
空っぽのランドセルに詰め込んだ、精一杯のSOS。「学校に行きたくない」と言い出せなかった不登校児の、学校と母への本音
「空っぽのランドセル」――それは「行きたくない」と言えない私の精一杯の意思表示だった
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「学校に行きたくない」――さゆりさんがはっきりそう思ったのは、小学校4年生の時。とあるクラス活動がきっかけでした。
「所属していた委員会で、各クラスで話し合っておくように言われた事柄があったんです。確か担任の先生は用事があって、『みんなで進めておいてね』と言い残して席を外しました。同じ委員だったクラスメイト2人と私で教壇に立って、会をスタートしたものの……クラスメイトは大騒ぎ。私はハキハキ発言する優等生タイプで、正義感も強かったので、『静かにしてくださ~い!』と、大きな声で何度も働きかけましたが、無視。『あいつ、うるせえな』という声も聞こえてきました。
でも、それより何よりショックだったのは、休み時間に仲良く遊ぶ友達が協力してくれなかったこと。逆の立場だったら、私はきっとみんなに話を聞くよう促したり、助け舟を出したりするのに、なんで?って」。
ところが、一緒に教壇に立った委員仲間は、そんな風景を前にしても、ケロリとした様子。
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「『……ってことは、こんなことで傷つく私がおかしいのかな?』と思ってしまって誰かに相談もできず、一人でモヤモヤを抱えたんです」。
直後に2~3回巡ってきた同様の場で待っていたのは、いつも同じ展開。小さな傷が積み重なったさゆりさんの心は、息切れを起こしていました。
「憂鬱な会があるのが、木曜日。私は、一番傷つくその時間から、とにかく逃げたかった。だから、ある水曜日の夕方、『明日は学校に行かない』って決めたんです。でも、自分から親や先生には言えなくて……次の日の準備を何もせず、ランドセルを空っぽにしたまま、木曜日の朝を迎えることにしました」。
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翌朝。一見普段と変わらぬ食卓で、朝食を取るさゆりさん。その脇で、ランドセルを何気なく手に取った母親が、その軽さに気づきます。
「『あれ?今日、ランドセル軽くない?』と、母から聞かれたんですよね。その時、やっと口にできたんです。『私、今日、学校に行きたくない……』って」。
30年近くの時を超えてもなお、声を震わせながら、あの朝を振り返るさゆりさん。孤独と葛藤を詰め込んだ空っぽのランドセルは、精一杯のSOSでした。
「親にしてみたら、『突然どうしたの?』『うちの子に限って……』という思いだったでしょうね。でも、私も含め、不登校の扉を開くお子さんの多くは、その一言を口にするまでに、とても時間がかかっているんじゃないかな。大人が想像する以上に、いろんなことを考えて、迷って、やっと口にしていると思う。それを、わかってあげてほしいです」。
問題解決“されてしまった”、その時。初めて気づいた、「それでもやっぱり行きたくない」という本音

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初めて「行かない」ことを選んだその日、どう過ごしていたか。その記憶は曖昧です。
「でも、『これはずるいこと?』『誰かに後ろ指を指されているのでは?』と、罪悪感を抱いていたことは覚えています。当時は『皆勤賞』が賞賛されて、『ずる休み』なんて言葉だってある時代でしたから」。
その裏側で、学校側は迅速な対応へと移っていました。
「担任の先生が、間髪入れずに家にやって来ました。休んだ初日か、2日目の午後だったと思います。やんちゃな子が多めのクラスだったからでしょうか、大ベテランの先生だったんですよね。
リビングのソファに、私と母と先生で腰かけて。厳しいけれど筋が通った先生のことを、私は信頼していたので、事情を打ち明けました。とはいえ、話せたのは『委員の仕事で、みんなに話を聞いてもらえないのが嫌だった』という程度。何がショックだったかとか、どう悩んでいるのかとか、うまく説明することは難しくて」。
それでも、手がかかるクラスの様子を誰より知る先生は、何が起こっていたのか、イメージを汲み取ってくれました。
「とてもうれしかったのが、先生が母に『悪いのはさゆりさんではありません。これはクラスの問題です』と言ってくれたこと。『私がおかしいのかな? 嫌われているのかな?』と悩んでいたので、そうじゃなかったんだと思えたのは、大きな救いでした」。

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その後間もなく、さゆりさんの手元に届いたのは、クラス全員がしたためた謝罪の手紙でした。
「『さゆりちゃんの気持ちをわかってあげられなかった』『協力しなくてごめんね』って。
先生が今回の件をみんなに投げかけて、手紙を書くという手段に落ち着いたことに、反発心や違和感はありませんでした。でも、手紙を読んで感じたのは、どれも上辺だけだなってこと。4年生にもなれば、『先生はこう書いてほしいんでしょ?』って察しながら作文を書くこともありますよね。まさにそういう感じ。子どもながらに、どの手紙にも真心を感じることができませんでした。
それでも、みんなが『協力する』と言っている以上、私の訴え自体はあっという間に“解決されてしまった”状態になりました」
――さゆりさんがそう表現する裏側には、その時初めて気づいた、複雑な本音がありました。
「不登校の発端となった出来事がクリアになったとしても、やっぱり『行きたくない』と思い続けている自分に気づいたんです。でも、その理由をうまく言語化できなかった。しかも、当時は『学校に行く』というのが、今以上に当たり前の時代。悩みが解決されてしまったからには、行くしかないんだ――そう思いました」。
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