【小学生の性教育】先生たちも悩んでる!「どう教えていいかわからない」「他の業務で手一杯」現場が抱えるモヤモヤとは?

「月経教育は、先生も男女別 ⁉︎」ある小学校での性教育の実際

 

—- 性教育の取り組みは、自治体や学校によって違いがありますが、Aさんから見た小学校における性教育の現状について、お話をお聞かせください。

私はこれまで1つの学校での経験しかなく、4年生までしか担当したことがないので、限られた視点でのお話になることをご了承ください。

小学校では、4年生から性教育が始まります。私が勤務する小学校では、4年生のときに、養護教諭が女子児童に対して生理に関する話をします。そして、担任が保健体育の授業で「体の発育や発達」について話をします。男子はがっしりとした体つきになり、女子は丸みを帯びた体つきになるといった「思春期の体の変化」に関する科学的な内容を扱います。体の発育や発達には個人差があることをしっかり説明します。すべて学習指導要領に明記された内容です。

5、6年生はまだ担当していないので、保健体育の授業内容はわかりません。熱心な人は勉強しているだろうけど、みんな基本的にその日暮らし、その年暮らしで精いっぱいですから…。そう考えると、学校全体で性教育が体系的に行われているとはいえないかもしれません。ただ、教科書は学習指導要領に基づいて作られているので、それに沿って教えれば目標を達成できるようになっています。学習指導要領やその解説はインターネットで誰でもみることができます。

 

—-養護教諭が担当する生理に関する話は、具体的にどのような内容なのでしょうか。

私の勤務する小学校では、養護教諭による生理に関する授業は、児童を男女に分けて実施します。内容を知りたいのですが、私が男ということもあり、その授業に参加したことがないので、具体的なことは分かりません。ナプキンの使い方などが話題に含まれていると思います。初めて4年生を担当したとき、主任の先生が「A先生も参加した方がいい」と提案してくれましたが、男女別で行われるため、男子児童の対応者が必要で、結果的に私が対応することになり、参加できませんでした。

 

—-男子児童は女子児童が生理に関する授業を受けている間、何してのでしょうか?

読書です。学校では何をさせるか特に決まっていない場合、読書をさせることが多いです。だから、男子児童は養護教諭が女子児童に話す内容を知る機会はありません。養護教諭が男子児童を対象に話をすることもありません。ただ、これは学校によって違うと思います。

 

—-学校における性教育の内容は、誰がどのように決めているのでしょうか?

学習指導要領以外のことは、校長先生のもと、養護教諭が主導だと思います。養護教諭によると、来年度から、発育測定の機会を活用し、全学年を対象に、性教育ではないけれど「自分を大切にすること」について話を始める予定だそうです。例えば1年生には「あなたはとても大切な存在」というメッセージを伝え、上の学年では「プライベートゾーン」について触れるなど、体系的に進めていくようです。発育測定の際に行うので、男女は分けないと思います。

今年度まで、男女別で指導していたことを思うと大きな変化ですよね。これは市内統一ではなく、養護教諭個人の判断によるものみたいです。来年度からこの変更が行われる背景やきっかけについて、詳細は分かりません。養護教諭も児童たちに体の発育・発達や性について正しく伝えるために、情報を集め、新しい取り組みを実施したり、従来の方法を見直したりと日々アップデートされているんです。

 

◆なぜ学習指導要領に基づく「性に関する指導」なのに、地域差があるのか?

性教育に関して、学校でどのような内容をどの程度教えるかは、文部科学省の「体育科・保健体育科の学習指導要領およびその解説」に明記されています。たとえば、小学校では、以下の内容を中心に指導することになっています。Aさんが授業で教えていた内容ですね。

「体は思春期になると次第に大人の体に近づき、体つきが変わったり、初経、 精通などが起こったりすること(変声、発毛、異性への関心も芽生えることについても理解できるようにする)」(※1)。

また、指導にあたっては、以下の点に配慮するよう記されています(※1)。

  • 児童生徒の発達段階を考慮すること
  • 学校全体で共通理解を図ること
  • 保護者の理解を得ること
  • 集団指導と個別指導の内容の区別を明確にすること

 

学習指導要領の内容は最低限の事項にとどまり、詳細は、学校や地域の実情に応じて柔軟に対応できるよう、各学校に委ねられています。各都道府県の教育委員会は教員向けの「性教育の手引」を作成していますが、その取組みにも地域差があります。性教育を推進するために、好事例を収集し共有することを目的とした取り組みが行われています。(※2)

このような中、現代社会の課題に対応した性教育の提供を目的に、2019年に東京都教育委員会が約15年ぶりに「性教育の手引(※3)」を大幅に改訂し、学習指導要領を超えた授業の実施を初めて認めました。この改訂は、日本の性教育の方向性に大きな影響を及ぼす可能性があるとして、全国的に注目されました(※4)。

 

※1出典:「学校における性に関する指導について」(文部科学省,2022年12月25日参照)より

「学校における性に関する指導」と表現する理由は、「性教育」という名称が二次性徴、受精や妊娠などについての教育といった狭い範囲で解釈されることがあったためとされている(参考「島根県 性に関する指導の手引」島根県教育委員会, 2012  より)

※2参考: 自治体による性教育事業の好事例収集(Updated: 2017 年 12 月),  Japan Health Policy NOW(JHPN), 日本医療政策機構

※3出典:「性教育の手引き」(東京都教育委員会, 2019年3月)

※4出典:「中学で「性交」教えます 学習指導要領を超えた性教育、都教委が初めて容認」(東京新聞,2019年3月29日付)より

 

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