考えが正しい」と論破してくるたびに、「私が間違っているんだ」と思い込むようになり、同時に「自分の判断は信用できない。」「私の意見は無意味なんだ。」そんな思いがAさんを蝕んでいきました。
どんなに「そうなった理由」を説明しても、夫はそれを聞き入れませんでした。そのうちAさんは、どんなに苦しいことがあっても自分の中に押し込めるようになっていきました。
他の家庭のケースにおいても、このように夫が家の中で絶対的な権力を持つようになると、妻は夫に対して「話しても無駄だ」という諦めの気持ちを抱くようになります。その結果、夫婦間の信頼は徐々に薄れていくのです。
いつしか、Aさんは夫に何もいえない状態にまでなっていました。
しかし、夫は論破することで自分の優位性を確認し、Aさんが何も言わなくなったことでやっと自分の正当性が認められたと満足をしています。夫から支配される不平等な関係は、Aさんの心をさらに追い詰めていきました。
モラハラで心の健康が損なわれていく理由
Aさんは何をするにも「また夫に怒られるんじゃないか」「またダメだと言われるんじゃないか」という不安が常に頭の中をよぎるようになりました。夜も眠れなくなり、いつも睡眠不足の状態でした。小さなことにも必要以上に気を遣い、笑うことも忘れ、生きている意味もわからなくなっていました。
「私はストレスのため体調がとても悪くなりましたが、その言い訳も夫には通じないのです。夫は『健康管理ができないお前が悪い』と責め立てるだけなのです。多分あの頃の私は、周りの人から生きる気力もない幽霊のように写っていたと思います。」
モラハラが心を蝕む5つの理由
Aさんのようになってしまう、モラハラが心を蝕む5つの理由をお伝えします。
1. 否定され続けると「自分が悪い」と思い込んでしまう
モラハラ夫は、何かにつけて相手の行動や考えを否定します。これが繰り返されると、相手は「自分が間違っている」「自分には価値がない」と感じてしまいます。この状態を心理学では「学習性無力感」といいます。何をしてもダメだと思い込むようになり、自分を責め続けてしまうのです。
2. いつも「怒られるかも」とビクビクしてしまう
モラハラの環境では、「次にまた何かを言われるかも」と常に警戒するようになります。このような慢性的なストレス状態が続くと、夜眠れなくなったり、食欲が落ちたりと、体にまで影響を及ぼします。心が休まる時間がなく、少しずつ疲労が溜まっていくのです。
3. 「話す相手がいない」という孤独感
モラハラ夫は、妻が他の人に助けを求めることを嫌がり、孤立させようとする傾向があります。妻は「一人でなんとかしなくては」と思い込み、誰にも頼れずに追い詰められてしまいます。
4. 自分の気持ちを押し殺すことで感情が麻痺する
「楽しい」や「悲しい」といった感情もモラハラ夫との生活では、表に出せない状況が続きます。その結果、自分の感情を押し殺すようになり、喜びや楽しさを感じられなくなってしまいます。
5. ストレスが体調不良を引き起こす
長期間のストレスは、心だけでなく体にも影響を与えます。不眠や頭痛、胃痛、免疫力の低下など、さまざまな身体症状が現れることがあります。そして、それをパートナーに相談しても「お前が悪い」と責められるだけだと、さらに追い詰められてしまうのです。
電話相談で話を聞いてもらい、離婚へ
Aさんは誰かに話を聞いてもらいたいと電話相談を受け、そこで自分の置かれている状況はモラハラであり、自分は悪くないと言われ現状を把握することができました。その後、両親の協力のもと実家に戻り離婚についての話し合いを進めています。
辛い時は専門家への電話やメール相談をしてみることも考えてください。あなたの人生は、誰かの支配のためにあるのではありません。一歩ずつ、あなた自身の幸せを取り戻すために進んでいきましょう。
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