大谷の肩負傷をめぐるチームメイトとのきずながエモい!ワールドシリーズ優勝の舞台裏。そして、東京ドームでの開幕戦が始まる!ドジャース名物の番記者が明かす裏バナシ

2025.03.15 LIFE

連日のニュースに野球ファンではなくても大注目な、ロサンゼルス・ドジャース大谷翔平選手。2025年は3月18日(火)と19日(水)に 東京ドームでMLB(メジャーリーグ)開幕戦を迎えるということで、ますます盛り上がっています。

 

昨年は初のワールドシリーズ進出、しかも優勝!という最高の結果を残した一方で、左肩を負傷し手術を受けることに。そんな中、チーム内ではどのようなやりとりがされていたのでしょうか。

 

現地で大谷選手を追いかけ続けてきたドジャースの名物記者ビル・プランケット氏が、著書で舞台裏を明かしています。

 

プランケット氏の著書『SHO-TIME 3.0 大谷翔平  新天地でつかんだワールドシリーズ初制覇』(徳間書店)から一部抜粋・編集してご紹介します。

 

●写真:『SHO-TIME 3.0 大谷翔平 新天地でつかんだワールドシリーズ初制覇』(徳間書店)書中より

 

 

大谷の夢がかなったワールドシリーズ出場! 球場全体が静まり返った、左肩負傷の瞬間

この試合のドジャースは、全体を通してまったく危なげがなかった。山本由伸が先発して、最高の投球を披露してくれた。6回まで許した安打はフアン・ソトのソロホームラン1本で、この本塁打以降は11人を連続アウトにした。

 

ヤンキースの主砲、アーロン・ジャッジはドジャース投手陣により完全に無力化され、ワールドシリーズ2戦で9打数1安打6三振と、完全に抑え込まれた(なお、それまでの2つのプレーオフでは31打数5安打13三振と、もともと調子がよくなかった)。

 

ドジャース打線からは、トミー・エドマン、テオスカー・ヘルナンデス、そしてフレディ・フリーマンの本塁打が飛び出し、4 -2と勝利した。だが、明るい雰囲気は7回に暗転した。

 

1アウトから四球を選び、大谷は二盗を狙いスタートを切るが、ヤンキースのオースティン・ウェルズ捕手に刺された。そのとき、大谷は少し特殊なスライディングをして、投球用の腕を守ろうとした。

 

その結果、彼の左手が地面に引っかかり、左肩が外れることになった。明らかに痛みを抱えている大谷はしばらく地面に転げたままで、その後トレーナーに抱えられ、左肩をおさえながら退場していった。」

 

ダグアウトのなかだけでなく、球場全体が静かになってしまったよな
テオスカー・ヘルナンデスが振り返る。ドジャースはこの負傷によるダメージを最小限にしようと努め、症状は左肩の亜脱臼だと発表した。

 

ロバーツ監督も、大谷の肩の可動域は試合後のテストでも十分で、左腕の強さも「グレートだ」と強調し、試合出場もまだ可能だと語った。

 

 

オレたちはショウ抜きで試合なんかしたくない」そんなチームメイトに大谷が送ったグループチャットの内容とは?

「そんなことになったら、大きすぎる穴になるよ」
キケ・ヘルナンデスが大谷抜きで戦う場合について語った。

 

「ただ、このチームは多少何かがあっても、つねに上を目指す男たちがそろっているんだ。フレディなしで試合に臨んだこともあったし、ムーキー抜きの試合もあった。でもオレたちはそんな試合でも勝ってきたからな」

 

ムーキー・ベッツもヘルナンデスに同調し、ドジャースは仮に大谷がいなくても「勝てる自信がある」と断言した。しかも、7番勝負ですでに2勝リードしている状態なのだ。

 

オレたちはショウ抜きで試合なんかしたくない。でも仮に抜けたとしても、誰かが代わりに穴を埋めてくれるよ。オレたちはやっていける、間違いなく。仲間全員を信じているからな
そんな気概をもって、チーム・ドジャースは荷物をまとめニューヨーク入りした。大谷は地元に残って肩のMRI検査を受け、別のチャーター機で現地入りした。

 

チームが空港に向かう途上で、大谷のチームメイトたちは、彼からのメッセージを受け取った。選手たちだけののグループチャット宛てだった。
〈いい試合だったな、仲間たち〉
彼は英語で綴っていた。

 

前回は、ベリンジャーが肩を脱臼したよね。今回は、オレの肩が脱臼してしまったけど、これってワールドシリーズ優勝の吉兆だよ〉

 

大谷がふれているのは、ドジャースが直近でワールドシリーズ制覇した2020年のことだった。コディ・ベリンジャー中堅手が、NLCS第7戦で本塁打を祝う最中に肩を脱臼してしまったのだ。彼はケガを押してワールドシリーズに強行出場したが、打撃は22打数3安打(うち1本は本塁打)とふるわず、優勝後に手術をした。マックス・マンシーがそう振り返った。

 

ちょうど空港へ向かう最中にあいつからメッセージが送られてきて、『オレはいける』と力強く言ってくれたんだ。あいつが試合に出られると断言してくれたから、オレたちは一気に盛り上がったよ

 

 

念願の世界一も「あと9回!」大谷の飽くなきチャレンジ精神に感動。 肩の手術、そして2025年は日本で開幕

ドジャースはワールドシリーズ史上最多得点差の5点差をひっくり返して勝利した。
この試合はオレたちのシーズン全体を象徴する試合だったよ
マックス・マンシーが叫んだ。

 

「いくつか痛い目にあって、そこから立ち直るんだ。さらに大きな痛手を受けて、そこから巻き返すんだ。この試合は、まさにオレたちの今シーズンをまとめたものだったよ」

 

大谷翔平初のポストシーズンは、通算打率・230(61打数14安打)、3本塁打、10打点、14得点という結果だった。途中、肩のケガを抱えた彼のワールドシリーズ戦績は、19打数2安打にとどまった。

 

肩のケガは、大谷やドジャースが考えていたよりもさらに深刻なものだった。ロサンゼルスで優勝パレードが行われた数日後、大谷は手術を受けた。利き腕ではなく、打席で後ろ側になる肩を手術したぶんには、来年の大谷のバッティングおよび投球には影響しないはずだ。とはいえ、完全復活は遅れることになるだろう。

 

2023年のトミー・ジョン手術からのリハビリをワールドシリーズ終了まで遅らせたため、ドジャースは2025年の大谷投手デビューとローテーション入りを、シーズン中のどこかと想定していた。今回投げるほうではない肩の手術をしたが、それでも大谷の投手復帰は少なくとも開幕戦には間に合わないことがほぼ確定した。

 

つまり、東京ドームで2025年3月に行われるカブスとの開幕2連戦で、登板することはないということだ。ブランドン・ゴメスGMはこう強調した。

 

「われわれは、1つひとつ確認項目にチェックを入れ、ショウヘイが最高のかたちで投げられるようにしたい。だから、どこかで不足が生じたときには、そこを補うことを最優先にしていくことになる。細かく1つひとつの項目を確認していくから、『おい、X月X日にはお前に投げてもらわないといけないから無理をしろ』みたいに急かすことは絶対にない

 

ドジャースが世界一に輝き、湧き上がるクラブハウスでそのように彼を急かそうとする人は1人もいない。FOXが行ったフィールド内のインタビューで、大谷はここに至るまでのシャンパンファイトを毎回謳歌してきたが、多くのドジャース選手たちが伝統的に行ってきた葉巻の一服は、まだしていないと答えていた。だが、この2024年の世界一のおかげで、大谷の経歴書に唯一残されていた、選手としての空白が埋められた。

 

彼こそが、史上最高の野球選手だといっても異論がある人はほとんどいないと思う
アンドリュー・フリードマン編成本部長がしみじみ語った。1年前に競合を出し抜いて大谷との契約にこぎつけ、前代未聞の10年契約の正しさを1年目のワールドシリーズ制覇で見事に証明できたのだ。

 

今晩ショウヘイと話して、お祭り騒ぎのなか『あと9回!』と言っていたよ。1年目で世界一になれたから簡単だと思ったのかもな。でも、本当にあと9回世界一を目指すよ

 

 

大谷の言葉に25万人が歓喜! 「スポーツ史上最高額」で、大谷に賭けたドジャースCEOの思惑とは?

ドジャースが世界一になってロサンゼルスで優勝パレードを行うのは、実に36年ぶりだった。2020年にもワールドシリーズ優勝を果たしてはいたが、新型コロナのパンデミックのせいで何もできなかった。

 

推計25万人がロサンゼルスのダウンタウンに繰り出し、それとは別に4万2438人の観客がパレード後のドジャースタジアムに集い、アイス・キューブのラップに合わせてロバーツ監督がバックダンサーを務めるイベントを満喫した。

 

そのなかでもとくに大きな歓声があがったのが、ロバーツ監督に促され、大谷翔平がマイクを握って英語で観衆に語りかけた瞬間だった。
これは僕にとって特別な瞬間です。ここにいられることを名誉に思いますし、このチームの一員でいられることを誇りに思います。おめでとう、ロサンゼルス! ありがとう、ファンのみなさん!」

 

プロスポーツ史上最高額で大谷と契約した11カ月後、ドジャースは12年間にわたり公式戦では勝っていたのに、その後が続かなかった課題を克服し、1年目でワールドシリーズ優勝という最高の成果を出すことができた。

 

もしも、ドジャースが2024年のワールドシリーズ優勝だけのためにオールインしたと思っているなら、「好きにしろ」とCEOのスタン・カステンは言う。
このチームは『来年も、その次の年も、そのまた次の年も、これから9年間ずっと世界一になり続けるためにオールインしたんだ。われわれはドジャースなんだよ、ビル

 

 

 

【関連記事】では、大谷選手の大記録50-50にまつわるエピソードをご紹介しています。

>>>【関連記事】大谷50-50の歴史的瞬間、「ベンチ裏で起きていたこと」とは?ドジャース名物の番記者が明かす裏バナシ

 

■BOOK:『SHO-TIME 3.0 大谷翔平  新天地でつかんだワールドシリーズ初制覇』ビル・プランケット〈著〉、タカ大丸翻訳〉 2200円(税込み)/徳間書店

 

アマゾンでの購入はこちらから

 

■著者略歴:Bill Plunkett(ビル・プランケット)
1961年12月30日、ミシガン州デトロイト生まれ。40年以上、日刊紙で執筆を続け、この25年はオレンジ・カウンティ・レジスターと関連紙で記事を掲載している。2003年シーズンよりMLB の取材に入り、最初の数年間はロサンゼルス・エンゼルスを担当していたが、その後の大部分はロサンゼルス・ドジャースを担当している。殿堂入り投票権をもち、スポーツネットLA、MLB ネットワーク、そのほか全米ラジオ番組等にも出演多数。

 

■訳者略歴:タカ大丸(たか・だいまる)
1979年、福岡県生まれ、岡山県育ち。ポリグロット(多言語話者)、作家、翻訳者。おもな著書に『貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)、共著に『史上初の詰飛車問題集』(主婦の友社)、英語の訳書に『SHO-TIME』シリーズ、『愛の自転車 インドからスウェーデンまで最愛の人を追いかけた真実の物語』(ともに徳間書店)、『ジョコビッチの生まれ変わる食事 新装版』『クリスティアーノ・ロナウドの「心と体をどう磨く?」新装版』(ともに扶桑社)、スペイン語の訳書に『モウリーニョのリーダー論 世界最強チームの束ね方』(実業之日本社)、『ロジャー・フェデラー なぜ頂点に君臨し続けられるのか』(KADOKAWA)など多数。

続きを読む

スポンサーリンク

スポンサーリンク

スポンサーリンク